ユーロピウムとテレビ

ユーロピウムは軽希土類中最も地殻に少ない元素ですが、バストネス石(フッ化炭酸塩)を原料として大量に精製されています。希土類中唯一安定な+2価の存在がユーロピウムの特徴であり、精製する際にはこの性質が利用されます。工業的に重要なのは+3価の化合物で、酸化ユーロピウム(Eu2O3)は、カラーテレビの蛍光体として用いられています。

希土類元素は電子ビームによって励起され、蛍光を発する性質があり、ユーロピウムは赤色、テルビウムは緑色、セリウムは青色に光ります。日本で「キド(輝度)カラー」と名づけられたテレビのブラウン管は、ユーロピウムに代表される希土(キド)類元素をブラウン管の発光面に塗って、電子ビームで光らせて色を出したことから名づけられました。

また、単に水銀を封入した蛍光灯よりも食べ物などが自然色に近く見える三波長蛍光灯という製品がありますが、これは、赤、青、緑を出す希土類(青色に+2価のユーロピウムを使うほかはテレビと同じ)を封入して、発光スペクトルを人間の目の感度に近づけたものです。最近では蛍光灯の水銀量を従来の1/3に抑えたものや、停電になってもぼーっと光るホタル蛍光灯も出てきましたが、いずれもユーロピウムを加えることによって可能となった技術です。(蛍光灯自体が、真空管の内壁に蛍光体を塗り、これを管の両端に置いた電極間の放電による電子で衝撃し、蛍光を放射させる仕組みになっています。)