アダム鉱 |
亜鉛の二次鉱物であるアダム鉱は、普通、黄色〜くすんだ緑色あるいは青緑色で、晶脈状の結晶として産出します。くすんだ緑色のものが、もっともよく蛍光します(緑色蛍光)。短波紫外線で強烈に蛍光しますが、長波に反応することもあります。代表的な産地は、メキシコのデュランゴで、褐鉄鉱の隙間に結晶が群がっています。 |
アグレル石 |
ナトリウムとカルシウムの珪酸塩がフッ素と化合した鉱物で、1976年に命名されました。灰白色。アルカリ質の火成岩中に生じます。有名な産地はカナダのキパワ川流域で、明るいピンク−赤色に蛍光します(短波)。標本としては、赤いユージアル石や、カタプラ石(緑色蛍光)、曹長石(暗赤色蛍光)などを伴い、きれいな蛍光標本となります。 |
硫酸鉛鉱 |
結晶の発達した硫酸鉛鉱は、黄色蛍光を発することがあります。白鉛鉱や方鉛鉱を伴って、多くの国の鉛鉱山で見つかっています。 |
こはく |
こはくは化石となった古代植物の樹脂です。普通は黄色で、ときには赤みを帯びたり、褐色や白色をしています。強い長波で青白く蛍光します。ドミニカ産のこはくには、短波でも青白く蛍光するものがあります。 |
あられ石 |
方解石と同じ成分であるあられ石は、方解石同様、いろいろな色の蛍光を示すことがあります。通常は、オレンジ色から乳白色の蛍光を示します。六方晶系(方解石)でなく斜方晶系の結晶構造を持ちます。方解石と比べると生成する温度や圧力条件が限られており、その分産出も少ない鉱物です。
長波で明るい白色蛍光を示す群晶が、カリフォルニアのサン・ルイ・オビスポで見つかっています。マサチューセッツ州ディアフィールドには短波で蛍光するものがあります。この2つの産地の標本は、わずかの時間ですが、緑白色の燐光を残します。 混入したウランの影響で緑色に蛍光することがあります。ニューメキシコ州のオーガン、同州バード洞窟、メキシコのサンタ・ユーラリアなどで見つかっています。サンゴ状に成長したあられ石が短波紫外線で緑色に光ることもよくあります。メキシコのプラセレス・デ・グアダルーペでは、ウラン鉱物ノバセック石を含んで蛍光する素晴らしい結晶が見つかっています。 シシリー島の硫黄鉱山で採れるものは、長波でピンク色、短波で白色に蛍光します。オーストラリアのブロークンヒルのあられ石は明るい赤色の蛍光を発します。 |
燐灰ウラン鉱 |
蛍光するウラン鉱物としてはもっとも広範囲に産出するものです。通常、ほぼ四角形の鱗片状結晶を作り、色はくすんだ黄色〜緑色です。ワシントン州デイブレーク鉱山の鶏冠状の集合結晶は実に見事です。その他、代表的な産地としては、フランスのオーチュン(名前の由来)やイギリスのコーンウォール、アフリカのカタンガ地方や南オーストラリアのペインター山があります。 緑色に蛍光します。 |
重晶石 |
この鉱石はかなり重たく(比重4.5)、鉱夫たちは、ヘビースパーと呼んでいます。昼光下での色には様々なものがありますが、蛍光色は乳白色から黄色のものがほとんどです。乳白色から緑色の燐光を残すこともよくあります。
イギリスのフォアストーンのものは実に見事な群晶で、白色に蛍光します。ノースカロライナ州ホットスプリングには珍しい重晶石があって、明るいオレンジ色に光ります。 ニュージャージー州フランクリン鉱山では、赤く光る方解石に、青白く光る重晶石が混じった標本がとれて、とても美しいものです。 |
ベニト石 |
カリフォルニア州サン・ベニト川の上流がほぼ唯一の産地である珍しい宝石鉱物で、短波紫外線で青く蛍光します。標本は、ソーダ沸石の中に、赤褐色の海王石と一緒に埋もれているのを、酸で溶かして、結晶を表出させたものが多いです。 |
セシウムブリトル石 |
比重にして4−4.8くらいのやや重たい石で、その名前の由来もギリシャ語の「重み」から来ています。淡茶色〜暗い赤、灰緑色など成分組成によって色が変わります。ランタンやトリウム、ウランを含むことがあり、そのため水銀灯下で青緑色に蛍光します。紫外線による蛍光は青白色です。グリーンランドが原産地ですが、ロシア、カナダなどの極地方だけでなく、ベトナム、マダガスカル、南アフリカなどでも産出が知られています。 |
ブルース石 (水滑石) |
マグネシウムの水酸塩鉱物で、しばしば板状、繊維状で産出し、明るい青白色に蛍光することがあります。蛍光性の本鉱は、ニューヨーク州ブルースターやペンシルバニア州ウッズ・クロム鉱山などに産出します。和名のとおり、滑石によく似ていて、へき開面の真珠光沢が特徴です。 |
方解石 |
蛍光鉱物の中でも広く産出の認められる鉱物で、蛍光色も様々です。
一番多いのはマンガン成分の作用で、赤〜ピンク色に蛍光するものです。スコットランドのダムフライシャー、オーストラリアのブロークンヒルズで採れる見事な結晶が有名です。メキシコのサンタ・ユーラリアでは、蛍光によってファントム(負晶)が浮かび上がる標本が採集できます。カリフォルニアのラドロウの方解石はダイヤモンド形のファントムが赤く光り、これは結晶が成長する過程で蛍光因子が断続的に介在したためとされています。赤色蛍光のものは、かなり多くの鉱山で産出するといっていいでしょう。 青く蛍光する石は、紫外線消灯後にも燐光を残す場合が多く、おそらく硫化物によって活性化しているためと考えられています。赤く蛍光する石は結晶が発達している場合が多いのですが、青色蛍光のものは、塊状や粒状に産状が限られるということです。 テキサス州タリンガの水銀鉱山は、青色蛍光/燐光の方解石の有名産地です。長波ではピンク色に蛍光します。 同州サン・サバやマーブル・フォールのものは、短波紫外線を照てると、始めのうちピンク色に光り、ついで紫色に蛍光します。これは、紫外線によって活性化した電子が定常エネルギーレベルへ戻るときに、その反応が急激に起こるとピンク色を、ゆっくり起こると紫色を発するためとされています。燐光は青色です。 その他の色として、カリフォルニア州クレストムーアのオレンジ色蛍光、ニューヨーク州ロウビルの赤色蛍光、シシリー島の硫黄鉱山では、オレンジ、乳白色、ピンク色など。上述のマーブルフォールやニュージャージーのバウンドブルックでは黄色蛍光の方解石も知られています。 アリゾナ州の砂漠地帯の表土層には、しばしばカリチェといって、砂や小石の間に炭酸カルシウムが凝固した層があり、短波でオレンジ色に蛍光することがあります。最近はロシア産の犬牙状の結晶で、見事なオレンジに光るものが出回っており、コレクターを唸らせています。 洞窟中の鍾乳石や石筍が白く蛍光する現象は、わりとよく見られます。このような例では、短波よりも長波紫外線の反応が強い傾向があります。また、石灰華や大理石化した方解石(あるいはあられ石)が白く蛍光することもしばしばあります。 |
カロメル |
水銀の二次鉱物で、蛍光色はレンガ色です。メキシコのジマパン近郊、エル・ドクトルに産出します。テキサス州タリンガの水銀鉱山では、タリンガ石に伴って、黄色く蛍光するものが採れます。この産地の標本には青色蛍光/燐光の方解石が伴います。 |
天青石 |
シシリー島の硫黄鉱山では、短波、長波ともに淡青色に蛍光する天青石が採れます。オレンジやピンクに蛍光する方解石を伴うので、大変見栄えがします。わずかの間ですが、緑白色の燐光を残すことがあります。 |
白鉛鉱 |
鉛の産地でよく見つかります。一般に長波とX線で黄色に蛍光します。 |
コンドロダイトとノーバーグ石 |
この二つの鉱物は、組成も見た目も蛍光色もよく似ていて、区別をつけるのはなかなか大変です。同じ産地に共存し、時に交じり合って生成することもあります。昼光下では白色からヒアシンスような赤色に見えますが、ふつうは蜂蜜色です。蛍光色は短波紫外線により、明るい金色、あるいは黄色がかったオレンジを示します。明るい色の標本ほどよく蛍光します。長波蛍光は淡めです。 |
コールマン石 |
カリフォルニア州デス・バレー、カリコ、クレイマー、フレイザー山といった硼砂産地で採れる、水に溶けない、カルシウムとほう素の水酸塩鉱物です。白色透明結晶。ふつうは長波、短波ともに白色から乳白色の蛍光を示し、たいてい燐光を残します。 |
コランダム |
赤いルビーやその他のコランダムは、しばしば長波紫外線によって暗赤色に蛍光します。この種のコランダムはマダガスカルやミャンマーに産出します。特に、高圧水銀灯からの紫外線に強く反応します。アメリカではノースカロライナ州に産地が多くあります。合成ルビーもやはり蛍光します。 |
デューイ石 |
別名ジムナイト。メリーランド州からペンシルバニア州にかけての蛇紋岩地域で見つかっています。実質的にクリノクリソタイルとリザーダイトの混合物で、滑石に似た石です。鉱物種としては独立扱いされていません。長波、短波ともに白色蛍光。ペンシルバニア州セダーヒルは、ろうのように柔くもろいデューイ石が採れ、純白に輝きます。 |
ダイヤモンド |
ダイヤモンドの多くは、強い長波紫外線によってさまざまな色の蛍光を示します。緑、オレンジ、赤、青色などですが、一般的なのは青色蛍光です。可視光線の短波長光から紫外線の長波長光(つまりこれらの中間波長の光)にもよく反応します。青白色のダイヤは、昼光下でも蛍光することがあり、非常に魅力的です。 |
透輝石 |
輝石の一種である透輝石には、方解石中に小さな粒または塊となって産出するものがあり、白色、青白色に蛍光します。産地としてはニュージャージー州フランクリン、ニューヨーク州ニューコムがあげられます。 |
デュモルチェ石 |
カリフォルニア州ヘキサで採れる繊維状で赤みがかったすみれ色のデュモルチェ石は、短波紫外線で青白色に蛍光します。 |
ユークリプト石 |
ユークリプトとは「うまく隠れた」という意味で、石英に混じって産出し、なかなか見分けがつきません。しかし、短波紫外線で美しいサクランボ色に蛍光するため、それと知れます。この珍しいリチウム鉱物は、リチア輝石の変成物で、リチア輝石の結晶形のまま仮晶を作ることがあります。しばしばペタル石を伴いますが、この部分は白く蛍光します。ジンバブエのビキタ、ノースカロライナのフート鉱山、ニューメキシコ州のハーディン鉱山などで産出します。 |
螢石 |
歴史上もっとも有名な蛍光鉱物といっていいでしょう。日光による蛍光が発表された最初の鉱物です。螢石の名前(FLUORITE)から、蛍光(FLUORESCENCE)という言葉が生まれました。青く蛍光するのが一般的です。 |
ハックマン石 |
ナトリウムとアルミニウムの珪酸塩鉱物で、方ソーダ石の一種です。オンタリオ州バンクロフトやグリーンランド西部、インドのラジャスタン、キシュナガル、ロシアのコラ半島などで産出が報告されています。ハックマン石は長波であんず色に明るく蛍光し、短波ではやや光輝が劣ります。 この石はとても面白い性質を持っています。ハックマン石を含むかすみ石の塊を割ると、最初ハックマン石の部分は明るいラズベリー色をしています。しかし、太陽光や人工光線にさらすと、数分のうちに灰色になってしまいます。次に短波紫外線を数分あてておくと、再び明るいラズベリー赤に戻ります。光にあてるとまた色が消えます。この変化は何回でも繰り返すことが出来ます。こうした特性を可逆性感光性といい、専門的にはテネブレッセンスと呼んでいます。暗いところに保存しておくと、いつまでも色が変わりません。 |
岩塩 |
適当な活性因子を含む岩塩は、ピンク色やオレンジ色に蛍光します。カリフォルニア州アンボーイはそのテの岩塩の有名産地です。砂漠地帯では、塩水が蒸発して、ヤマヨモギの上に美しい岩塩の結晶(蛍光性)を成長させることがあります。 |
玉滴石 |
玉滴石ハイアライトはオパールの一種で、一定量のウランを含む場合、短波紫外線で緑色に蛍光します。 産状は薄い皮膜状、またはしょう乳石状で、ペグマタイトや花崗岩の割れ目をハイアライトの皮膜が覆っているのをよく見かけます。ニューイングランドやノースカロライナのペグマタイト、あるいはオンタリオ州のかすみ石採石場に行くと、しばしばハイアライトの膜のため緑色の蛍光が観察されます。 代表的な産地は、ノースカロライナ州ミシェルの長石、雲母採掘現場です。ほのかに青や緑に色づいていることもあります。 |
水亜鉛土 |
この鉱物は閃亜鉛鉱や異極鉱、菱亜鉛鉱から変成した亜鉛の二次鉱物で、しばしば蛍光性の薄い皮膜となって産出します。短波紫外線で明るい青、白色に蛍光します。ニュージャージー州の古いズリでは、ジンカイトや方解石を伴っています。ネバダ州グッドスプリングには土状の塊が大量に埋まっています。塊の隙間に、時々微小な針状結晶も観察されます。 |
イドリア石 |
スロベニアのイドリヤにあった水銀鉱山で発見されたことからこの名前がついた、有機質の鉱物です。カリフォルニア州ソノマの温泉地帯で採れるものは、カーチス石と呼ばれていました。カーチス石は、クレイ湖で生成した石灰華と交じり合って出来た炭水化物で、渦巻き状、帯状、玉、火炎状など魅惑的な形状を示します。結晶は板状です。青白色に蛍光します。 |
カルパット石 |
上記のイドリア石がC22H14の組成、カルパット石はC24H12の組成を持っています。1955年に原産地ウクライナのカルパチア山脈に因んで命名されました。ペンドルトン石は、カルパット石と同じものであることがわかって、亜種扱いとなりました。淡い黄色で針状結晶または繊維状、放射集合体などで産出します。青色蛍光。産地はほかにカリフォルニアのサン・ベニトがあります。 |
木村石 |
日本新産鉱物のひとつ。1986年に命名されていますが、発見はもっと以前のようです。玄武岩の隙間に、白色〜桃白色の板状、葉片状の放射集合体をなして産出します。短波紫外線で赤色蛍光。へき開は完全です。ちょっと珍しい鉱物です。 |
ローレンツェン石 |
グリーンランド原産の鉱物で、ラムゼイ石に同じ。アルカリ閃長岩中やペグマタイトに見出されます。カナダのモンサンチラールではピンク色の針状結晶が採れます。コラ半島キビナ(ヒビーヌイ)では、茶色でサブメタリックな結晶が採れます。通常は針状、繊維状で、無色〜水色、緑、ピンク、黄褐色など、さまざまなものがあります。短波紫外線によって淡い緑白色に蛍光します。 |
マラヤ石 |
マレーシア原産の鉱物で、カルシウムと錫の珪酸塩です。結晶はくさび形。無色〜黄色、オレンジ色、濁乳色など。短波紫外線で明るい黄緑色に蛍光します。成分から類推できるように錫鉱山などでスカルン変成物、熱水変成物として見出され、日本では、土呂久、三宝、くが、喜和田など各地で観察されます。 |
マンガン燐灰石 |
昼光下では青緑色〜白色ですが、短波紫外線下で淡い茶色〜明るい金色に蛍光します。ニューイングランドやノースカロライナのペグマタイトではよく見かける鉱物です。長石の中に粒状に散らばっているのが一般的です。色の淡いものほどよく蛍光します。コネチカット州ポートランドからは、ハイアライトや燐灰ウラン鉱を伴う特級標本が産出します。 |
メリー石 |
蜂蜜色をしており、名前はギリシャ語の「ハチミツ」に由来します。塊、ノジュール、皮膜状などの産状。結晶はまれ。短波で青色蛍光。原産地のドイツ、アルテンでは、石炭と褐炭の裂け目に二次鉱物として出来ていました。産地はボヘミア、チェコ、フランスなどヨーロッパに集中しています。 |
オパール |
アメリカ西部でよく見られるタンパク石(オパール)は、微量のウランを含むため、緑色に蛍光します。代表的な産地はネバダ州バージンバレーで、大きな塊を作っています。 |
ソーダ珪灰石 |
繊維状の塊として産出するのが一般的です。カリフォルニア州ゴールデンゲイト付近では、黄色〜乳白色に蛍光するものが発見されています。ニュージャージー州の玄武岩トラップロック帯にある採石場で採れる本鉱には、フィルターをはずして短波紫外線を照てると、蛍光・燐光を放つものがあります。 |
ペタル石 (葉長石) |
リチウム鉱物のひとつ。ジンバブエのビキタにはユークリプト石と混在する鉱石が大量に見つかっています。白色〜乳白色の塊で、へき開明瞭。短波にも長波にも反応して白色蛍光します。風化が進むとモンモリロン石に変質します。 |
金雲母 |
マグネシウムを含む雲母の一種。通常は薄茶色で、ニュージャージー州のフランクリンやニューヨーク州ニューコムのものは、短波紫外線によって淡い黄色に蛍光することがあります。 最近アフガニスタンのラピスラズリ鉱山から出ているものも、黄緑がかった風変わりな黄色の蛍光があります。 |
ホスゲン鉱 |
サルジニア島のモンテポニでは、黄色蛍光を示す本鉱の結晶が採れます。 |
パウエル石 |
パウエル石は麦わら色、黄緑色、灰色、黒色など様々な外観を示しますが、短波紫外線で乳白色〜金色に蛍光することで識別できます。長波にはほとんど反応しません。 |
水晶、めのう、玉髄 |
結晶した石英(水晶)が蛍光することはまれですが、めのうや玉髄は、しばしば微量のウランを含むために、緑色に蛍光することがあります。 アメリカにはこのテの石英の産地が多く、ワイオミング州スイートウオーターの苔めのうは、深い緑色に蛍光します。メディスンボウのめのうは、暗色のマンガン鉱物を含むため、とてもきれいな青緑色に光ります。アリゾナ州では各地で、ばらの形の蛍光性の玉髄が採れ、ブラックヒルズ南部では、ピンクに蛍光する方解石を伴った、緑色蛍光の玉髄が大量に産出しています。オレゴン州やニューメキシコ州で採れるサンダーエッグと呼ばれるめのうの一種は、部分的に蛍光します。縞目も美しいメキシコのめのうは、緑色に蛍光します。 |
柱石 (ウェルネル石) |
ケベック州グレンビルに産出するウェルネル石は、長波紫外線で明るく黄色に輝きます。古い原産地標本は繊維状の光輝あふれるものでした。近年コレクター向けに供給されているものは、小ぶりになり、色も白色から半透明の黄緑色まで様々です。あまり知られていませんが、ウェルネル石は、かすかながらかなり長い時間、燐光を発しつづけます。また、四角柱状に結晶した柱石が、同じくケベック州に産し、短波で赤く蛍光します。(ウェルネル石も柱石の一種) |
灰重石 |
タングステンの鉱石として重要なこの鉱物は、重く、通常、白色〜乳白色、灰色などの色をしています。そのため、岩石中のものは他の鉱物と区別するのが非常に困難です。しかし、短波紫外線で青白く蛍光し、長波には反応しないことを利用すると、どの部分が灰重石かを知ることが出来ます。実際、紫外線探査は灰重石の存在を知る唯一の方法なのです。二次大戦中、タングステンの需給が逼迫したとき、連合国側は、この方法による探鉱で大きな成果をあげました。 カナダの金鉱山の中には、破砕した鉱石を検査して、灰重石を含む部分をすべて選り分けていたことろもありました。タングステン鉱山のズリは蛍標本の格好の採集場所です。 モリブデンを一定量以上含むと、黄色蛍光することがあります。少ないと白色に光ります。ときに数センチ大の標本が、青、白、黄、3色に蛍光することもあります。色は違っても灰重石は必ず蛍光するといわれますが、筆者の経験では、ときどき蛍光しない結晶もあるように思います。 |
透石膏 |
透石膏の中には、紫外線をあてると白色の蛍光を示すものがあります。しかも、それが結晶構造を反映して、ボーリングのストライク記号のように、光る部分と光らない部分が交互に現われたりします。 |
方ソーダ石 |
ニューハンプシャー州ムートンボロに産する方ソーダ石は、長波で金茶色に蛍光します。ニュージャージー州のアパランチアトレイルのペグマタイトでも蛍光性のものが見つかっています。 |
閃亜鉛鉱 |
いくつかの産地のものが、強い長波紫外線で強烈なオレンジ色に蛍光します。同じ色の燐光を放つこともあります。熱蛍光性を持つものもあります。南西アフリアからは長年にわたって蛍光性の本鉱が輸出されてきました。ニュージャージー州のフランクリンやオグデンスブルグからも蛍光性のものが産出します。オーストラリアのブロークンヒルからは、二次生成した皮膜状の本鉱が採れ、短波で黄色蛍光します。 |
スピネル |
ときたま赤いスピネルの中に、長波紫外線で明るい赤色に蛍光するものが見られます。 |
鉛重石 |
鉛重石は、タングステン鉱物を含む鉱床の酸化帯に出来る珍しい二次鉱物です。短波紫外線で緑白色に蛍光します。 |
滑石 |
純粋な滑石は硬度1の軟らかい鉱物で、ツメで傷つけることが出来る数少ない鉱物のひとつです。ニューヨーク州バルマットやタルクビル地域の滑石の大部分は、短波紫外線で乳白色〜緑白色に蛍光します。 |
タリンガ石 |
珍しい水銀鉱物で、産地であるテキサス州タリンガの水銀鉱山が名前の由来です。有名なタリンガの方解石を伴って産出し、方解石が青白く蛍光する中、本鉱は明るい黄色の輝点を作っています。 |
透閃石 |
ニューヨーク州のバルマットやタルクビルの滑石鉱山で採れる透閃石は、短波・長波でオレンジ色に蛍光することで知られています。この産地では蛍光しないものがある一方、オレンジ、ピンク、赤といった様々な色に蛍光するものがあります。ひとつの標本に複数の蛍光色が現われることもあり、大変に魅力的です。同様のものはオンタリオ州からも見つかっています。 |
ツグツープ石 |
方ソーダ石に類する石で、1957年にグリーンランドで発見されました。結晶構造は方ソーダ石とヘルビンの中間的性質を示します。成分にベリリウムを含むのが特徴です。通常は塊状で産出し、まれにミリサイズの結晶となります(モンサンチラールで見つかる)。白、ピンク、赤などの色をしていますが、暗いところに保管すると色が薄れ、光にあてると色が濃くなる傾向があります(すべてがそうではない)。短波紫外線で強烈なクリムゾンレッドに蛍光します。長波ではやや蛍光が淡くなります。 |
ウィッケンバーグ石 |
アリゾナ州ウィッケンバーグ近郊のクレイマー・クレームの酸化帯で発見されたことにより、1968年に命名されました。鉛を含む珪酸塩鉱物です。珍しい石ですが、同地では大量に生成しています。無色〜白色で、まれにピンク色をしています。短波紫外線で鈍いオレンジ色に光ります。 |
珪亜鉛鉱 |
蛍光性の本鉱のもっとも有名な産地はニュージャージー州フランクリン鉱山で、ここでは亜鉛の重要な鉱石となっていました(すでに稼動を終えて観光鉱山化しています)。アリゾナ州ピナルでも緑色蛍光・燐光を放つものが見つかっており、赤く蛍光する方解石を伴って素晴らしい標本となっています。 |
毒重石 |
バリウムの炭酸塩鉱物です。イリノイ州ロジークレアの螢石鉱山に産出する本鉱の双晶は、短波・長波ともに明るい青白色に蛍光します。名前の通り、有毒です。舐めたらあかんぜよ。 |
ゼクツァー石 |
ナトリウム、リチウム、ジルコニウムの珪酸塩鉱物。アルカリ閃長岩中に出来るレアミネラルのひとつ。色は白〜ピンク、またはオレンジ〜タンカラー。短波紫外線で淡い黄色に蛍光します。 |
風信子石 (ジルコン) |
ジルコンは短波紫外線で黄金色〜茶色に蛍光することがあります。その蛍光性によって、砂の中に混じっていることが知れるケースも数多くあります。ミャンマーやスリランカでは、宝石のとれる砂礫層の中に、蛍光性のジルコンが入っています。アメリカではノースカロライナ州ステートビルの綿花畑で、角がとれた結晶が沢山見つかっています。これらの結晶を探そうと思えば、夜間に携帯用の紫外線灯火をもって照らしてみるのがもっとも効果的です。ジルコニウムの鉱石です。 |
ウラニウム塩の蛍光鉱物 |
輝かしい緑色の蛍光は、多くのウラニウム二次鉱物の特徴です。短波紫外線に強く反応し、たいてい黄緑色に蛍光します。アンダーソン石という、わりと珍しい鉱物には時折青緑色に蛍光するものがあります。燐灰ウラン鉱は、蛍光性のウラン鉱物としては、もっともポピュラーなものです。(当然ながら放射能を発しています。)シュレキンガー石の原産地はボヘミアですが、アメリカにも産地が多く、ワイオミング州ワムサッターでは粘土中に小さな塊になっているのが見つかります。アリゾナ州ヒルサイド鉱山では鉱坑の壁面を覆っているのが見られます。 ヒルサイドでは、緑色に蛍光する光輝あふれるシュワルツ石の小さな結晶も見出されます。 アンダーソン石もまた、ヒルサイドの名物のひとつで、坑道の壁をきらきらと蛍光させるウランの二次鉱物です。ニューメキシコ州グランツ近郊では、パウダー状の皮膜となったものが見つかっています。 ウラノピル石、メタウラノピル石、ジップ石は、珍しい水酸・硫酸塩のウラン鉱物で、いずれも明るい黄色〜緑色に蛍光します。アメリカではこの3種のうち、ジップ石のみ産出が知られています。(ユタ州フルータ、コロラド州ギルピン。アスファルト質の砂岩中) 少し前になりますが、メキシコ、チワワのプラセレス・デ・グアダルーペで、あられ石に伴って、ノバセック石というウラン鉱物が発見されました。ノバセック石はあられ石の結晶の中に含まれており、素晴らしい蛍光標本となります。(あられ石の項参照) |
ニュージャージー州フランクリン鉱山では、ほかの地域では見られない特殊な鉱物が産出します。通常蛍光しない種類の鉱物でも、ここでは美しい蛍光色を放つことがあります。フランクリンの鉱物については、項を改めてご紹介します。(左欄のリンクからたどって下さい。)
このページ終り