しずく4.

Sさんは、この間、電撃結婚した。相手は同じ会社の、ちょっと頼りなさそうな男性だったので、誰もが意外な組み合わせだと思った。活発で、男勝りのSさんは、つねづね自分より強くてたくましい人でなきゃ嫌だとか、公言していたからだ(なんでもズバズバ歯切れよく言うから、男性陣は敬遠して、ずっとボーイフレンドがいなかった)。

「どうして」と聞いてみると、こうだ。
ある晩、夢の中で、きれいな青い石を見た。目が覚めると、とてもすっきりした気分だった。それから、一週間ほど経った頃、Hさんに夕食に誘われた。なよなよしたHさんを、Sさんはまったく相手にしてなかったのだが、その日は、なぜかついていった。食事のあとで、Hさんは、つきあってほしいと言ったそうだ。そして、小さなサファイヤの指輪をプレゼントしてくれた
だが(サイズが小さくて小指にしか入らなかった)、夢で見た青い石にあんまりそっくりだったから、ついぽーっとなっちゃった。そう言って、Sさんは、あはは、と笑った。