しずく12.

子供の頃住んでいた家の周りは、田んぼや畑、それに林や小川があって、よく蛇を見かけた。

あるとき、ふいに昼寝から覚めて、そのまま一人で田んぼの方へ歩いていった。それまで一度もやったことがないのに、あぜ道にあった井戸(肥溜め?)のふたを開けた。
暗がりに黒い蛇がいて、光が差し込んだので、ぬら、と動いた。へびの頭のあたりに、赤い石があり、きらりと光った。ぼくは、すぐにふたを閉めて、どきどきしながら家に帰った。晩ご飯まで、ひどくぼんやりした気分が抜けなかった。

それからも、蛇はよく見たけれど、頭に宝石を持ったものには一度も出会わない。