別子で使われた鉱山用語

鉱山で日常的に使われていた専門(?)用語から、主なものを紹介します。

単語の羅列は無味乾燥な感じもしますが、読んでいくと、次第に鉱山での作業の様子が彷彿してきます。坑夫たちが、どんな状況でこれらの言葉を口にしていたか想像すると、心ははるか、地底に働く彼らの傍らに添う気がします。

開坑から閉山までずっと使われていた言葉も、途中から使われなくなった言葉もあります。


アセチレン灯
種油灯に代わって、大正2年から昭和28年まで使用された。
本体を二分し、下の部分にカーバイドを、上半分に水を入れ、
水滴により発生したガスを細い灯口から吐き出す構造になっている。

         

あ行

あおいし 青石 塩基性片岩、緑色片岩(緑泥片岩と呼んだ時期もある。)
あかり 明り 坑外
あさぎ 浅木 雑木、広葉樹
あつばく 厚ノ 鉱床の下盤側にある塊状硫化鉱
あみき(ぎ) 網木 摺(ずらし)の入口に約30センチ間隔に坑木を並べ、鉱石の大塊が摺の中に入るのを防ぐ装置。
あらがね 荒銅 粗銅。あらどう、ともいう。
アンホ   硝安と油剤混合の低爆速の爆薬で、昭和30年代後半から使用。
 
いかだ 採掘跡の崩落を防ぐため、上盤と下盤の間に坑木丸太を井桁状に組み上げたもの。
いし 鉱石でない石、素石。ズリ。
いしじ   貧鉱(低品位鉱)で石英の多いもの。
いたみ  板箕 鉱石を入れ、持ち運ぶ道具。
いたやぎ 板矢木 幅三寸、厚さ5分、長さ三尺ぐらいのもので、支柱の枠と枠の間の岩盤押さえるために並べる敷板。
いつき   鉱車、搬器、貯鉱庫などの底や側面に固着した泥鉱、泥石。
いや   鉱床の上盤側にある塊状硫化鉱。
 
うきいし 浮石 空洞の表面岩盤が緩み剥落しやすい状態になっている岩石。
うけがい   直径三寸ぐらいの丸木の人道で、段々になっているもの。
うわっぱり 上っ張り 上羽織から出たもののようで、坑内用の外套を指す。
うわばん 上盤 鉱脈の上側にある岩石の層。
 
えぶ 得歩 葛や竹を編んで作った籠。負い紐をつけて鉱石運搬に使用。
えぶひき 得歩引 得歩を背負い坑口まで鉱石を運搬する人。
えれき   電気、磁気。
えんしょう 煙硝 黒色火薬。
 
おいこ 負子 木製の枠にして荷を負う道具。背負子。
おいふ 負夫 鉱石を運搬する人、負子。
おにはぶ   ざくろ石の混じった虎の皮のような模様をしたとらはぶ(石英片岩)と磁鉄鉱の混じった、もっとも硬質なもの(くろはぶ)の総称。
おばーさん   老練な選鉱婦の愛称。
おひや 御部屋 手代など職員の宿舎。
おやがつ   ごく親しい間柄の上長者。
おんじゃく   滑石。

 

か行

がい   木材をつなぐ金具。カスガイのこと。
かおづけ 顔付 出勤を記録すること。同時に作業の割り付け、指示をすること。
かがみいし 鏡石 塊状硫化鉱が断層運動により研磨され、鏡のような光沢を呈するもの。鏡肌ともいう。
かけづえ 掛杖 負子を背負ったまま休むときに支える杖。
かせ 加背 坑道の掘進面の断面または坑道の左右側面をいう。
かせわり 加背割 坑道を切り広げること。
かづき 岩石の層の上の方にある盤。上盤。
かづきいれ 被入れ 岩石の層の下盤から上盤に向かって掘進すること。被入坑道を略して被入という。一般の鉱山では「立入れ」と総称し、上盤向け、下盤向けを区別していない。
かなば 金場 手選鉱場。
かなみ 金箕 金属製の「じょれん」(土砂をかき寄せる用具)。鉱石や素石の破砕したものを手で運ぶときに使用する鉄製の用具。
かなめ 砕女 鉱石を破砕選鉱する女の人。選鉱婦。
かなめしょうや 砕女庄屋 選鉱方(係)。
かねおし 鐘押 立坑のプラットと運転室に通じる信号機を操作する作業員。
かねぎり 銀切 鉱石に沿い、採鉱の目的で掘削する坑道。坑道掘進を総称していうことがある。
かねみ 銀見 坑道掘進または鉱石採掘の実績を測定すること。鑑定ともいう。
かまさい   新参者、素人、駆け出し者、余計な口出しをする者。
かまだいく 窯大工 焼窯の係。
からぐり 空繰 水を使用しないで削岩機で穿孔すること。
からみ スラグ。鉱石の製錬工程で生ずる廃物。製錬では回収することを目的とした金属を濃縮するため、装入物中の珪石(シリカ)、アルミナなどの脈石成分や目的金属意外の金属(不純物)を分離する必要があり、これらの酸化物からなる混合溶融体。ハより比重は小さい。
がり   貧鉱で銅鉱よりも硫化鉱が多く混じった鉱石。皮鉱の一部。
かわ 縞状ないし鉱染状の鉱石。皮鉱ともいう。一般に上盤側塊状硫化鉱と下盤側塊状硫化鉱の中間にある。
かわ マット。非鉄製錬でいくつかの硫化物が炉中で溶け合って生成する人工の硫化物。銅製錬では珪石などの脈石成分と硫化鉄の一部は、からみとして分離される。ハは、硫化銅と硫化鉄が溶け合ったもので、金、銀など貴金属がすべて吸収されている。このハの中から硫化鉄を転炉で酸化して、からみとして除き、白ハ(硫化銅)を経て粗銅にする。
かんかん   看量場、または看量すること。秤量機を指すこともある。
がんぎ   一本の柱で作ったはしごの代用物。がんぎ梯子ともいう。
かんてら   坑内で使用されるランプ。燃料として当初菜種油、のちカーバイドなどを使用。
かんば 勘場 別子鉱山の総統轄事務所。
かんばまい   並白米の俗称。
 
ききり 木切(伐) きこりのこと。
ぎち   粘土、ぎっちともいう。
きふ 機夫 機械掘りの坑夫(さく岩機夫)
キューレン   削岩機で開けた孔にたまった岩石の粉を掻き出す棒。
きりあがり 切上がり 下部から上部へ向かって掘削する坑道。
きりおい 切負 坑内で鉱石や坑木を運搬する人。負夫の別名。切負のうち、大きな坑木をうんぱんする人を、木曳切負と称した。
きりさがり 切下がり 上部から下部へ向かって掘削する坑道。
きりのり   搭乗者自ら信号を発して立坑に搭乗すること。
きりは 切羽 採掘現場のこと。
きりふ 切夫 坑道を切り開く鉱夫。
きんま 木馬 ソリ様のもので、負紐を肩に掛け、手木を脇に抱えて方向をコントロールしながら木材などを引いて運ぶ道具。
ぎんまい 銀米 上白米。かんばまい(並白米)に対していう。
きんまみち 木馬道 木馬をひく道。普通の道に二尺おきに丸太をおいて木馬道にした。
 
くさり ノと同じく鉱石のこと
くらがり 暗がり 坑内。明り(坑外)に対することば。
くろばぐ   磁鉄鉱の多く混じった黒色の珪質岩で鉱床の尖滅の際などに産することが多い。
くろはぶ   磁鉄鉱の混じった黒いはぶ(石英絹雲母片岩)の最も硬いもの。
 
げざい 下財 稼人。元来土地を持たない人の意味で、「工」に属する職人。賃仕事で生計を立てる者。百姓の対語。
(上野英信氏は、炭鉱夫の自称に「下罪人」を宛てている。SPS)
げざいば   坑夫社宅のこと。
げんすいかた 減水方 排水方、排水係。
げんろくじき 元禄敷 支柱と支柱の間に交互に矢木を入れる側壁工法。交互でなく全面に入れるのをヨロイ敷という。
 
こうい 坑井 こうせいともいう。摺(ずらし)のこと。
こうすい 坑水 坑内から流れ出る水。坑内水。
こうたつ 鉱立 鉱脈の厚さのこと。立(たつ)ともいう。
こうふ 鉱夫 一般に鉱山労働者のこと。年齢と技量に応じて、手子(てこ)、負夫、横番、廻切夫(まわりきりふ)に区別された。明治38年3月旧鉱業法が制定されてからは、同法の適用を受ける採鉱・製錬事業に従事する労働者を鉱夫と呼び、その他の労働者を非鉱夫と称した。
こうふ 坑夫 鉱石を掘る人。別子では削岩機が導入されるようになってから、鉱夫のうち手掘り坑夫のこと。その他の鉱夫については、作業内容により運搬夫、削岩機夫、支柱夫、機械夫などと区分した。
こうふとう 坑夫頭 昭和25年職階制が導入されるまで、職員の一種である補助職員として、所属の鉱夫を率いて採鉱作業に従事した。坑夫頭にも坑道全体を統轄する坑夫頭(担当坑夫頭)とその指揮を受ける坑夫頭があった。職階制導入後は主任。担任・要務職A・B職階に格付けされた。
こうぼく 坑木 坑内で使用する木材。
こおりやま 凍山 氷山とも書く。坑内の採掘跡に充填した低品位鉱や素石が褐鉄鉱や盤圧のため固まった状態を凍結にたとえたが、のちには固結状況いかんにかかわらず、充填物を総称した。
ごこまき 五個巻き 支柱枠の形状で比較的新しい工法(四ツ留より一辺多い形)。
こづめ 木詰 山詰(坑内の採掘跡を充填すること)の一種で、坑木、木片などによって充填すること。支柱枠と岩盤の空間を埋める材木。
こめぼう 込棒 爆薬を削岩機で開けた孔に押し込むために使用する木製の棒。
コラム   ドリフターで穿孔する場合、機体を支持する鉄柱。
ころばし   支柱を受けるための横木(横入れ柱)。
こんぺいとう 金米糖 立坑プラットにおける鉱車どめ。

 

さ行

さるきかい 猿機械 軽便索道のことで、野猿(やえん)ともいった。
 
しかえ 仕替 支柱。
しかけ 仕掛 ひ押し坑道。切上がりなど採掘の準備工作。
しかけかねぎり 仕掛銀切 掘進のための準備坑道。
しき 坑内。
しきかた 鋪方 のちの採鉱課に相当。
しきぎ 鋪着 作業衣。にぶりともいう。
しきぐち 鋪口 坑口。
しずり    
しそばく 紫蘇ノ 斑銅鉱に富む高品位鉱。
したばん 下盤 鉱脈の下側にある岩石の層。
しゃこう 斜坑 斜め上下に通じる坑道。人の搭乗に使用することがあるが、多くは鉱石・材料の運搬に使用。鉱石運搬いはスキプ(スキップ)使用(大斜坑はスチールベルトコンベヤ使用)。
ジャンボ   ドリルジャンボの略称。移動する架台に載せ、アームにドリフターをつけ、圧気または油圧を利用して削岩機を移動させるもので、大型削岩機の使用を可能にした。
じょうこう 上鉱 黄銅鉱や斑銅鉱に富む品位の高い鉱石。上ノ。主として縞状鉱の部分に産し、その形状、色彩などに従い、開坑以来種々の俗称をつけた。例えば、菜種ノ、蕎麦皮、よもぎ、なりかえり、ひとはがい、など。
じょうぜん   浮石取りなどに用いられる鉄の棒。
しりすけ   桟俵のように藁または葛で編んだ尻当て。
しろじ   硫化鉱の品位が低く黄色よりやや白味の多いもの。
しろぜんまい 白千枚 絹雲母に富む片岩。
シンカー   下方に向かって穿孔する削岩機。
じんどう 人道 坑内で人が通行する道。主として梯子道や斜め道を指した。
しんぬき 芯抜き 発破を効果的にするため、最初に数本の発破孔を爆破し、自由面を作ること。
 
すいし 素石 鉱石以外の採掘された岩石(廃石)。ズリともいう。
すかし   手鑿。
スコはね   破砕した鉱石または岩石をスコップで鉱車に積み込み、または他に移す作業。
すずり   泥質片岩(石墨片岩といった時期もある)。石英細脈の多いものを白黒すずり、片理に凸凹のあるものを陣笠すずりという。
スタンド   ドリフターを支え、固定する鉄柱。
ストーパー   上方に穿孔する削岩機。
すばい 炭灰 吹床の粘土に混ぜる木炭粉末。のち、銅製錬の溶体を流す樋などに使用する木炭やコークスの燃え殻の粉砕物。
すみかた 炭方 製錬用の木炭を製造する係。のちの製炭課。
ずらし 爆破した鉱石を上の坑道から投入し、下の坑道に抜き取るために、岩盤中に設けられた斜めまたは垂直の空間。
ずり   鉱石以外の掘り起こされた岩石。廃石。
ずりば   ずり捨て場。
 
せいざん 盛山 発破、爆破。
せいざんぼう 盛山棒 ビット、タガネ。
せうち 背打 瀬打とも書く。坑内水を流すための坑道側溝。坑内の排水路。
せっとう   坑夫が岩石を掘るときに使う特殊な鉄の槌。
 
そばかわ 蕎麦皮 皮鉱のひとつ。黄銅鉱に近く蕎麦かすのような斑点のある鉱石。

 

た行

ダイ   ダイナマイトの略称。
たて 鉱脈の下盤。
たていれ 建入 鉱床の上盤から下盤に向かって掘進すること。建入坑道を略して建入ということがある。一般の鉱山では「立入れ」とも書き、上下盤向けを区別していない。
たてこう 立坑 竪坑とも書く。垂直に上下に通じる坑道で、人の搭乗、鉱石の運搬などに使用され、運搬具はケージ、スキップ。
 
ちゅうばく 中ノ 土ノ(最も安価な粉鉱石)と根戸ノ(最も高価な鉱石)の中間に位する鉱石。
ちょうば   事務係。
 
つうどう 通洞 主要運搬坑道。側溝を設け、排水路を併用する場合もある。
つちて   向かって右側、槌を持つ手。
つなし   選鉱婦の使う鉱石を砕く槌。
つぼ 堀場、採鉱場。
 
であい 出会い 他坑道との貫通箇所。
てこ 手子 鉱夫の区分のひとつで、採掘、運搬、製錬の手伝いをする人。手子にも年齢による区分があり、15歳まで小手子(こまてこ)、20歳まで中手子(ちゅうてこ)、23歳までを大手子(おおてこ)と称した。「てご」となまる場合が多い。
 
とこ 炉のこと。
とこやだいく 床屋大工 製錬の係。
どばく 土ノ 安価な粉鉱。下鉱。
どぶ 土滓 ゚(からみ)のこと。
どべ   水分の多い泥。
どべごぐり   人が泥を踏んで攪拌し、排出しやすくすること。
とりあけ 取明 崩落して閉塞した坑道を取り明けて坑道を作ること。
ドリフター   架台などに取り付け、主に水平方向にさん孔する大型削岩機。
トロ   レールの上を手で押す箱製の運搬車。
どろがいみず   泥水。
トロリー   トロリー線の略称。
どんたく   休日。
どんどろ   雷鳴。

 

な行

なかもち 仲持(中持ち) 別子山中と里の間を往復して製銅、食糧、日用品などを運搬する人。製錬用の木炭を運ぶ人は炭仲持と呼んでいた。
なたねばく 菜種ノ 黄銅鉱に富む品位の高い縞状鉱(皮鉱)の呼び方のひとつ。
なべじり 鍋尻 床尻。熔鉱のとき銅分が土中に沈殿したもの。
なまくさり 生鏈 ノと同じく鉱石のこと。
なりかえり   黄銅鉱に富む品位の高い鉱石の呼び方のひとつ。
 
にだいわり 二代割 上盤の硫化鉱など掘り残した採鉱跡の二度目の採鉱。
にぶり   坑内作業服。
 
ぬいぬき 縫抜き 採鉱跡の山詰めが硬く固まって氷山になっている所や崩落した坑道を取り明けること。坑木などを天盤に差し込み、天井を押さえながら取り明けていく方法(差矢法ともいう)。
 
ねこ 別子式ハンドハンマー(削岩機)のこと。昭和16年ごろまで使用。
ねど 根戸 坑内最底部。
ねどばく 根戸ノ 最高価の上鉱。
ねぼり 根掘 支柱の根元が滑らないように岩盤を穿ったところ。
 
のばえ 野拼 野積みのこと。焼木の野積みを焼木拼という。
のぼり   上盤を広く支えるため、支柱の上に入れる横木。
のみて   向かって左側、鑿を持つ手。

 

は行

はく 鉱石のこと。
はくがい ノ買 坑務係、坑道係。
はくもち ノ持 砕女庄屋の指揮を受けて鉱石を焼窯に運搬する人。
はこひ 箱樋 木製のポンプ。主として坑内水の引き上げ排出に使用。
はしらもち 柱持 坑道用柱をきこりのことろから坑内へ担いでゆく人。
はしり 走り ひ押し、建入れ、被入れの種類にかかわらず掘進中の水平坑道。東に向かうものを東走り、西に向かうものを西走りという。
ばたばた   立坑プラットにおける警戒棒。
はっぱ 発破 削岩機などで穿孔した孔に爆薬を詰めて点火爆破し、鉱石や岩石を破砕すること。
はぶ   石英絹雲母片岩
はらい 払い 芯抜きの周囲を規定の寸法まで広げること。
はりがね 針金 品位の低い鉱石。針金のように銅鉱の入ったもの。針金ノ。
 
  鉱脈。
ひおし ひ押し 鉱脈に沿って掘進すること、またはその坑道(ひ押し坑道)。
ひったて   採掘業場に表れた鉱石の面、または坑道・切羽の切詰め。
ピット   削岩機に取り付けて穿孔する鋼棒の刃先。
ひとはがい   黄銅鉱に富む品位の高い鉱石の呼び方のひとつ。
ひとはがわ 一葉皮 黒い斑点が笹の葉のように細長い鉱石。
ひやく 日役 日当賃金のこと。日庸ともいう。
ひんかわこう 貧皮鉱 縞状鉱で鉱石分が少なく、銅分の低い鉱石の総称。
 
ふきよせ 吹寄 いわゆる晶洞の割目など空洞に自形結晶が生じたもの。
ふち   長さ三尺(約90センチ)くらいの棒で箱樋の中の水を掻くもの。
プラッガー   重量の軽い手持ち削岩機の総称。採鉱切羽に主として使用。
プラット   立坑と水平坑道の連絡点。プラットフォームの略。
 
へどろ   側溝などに沈降している泥状のもの。
べにばく 紅ノ 黄銅鉱の表面が斑銅鉱のような色を呈するもの。
 
ぼうとり 棒取 負夫が削岩機用ビットを運搬することから発し、運搬夫のこと。切羽で使用するビットの配給・回収役をいうこともある。また大型削岩機の穿孔初めにビットの先を持って手伝いする者の意味もある。ビット取りともいう。
ポスト   サポーティング・ポストの略。削岩機据付け用柱。
ほっぱ   豆の葉のような形をした鍬。豆の葉または豆鍬ともいう。
ぼほさんぎ   焼窯の燃料にする雑木。長く丸い薪。
ほりこ 掘子 鉱石を掘る人、のちの鉱夫。

 

ま行

まぎ   松、杉、檜のような針葉樹。
まご   石工の使う道具のようなもので、長さ一尺、石の割目または切込みの部分へ打ち込み、石割りに使用。
まぶ 間符 坑道のこと。まぶから転化してトンネルのことをマンプと呼ぶことがあった。(一般に間歩とも書く。SPS)
まわりきりふ 廻切夫 のちの坑夫頭のような地位の掘子。掘子の熟練者が選ばれた。掘削面を18区画に分け、数名の坑夫が順次切っていくことからその坑夫を廻切夫といった。
まんごく   鉱石を粉鉱と塊鉱にふるい分けするもの。
 
みあい 見合い 斜坑や立坑と水平坑道の連絡点。
みずとい 水樋 角張または丸竹による樋。
みずひき 水引 木製のポンプで水を汲み揚げる人。
みずふ 水夫 水引き夫、排水夫。
みすま 三角 みすみともいう東延斜坑坑底周辺のこと。「美寿満」とも書く。
みゃくはば 脈幅 鉱脈の上盤から下盤までの垂直距離、鉱脈の厚さ。鉱立(こうたつ)または立(たつ)ともいう。
 
むらさきいし 紫石 含紅簾石石英片岩。
 
めごま 目細 塊状硫化鉱が地表水その他の影響を受け、粉状化し銅分を大部分流失して品位の低下したもの。
めしくい 飯食 他人の家に同居する単身者。

 

や行

やき やけともいう。焼鉱。
やぎ 矢木 小径の丸太材で支柱と支柱の間に張り渡して岩盤崩落防止の壁としたり、足場や筏を組む台として使用。
やきがま 焼窯 鉱石を焼く窯。
やくてご 役手子 頭手子(かしらてこ)、坑夫頭の下の職位で準職員の俗称。
やくとう 役頭 主任(のちの課長に相当)の俗称。
やくとうわき 役頭脇 次席者の俗称(課長を役頭とすれば課長代理)。
やけ   一般には銅鉱石が酸化変質して褐色の酸化鉄になり、地表に露出しているもので、露頭ともいう。
やすまい 安米 坑内夫中、支柱夫・削岩機夫・坑夫などに対し所定就業日数就業した場合、市価より安く売り渡される米。この安米制度は江戸時代から実施されていたが、昭和5年8月廃止。
やっきょく 役局 坑内事務所(係員の詰めている所)。
やま 鉱石以外の岩石。
やまつち 山槌 ハンマー。
やまづめ 山詰 採鉱跡の空洞を岩石で充填すること。
やまどめ 山留 のちの鉱夫頭。掘子の中の熟練者が選ばれた。
やまとり 山取 破砕された鉱石や岩石を鉱車に積み込む作業。
やまとりつぼ 山取坪 採鉱跡充填の岩石を得るため、鉱石以外のところを掘削することがあり、その場所。
やまなり 山鳴り 山ハネ参照。
やまはね 山ハネ 岩盤内部に蓄えられたひずみエネルギーが急速に解放されることによって引き起こされる岩盤の破壊現象、この時瞬間的に発する音が山鳴りである。
 
よき   斧。
よきさし   支柱夫のこと。
よこばん 横番 掘子の別名。
よつどめ 四ツ留 鳥居型に組んだ支柱。天井の柱を押木または枠という。
よもぎ 黄銅鉱に富む品位の高い上皮鉱の呼称のひとつ。蓬のような外見を呈するところからこの名がつけられた。

 

ら行、わ行

らいかん 雷管 薄い銅管に起爆剤を詰めたもの。これに導火線や電気で点火して爆発させ、爆薬を起爆する。
らくばん 落盤 浮石が広範囲にわたり、崩落すること。
らとう 螺灯 坑内作業の際使用した照明具で、サザエの殻に鯨油を入れ灯芯に火を点じて使用。明治28年カンテラが導入されるまで使用。(「うた」川田氏の項に写真あり。SPS)
 
りゅうか 硫化 塊状硫化鉱のこと。一般に黄鉄鉱のことをいう場合が多いが、別子では塊状硫化鉱を指した。含銅硫化鉄鉱、キースラーガーともいい、別子の代表的な鉱石。(SPS)
りゅうず 龍頭 坑道、立坑、斜坑などの空間を維持するために、その周辺に残された岩盤。ピラーともいう。鉱石を掘り残したものが鉱柱。
りんぎ 輪木 枕木のこと。
 
ろおは   坑内の酸性水。
ロッド   削岩機用の鋼棒。ビットと一体になっているものと別になっているものとがある。
 
わかいし 若衆 若い者、青少年従業者を指して呼ぶ。

この用語集は、別子銅山記念館所蔵の資料と別子鉱山勤務経験を持つ係員層の意見を参考にして作成されたもの。「住友別子鉱山史」(平成3年)より引用、若干の補足をした。

※文中、「削岩」の字を宛てたものは、「鑿岩」とするのが適当の場合もある。原文は、「さく岩」。


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