No.11 オクトーバー・フェスト (ミュンヘン2)
初めてミュンヘンを訪れたとき、
中央駅の南側を散策していて、
大きな広場を見つけた。
柵で囲ったなんにもない空間。
ガイドブックによると、そこは年に一度、
9月の下旬に開催される、ビール祭り専用の
会場なのだという。テレージアン・ヴィーゼ。
いつかそのお祭りを見てみたいと思った。
そして、数年後、行くことができた。
願いは叶うもの!
オクトーバー・フェスト。
10月の第一日曜を千秋楽として、
2週間に亙って繰り広げられる
飲めや歌えの一大饗宴。
ヨーロッパ中のビール好きが集まってくる。
もう170回くらい続いているそうだ。
ビール会社(ブルワリー)ごとに大テントが張られ、
仮装パレードが開かれ、常設遊園地真っ青の
見事なアトラクションが競い立つ。
(とても仮設とは思えない造作と規模)
お祭りだぜ。
レーベンブロイの花馬車。ビア・テントの
前では身長5mくらいのライオンが
「れえええべん、ぶろおおおおい!」
と咆哮しながら、ジョッキを上げる。
こんなビア・テントが10数張並ぶ。
ひとつひとつが体育館なみ、
あるいは数個分の大きさである。
ひとつのテントに数千人を収容する。
お祭りの、期間のべ動員数 約650万人
飲み干されるビール 500万リットル以上。
(動員数とビール消費量の勘定が合わないが、
遊園地目的の人もいるし、子供もいるし、
テントの収容力も絶対的に不足しているため、
こんな数字に落ち着くようだ。
勿論、飲む人は一人で何リットルも消費する。)
ビア・テントの中。
夕方に行ってもまず座る場所がない。
お昼過ぎに行くとテーブルは空いているが、
予約の紙が貼ってあって座れない雰囲気。
場所の確保は大仕事だぜ。
席が見つかったら、1リットルの
マスジョッキで、プロォォスト(乾杯)!
この時期ミュンヘンの人口は3倍に膨らむ。
ホテルは当然満室。宿代も上等。
聞くところでは、キャンピングカーで
ミュンヘンに来て、昼間はビール飲んで騒いで、
夜は車に戻って寝て、起きるとまた会場に
直行、という人も多いらしい。
朝から晩まで飲んで騒ぐエネルギーの源は、
やはり美味しいビールにあるのだろうか。
テントの中央にしつらえた楽隊のステージ。
ぶかぶかどんどん、やたら景気がよい。
ウエイター、ウエイトレスは、それぞれの
テントごとに民族衣装のような
コスチュームを着ている。
楽隊の音楽に合わせて踊りながら、
ビアジョッキを運ぶ姿は、忙しさの中にも
お祭り気分が横溢していて、とてもヨイ。
ちなみにビールやおつまみ(プレッツエルなど)も、
お祭り価格だよ。(プラスお祭りレートのチップ!)
遊戯アトラクションのひとつ。
左上の黒い塊が集団観客席になっていて、
お客さんは手前を向いて着席する。
係員の挑発にひとしきり、
いえ〜とか、わ〜おうとか、だ〜とか、
応えると、次の瞬間、ステージは宙を
舞っている。果てしなく舞い舞う舞え舞おう。
何回まわすかは、係員の心意気と
裁量らしく、お客さんのノリがいいと、
延々20分周り続けてまだ終らない。
降りられない。
ビールに酔って乗ると地獄だろう。
その恐ろしさに凍りつき、
とうとう乗らずにしまった私たち。
メリーゴーラウンド。ブラッドベリの
世界に紛れ込んだ気分になった。
ちなみに私が一番気に入ったのは、
大観覧車。日本のと違って、いきなり
てっぺんまで上がり、しばらくゆっくり回って、
また急に下に降りて、ゆっくり回る。
上昇停止ポイントを少しずつずらしながら
15〜20分くらい乗っていられる。
夕闇があたりを包む頃、ゴンドラに乗って
広場を見下ろすと、通路沿いの黄色い灯火の列と
それぞれのテントを縁取って模様を描く照明が
それはそれは幻想的なのだった。
(後にFFZをしたとき、娯楽場の
雰囲気がこれにそっくりだった
のでうれしかった)
こういう帽子をかぶってそぞろ歩くと
行き交う人たちが笑いかけてくる。
酔いも手伝って、手を振り返す。楽しい。
仲間が揃ったら、もっかい行きたいぜ。
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