日本産鉱物識別表3 

   安東伊三次郎著「鉱物界之現象」より

金属光沢を有するもの (甲)
鉱物   明らかなる金属光沢を有せず有色の条痕を生ずるもの(乙)
・非金属光沢を有し白色あるいは淡灰色の条痕を生ずるもの(丙)

表3.丙のページ

はなはだ軟きもの(1)
(丙)非金属光沢を有し白色あるいは
    淡灰色の条痕を生ずる鉱物 
軟きもの(2)
硬きもの(3)
はなはだ硬きもの(4)

 

(1)はなはだ軟らかきもの=硬度1〜3

  名称 条痕色 硬度/比重 注意 成分 酸を加えたる時の変化 熱したる時の変化
83 陶土 (Kaoline) 白色 光沢なし 1、砕け易し/2.5 土塊状をなし、一種の臭を有す Alの含水珪酸塩 作用なし
(唯濃厚なる塩酸にはSiOを放ちて溶く)
容易に多くの水を出す
(吹管の前に熔けず)
(炉中でも熔けぬ)
84 滑石 (Talc) 白色、帯緑色 真珠光沢 1、砕け易し/2.7 薄片状をなし、或いは緻密なる塊にして薄片は屈撓するを得べし、脂感を有す
(石鹸様の感じあり)
Mgの含水珪酸塩 作用なし 吹管にて熱すれば薄片となる、殆ど水を出すことなし
(吹管にて熱すれば強き光輝を発して硬度6となる)
85 角銀鉱 (Cerargyrite) 灰色〜褐色 光沢鈍し 1〜1.5/5.5 これを以って鉄板を磨すれば鉄に銀皮を生ず
(断口は貝殻状、少しくこれに圧力を加えれば多色性あり)
(蝋質、柔軟、光にあてると異変する)
AgCl 硝酸及び塩酸に作用せられざれどもアンモニアに溶解す 燭火にて融解す、炭上にては銀を得べし
86 石膏 (Gypsum) 白、灰、黄、褐、赤等の諸色 ハリ、真珠、絹糸等の光沢 2、砕け易し/2.3 緻密繊維状、粒状等をなす CaSO・2H 塩酸又は硝酸を加えて熱すれば溶く、その溶液に塩化バリウムを加えれば白色沈殿を生ず 不透明白色となり片々剥離す、閉管中にて熱すれば結晶水を失い無水石膏となる
87 硫黄 (Sulphur) 黄色、灰色、褐色 金剛光沢、脂肪光沢 2/2     青炎を発して燃ゆ
(燃えて亜硫酸ガスとなる)
88 緑ばん (Melanterite) 緑色又は緑黄色 ハリ光沢 2/1.8 甘収斂味あり、酸化せる者は黄色を帯ぶ FeSO・7H 容易に水に溶く 水を出し褐色となり、さらに黒色磁性となる鉄の反応あり
89 明ばん (Alum) 白色、無色   2/ 収斂味を有す SO,Al(SO・24H   熱すれば容易に膨れて水を失い白色不熔の塊となる
90 白雲母 (Muscovite) 灰色、白色、淡黄色又は褐色 真珠光沢 2.5/3 へき開明らかにして容易に薄片となる、その片には弾性あり カリとAlとの含水珪酸塩   閉管中にて少しく水を生ず
(吹管の前には周辺は熔けて帯黄色の真珠となる)
91 黒雲母 (Biotite) 黒色 真珠光沢 2.5/2.9 白雲母に等し カリ、鉄、Mg、Alの含水珪酸塩    
92 緑泥石 (Chlorite) 緑色、稀に青、赤色 真珠光沢 2.5、砕け易し/2.7 その他の性状は(73)に等し      
93 硫酸鉛鉱 (Anglesite) 白色、灰色〜黄色 金剛光沢、ハリ光沢 3/6.1〜6.3   PbSO 普通の酸に溶けず、濃厚なる硫酸に少しく溶け、苛性カリに溶く 容易に融解す、炭上にては金属鉛を生ず
(吹管の前に爆跳して乳白色のハリに熔く)
硼砂 無色、白 ハリ光沢 2.5/1.7 水に溶ける、甘みのある味     ローソクの火にかざすとふくれて熔ける
カーナライト 無色、白 ハリ光沢、塊または粒 2.5/1.6 水に溶ける、苦味のある味     ローソクの火で熔ける
岩塩 無色、白、時に桃   2.5/2 水に溶ける、しおからい味     ローソクの火で熔ける
カリ岩塩 無色または白   2〜2.5/2.0 水に溶ける      
ソーダ硝石 無色、白 へき面体にへき開断口、ハリ光沢 1.5〜2/2.3 皮殻または層をなす、水に溶解する     ローソクの火で熔ける
硝石 無色、白 断口貝殻状
ハリ光沢
1.5〜2/2.1 薄い皮殻および針状結晶、水に溶解する、     ローソクの火で熔ける

 

(2)軟らかきもの=硬度3〜4.5

94 水鉛鉛鉱(黄鉛鉱) (Wulfenite) 橙黄色 金剛光沢 3/6.5 我が国の産は鱗状なり PbMnO 濃厚なる硫酸に溶け青色を与う 閉管中にて細粉となり融解す
(吹管の前に爆跳し、熔けて鉛粒を残す)
95 方解石 (Calcite) 白、灰、赤、その他の諸色  ハリ光沢 3/2.6 斜方6面のへき開を有す、又緻密粒状、繊維状等のものあり CaCO 硝酸または塩酸に溶け発泡す、その溶液に硫酸を加えれば白色沈殿を生ず
(冷なる塩酸に対しても泡を放ちて容易に溶く)
(弱酸にて炭酸ガスを発生)
融解せず
(熱すれば電気を起こす、吹管の前に熔けざるも、濁りてアルカリ性となり、強く光輝を放つ)
96 明礬石 (Alunite) 白、黄、赤褐 ハリ光沢 3.75/2.6 我が国の産は多くは淡紅色緻密なり 3(AlSO)+KSO+6H2O 苛性カリ及び濃硫酸に溶くるも塩酸には溶けず 細粉となる、融解せず
97 白鉛鉱 (Cerussite) 白色〜灰色 金剛光沢〜ハリ光沢 3〜3.5/6.5 塊状、鍾乳状 PbCO 容易に硝酸に溶けて発泡す
(酸に会うと炭酸ガスを発生)
ソーダと合して炭上に熱すれば鉛を生ず
(吹管の前に爆跳し、黄色の酸化鉛に変ず)
(ローソクの火では金属鉛を遊離する)
98 重晶石 (Barite) 白色、淡黄色、緑色 ハリ光沢 3〜3.4/4.3〜4.7 透明のものあり
(天青石と誤りやすい)
BaSO 作用なし
(塩酸に多く溶けず、粉末は濃厚なる硫酸に溶く、これを水にて希薄にすれば重晶石再び沈殿す)
細粉となり融解す、炎色黄緑にしてSO2を出す
99 緑鉛鉱 (Pyromorphite) かんらん色 脂肪光沢〜はり光沢 3.5/6.5〜7.1 往々6角柱状をなして産す 3Pb+PbCl 硝酸に溶く
(苛性カリに溶く)
閉管にては塩化鉛の白煙を発す、容易に熔け炎色は帯青緑色なり
(吹管の前に熔け、稜角ある粒を与う、ソーダと共に木炭上に熱すれば鉛粒を得)
ミメット鉱 黄、橙 樹脂光沢 3〜3.5/7.0〜3.5 しばしば樽のような形

 

ローソクの火で熔ける
100 毒重石 (Wihterite) 白色 ハリ光沢、脂肪光沢 3〜3.5/4.3   BaCO 塩酸に溶けて泡を生ず、希溶液に硫酸を加えれば白色沈殿を生ず
(塩酸に浸すと数秒間炭酸ガスを発生する)
容易に融解す、黄緑色の炎色を生ぜしむ
(吹管に熔けてバリウムの炎色を放ち、透明なる真珠となる)
101 珪孔雀石 (Chrysocolla) 緑色又は空青色 3.5/6.3 無定形、しばしば腎状をなし、組織及び断口は緻密なり、多く孔雀石を伴えり 銅の含水珪酸塩 硝酸に溶け、その液にアンモニアを加えれば青色となる、これに塩を加えれば珪酸の白色沈殿を生ず 融解せず、閉管にて黒くなり水を出す
102 菱マンガン鉱 (Rhodochrosite) 淡紅色 薔薇紅 3.5〜4/3.5   MnCO 徐々に塩酸に溶解す
(熱き濃塩酸または沸騰せる希塩酸にのみ盛んに泡沸して溶く)
永く空中に晒せば漸次色を失う、吹管にて細粉となる、熔けず
(吹管の前には灰褐色または黒色の塊となる)
103 輝沸石 (Heulandite) 多くは白色なり、赤を帯ぶことあり ハリ光沢、へき開面は真珠光沢 3.75/2.1 容易に薄片となること雲母の如し、青色に見ゆることあり Al及びCaの含水珪酸塩 塩酸にて分解すれども膠状とならず 割れて巻縮し熔けて白色となる
104 葱臭鉱 (Scorodite) 暗緑色往々褐又青色を帯ぶ ハリ光沢 3.75/3.2   Fe(AsO・4H   閉管中にて黄色となる、吹管にて熔け青き炎色を生ず
105 霰石 (Aragonite) 白色、灰色、淡黄色 ハリ光沢、絹糸光沢 4/2.9   CaCO 塩酸に作用せられ泡を発す、その希溶液に硫酸を加えれば白色沈殿を生ず
(酸類には泡を出して溶くるも、方解石に比すれば迅速ならず、また水に溶け易し)
融解せず
(閉管中にて熱すれば粉末となる、この粉末は方解石の菱面体よりなる)
(ローソクの火でかざすと崩壊する)
106 蛇紋石 (Serpentine) 黄、緑、往々白暗緑
(白よりほとんどあらゆる色を呈する)
弱き脂肪光沢 4/2.6 無定形塊状にして純粋のものは断口多片状なり、不純なる時は土状をなす、脂感あり、息をかくれば臭強し、往々石灰石を混有す
(塩基性岩に伴う)
  (74)に等し (74)に等し
107 閃亜鉛鉱 (Sphalerite) 帯黄色 ハリ光沢   その他の性状は(53)に等し      
108 蛍石 (Fluorite)(Fluor Spar) 白色、灰色、淡緑色又は青色等 ハリ光沢 4/3.1 結晶又は塊状或いは粒状、一般に色は淡し CaF 徐々に塩酸に溶く、アンモニアを加えて中性となし蓚酸を加えれば白色沈殿を生ず
(硫酸は之を犯し、フッ酸を出だすも、他の酸類は之を犯さず)
燐光を発す、又剥爆して熔く、粉末は容易に熔けて炎に黄色を与う
(熱すれば蛍光を放ち、色を失う、吹管の前には爆跳して縁辺部は熔く、この粉末をガラス管中に入れ、燐酸と共にこれを熱すればフッ酸を放ち、ガラスを侵害す。石膏と共に之を熱すれば熱時には透明に、冷ゆれば濁れる真珠に熔く)
109 白雲石 (Dolomite)
(苦灰石)
白又は灰色 ハリ光沢、真珠光沢 4/2.8 通常塊状、結晶体をなす時には風化して褐色を呈す、方解石より重くかつ硬し
(3方向にへき開)
CaMg(CO 粉末となせば塩酸に溶けて泡を発す、希溶液に硫酸を加えれば白色沈殿を生ず
(暖かき酸類に溶けて泡を放つ、又方解石は醋酸にも能く溶くれども、之は溶けざるがゆえに区別可)
(冷塩酸では炭酸ガスを発生せぬ)
融解せず
110 菱鉄鉱 (Siderite)(Iron Spar) 黄色、黄灰色、黄褐色 ハリ光沢、真珠光沢 4/4 斜方6面体、面はしばしば湾曲す、風化して褐黒色となれるものあり FeCO 粉末となし塩酸を加えて熱すれば泡を発して溶く、希溶液に黄血塩を加えれば青色沈殿を生ず
(熱塩酸で炭酸ガス発生)
還元炎にては黒色磁性となる
(熱すると磁性を帯ぶ)
灰硼石
(コールマン石)
無色、白 ハリ光沢 4〜4.5/2.4 一方向にへき開 ローソクの火でかざすとはねる
111 珪灰石(卓石) (Wollastonite) 白色 ハリ光沢 4.5/2.8 繊維状をなす、透角閃石に似たり CaSiO 塩酸中に入るれば膠状となる(その溶液は黄赤色のカルシウムの炎色を放つ) 摩擦するか又は暖むれば暗室にて燐光を放つ、強熱すれば無色のハリとなる
(吹管の前に辛うじて熔く)
112 菱苦土鉱 (Magnesite) 白色 ハリ光沢 4.5/3 多くは塊状土状等をなす MgCO 塩酸にて泡を発して溶く
(熱塩酸では炭酸ガスを発生)
コバルト液を以ってこれを潤し再び熱すれば赤色となる
113 菱亜鉛鉱 (Smithsonite) 灰色、緑色、青色、褐色〜白色 ハリ光沢、真珠光沢又は殆ど光沢なし 4.5〜5/4.4、砕け易し 多く閃亜鉛鉱より変成せり ZnCO 塩酸に作用せられて発泡す
(苛性カリに溶く)
(冷塩酸で炭酸ガスを発生)
吹管にて融解せず、閉管中にてはCO2を出し、暖かき時は黄色なれども冷ゆれば白変す
(木炭上に熱すれば亜鉛の蒸皮を与う)
114 異極鉱 (Calamine) 灰色、黄色〜褐色 ハリ光沢又は光沢鈍し 4.5〜5/3.5 鍾乳状、葡萄状、繊維状又は塊状、或いは粒状等
(圧電気の現象あり)
亜鉛の含水珪酸塩 塩酸にて膠様となる 閉管にて水を出す
115 重石 (Scheelite) 黄、黄褐、白等の諸色 脂肪光沢〜金剛光沢 4.5/6 往々透明のものあり CaWO 塩酸中に入るれば分解して黄色の沈殿を生ず
(塩酸或いは硝酸に犯され、アンモニアに溶くべき黄色の粉末WOを残す)
吹管の前に辛うじて熔く

 

(3)硬きもの=硬度 4.5〜6.5

116 異剥石 (Diallage) 黝色、緑色を帯ぶものあり 半金属光沢、真珠光沢 4.5/3.4 輝石の一種なり、板状をなす Ca,Mg、Feの珪酸塩   膨張して融解す
(古銅輝石は殆ど不熔なれど、異剥石は比較的に熔融し易し)
117 斜方沸石 (Chabasite) 白色、無色 ハリ光沢 4.5/2.1 多くは立方体に近き結晶をなし、やや方解石に似たり Al,CaNa,K,Si等を含む 塩酸に溶く 吹管にて水を失い膨大して泡沫状となる
118 魚眼石 (Apophyllite) 無色透明、白色又は帯青色 ハリ光沢 4.75/2.3 長柱状にして多くは放散状なり Ca,Si,K,F等を含む 塩酸にて分解し、膠状の珪酸を生ず 閉管中にて白くなり水を失う、吹管にて炎色深紫なり
119 透角閃石 (Tremolite) 白色、灰色、緑白色 ハリ光沢、絹糸光沢 5.75/3.2 結晶は細長にしてしばしば繊維状なり、往々白雲石中にあり Mg,Caの珪酸塩 酸類に侵されず 膨張して融解す
(辛うじて熔けて輝石の形に凝固し、3.3の比重を有するに至る)
120 陽起石 (Actinolite) 緑色 ハリ光沢、絹糸光沢 4.75/3 結晶は細長にしてしばしば繊維状なり、通常滑石又は蛇紋石中にあり Ca,Mg,Feの珪酸塩   膨張して融解す
(吹管にて辛うじて熔く)
121 方沸石 (Analcite)(Analcime) 白色、淡赤色のものもあり ハリ光沢 4.5〜5.5/2.4 結晶は多く立方体及び諸聚形なり、塊状をなすこと少し、透明のものあり ソジウム及びAlの含水珪酸塩 塩酸により分解せられて膠状の珪酸を放つ 容易に融解して無色のガラスとなる
(通常、光学異常をなすが、水蒸気にて熱したる後は正規に復す)
122 燐灰石 (Apatite) 通常緑色又は褐色等 ハリ光沢又はやや脂肪光沢 5/3 六方柱の結晶をなし、その端に錐面を有することあり、緑柱石に似たれども脂肪光沢多し、塊状のものあり 3Ca+Ca(ClF) 硝酸を加えて熱すれば溶解す、その少量に過量のモリブデン酸アンモニウムを加え、徐々に熱すれば美緑色の沈殿を生ず、これ燐酸存在の証なり 吹管にては辛うじて辺縁のみ融解す
(熱すれば強き緑色の燐光を放つ)
123 ソーダ沸石 (Natrolite)  白色 ハリ光沢〜真珠光沢 5.25/2.2 繊維状、束針状等をなす ソジウム及びAlの含水珪酸塩 膠様となる 熔けて無色のハリとなる、蝋火にても熔く
124 薔薇輝石 (Rhodonite) 淡紅色 ハリ光沢、一部は真珠光沢 5.5/3.5 空気中に曝せば黒色に変ず、光線状又は塊状をなす MnSiO 塩酸に溶く
(普通は酸類のために侵されざるも、しばしば炭酸カルシウムを含む結果泡沸することあり)
吹管により融解す
125 古銅石 (Bronzite) 緑色、外産には灰黄色等あり ハリ光沢〜真珠光沢 5.5/3.2   Mg,Feの珪酸塩 フッ酸を除けば、酸により侵されず 吹管の前に熔けず
126 モナジット (Monazite) 暗赤色、黄褐色等 金剛光沢、脂肪光沢 5〜5.5/   セリウム、ランタナム等の燐酸塩 少しく塩酸に溶く
(硫酸を以って湿して熱すれば、青緑色の炎色を現す、塩酸に辛うじて溶く)
吹管にて融解せず
(吹管の前に灰色に変ずるも熔けず)
127 角閃石 (Amphibole)(Horn blende) 黒色 ハリ光沢 5.75/ その他の性状は(47)に等し      
128 くさび鉱 (Titanite) 黄褐色 脂肪光沢、少しくハリ光沢 5.75/3.5   TiCa(SiO 暖かき塩酸にて少しく溶く
(硫酸に溶く)
硼球にて美しき黄緑のハリを生ず
(吹管の前に熔けて暗色のハリとなる)
129 軟玉 (Nephlite) 白色〜灰色又は黄色 ハリ光沢〜脂肪光沢 5.5〜6/ 透明〜暗、我が国には産せず、多く中国より輸入せり Al、Kの珪酸塩 膠様となる 吹管にては静かに熔けて無色のガラスとなる
130 正長石 (Orthoclase) 帯赤色、白色、黄色等を帯ぶ ハリ光沢、へき開面にては真珠様 6/2.6 単斜晶系にして互いに直角をなせる二つのへき開面あり、槌にて砕けば斜方六面体に似たる片を生ず K,Alの珪酸塩 作用なし
(フッ化水素のためには容易に侵され、他の酸類には侵され難し)
辛うじて融解す
131 白長石 (Albite) 白色 ハリ光沢、へき開面にては真珠様 6/2.6 三斜晶系にして通常互いに入り交われる細長の結晶をなす、この他長石の種類多し、各論の記事を見よ Na,Alの珪酸塩 作用なし 辛うじて融解す、炎に黄色を付す
132 蛋白石 (Opal) 通常白色又は帯黄褐色 脂肪光沢 5.5〜6.5/2 無定形、通常円塊状をなし緻密にして断口は貝殻状をなす SiO、水を含む 作用なし
(苛性ソーダの熱液には殆ど全く溶く、その他の反応は石英と同じ)
水を出だす、炭上にてソーダと共に熱すれば沸騰して融く
133 玉滴石 (Hyalite) 無色又は微黄色 ハリ光沢 6/2 米粒又は粟粒大のガラス球の如し、蛋白石の一種なり      
134 透輝石 (Diopside) 緑青色 ハリ光沢 5.75/3.3 細き柱状の結晶をなす CaMgSiO 作用なし 強熱せざれば融解せず
135 微斜長石 (Microline)  白色〜淡黄赤色 脂肪光沢、時には真珠様 6〜6.5/2.6 成分は正長石に等しけれども、三斜晶系なり、透明〜亜透明 K,Alの珪酸塩 作用なし 辛うじて融解す
136 金紅石 (Rutile)  赤色〜褐色 金剛光沢 6.25/4.2 しばしば正方柱状をなし、条線あり、亜透明〜暗、その他の諸性は(5)に等し TiO 酸に容易に溶解せず Microcosmicと共に熱すれば無色の球を得
(吹管に熔けず)
137 緑簾石 (Epidote) 黄緑色、緑色 ハリ光沢 6.5/3.2〜3.5   Ca,Al,Fe,Si,H,O等を含む 塩酸にて一部分溶く、然れども初め暖むれば酸にて膠様となる 閉管にて多く水を出す
(吹管の前に熔けて暗緑色のハリとなる、殊に鉄を多く含むものは熔け易し)
138 輝石 (Augite) 緑黒色   6.5/ その他の諸性は(48)に等し      

 

(4)はなはだ硬きもの=硬度6.5以上

139 かんらん石 (Olovine)(Peridote) 緑色、黄色 ハリ光沢 6.75/3.4 粒状をなし、或いは玄武岩中に小なるガラス様結晶をなして存在せり、透明〜亜透明のものあり Mg,Feの珪酸塩 硫酸にて分解し、膠様となる
(鉄分に富むものほど容易に塩酸によりて分解せられ膠状の珪酸を放つ)
融解せず(白色となる)
(鉄分に富むものは吹管の前に熔く)
140 石英 (Quartz) 白色、灰色、淡紅色または紫色等 ハリ光沢 7/2.7 緻密或いは粒状組織の塊状をなすことあり、無色、灰色、黄色等にて微細なる鱗状をなせるは鱗石英なり SiO 作用なし 炭上または白金線上にてソーダと共に熱すれば沸騰して熔く
141 斧石 (Axinite) 暗褐又は暗紫色 ハリ光沢 7/3.3 結晶の稜鋭くして刃状をなすこと多し Fe,Ca,Mn,Al,Si等を含む 熱したる塩酸に少しく溶解す
(酸類に溶けず)
膨れて熔け、緑黒のハリとなる、炎色青緑
142 石英(玉髄の類) (Quartz)(Chalcedony) 褐色、黄色、白色、赤色等又はこれらのの集合 やや蝋様なり 7/2.7 潜晶質、亜透明、乳状、瘤状等をなし、或いは空隙内に層をなす、緻密にして貝殻状断口を有す SiO 作用なし 炭上または白金線上にてソーダと共に熱すれば沸騰して融解す
143 石英(碧玉の類) (Quartz)(Jasper) 赤色、褐色、緑色、黄色等 光沢鈍し 7/ 潜晶質不透明、通常緻密の塊 SiO 作用なし (140)(142)に等し
144 石榴石 (Garnet) 黄色、赤色及び黒色等 ハリ光沢〜脂肪光沢 7/3.1〜4.3 斜方12面、菱形、24面体等の孤晶をなす、或いは粒状のものあり、透明〜不透明 Ca,Mg,Fe,Alの珪酸塩 作用なし
(酸類には辛うじて溶く、熔融後には酸類に犯され易し)
暗色のものは融解すれども他のものは融解せず
(吹管の前には種々の程度において熔け、濃色を呈するに至る)
145 ベスブ石 (Vesuvianite) 緑黒色 ハリ光沢〜脂肪光沢 7/3.1〜4.3 小形なる明瞭の結晶をなす、外国産のものにはその色種々あり Fe,Al、Mn,Ca,Si等を含む 塩酸にて分解す 膨れて熔けて緑褐の塊となる
(吹管の前に熔け、灰色または褐色のハリとなる)
146 電気石 (Tourmaline) 諸色あれども黒色のもの普通なり 脂肪光沢〜ハリ光沢 7/3〜3.2 石英その他の鉱物中にあること多し、結晶の柱面は3の倍数にして線条あり 複雑なる珪酸塩 作用なし
(酸類には犯されざるも、強熱したる後には熱き硫酸に溶く)
唯黒色の種類のみは辛うじて融解す、他のものは融解せず
(吹管には熔け難きものと熔け易きものとあり、凡て黄色又は赤色の炎色反応を与う)
147 紅柱石 (Andalusite) 赤色、白色、黄色、灰色等 ハリ光沢又は光沢鈍くして土状なり 6〜7.5/3・1 透明〜不透明なり、四角柱状の結晶をなすことあり Alの珪酸塩 作用なし
(Co(NOの溶液を以って湿して熱すれば青色を呈す)
融解せず
148 緑柱石 (Beryl) 緑色〜黄緑色、又は白色〜淡黄色、時には青、赤色のものあり ハリ光沢、黄色のものは時に脂肪光沢 7.5/2.7 六方柱なること多けれども、又塊状のものあり、面に線条を有し底面に沿いてへき開あり ベリリウム及びAlの珪酸塩 作用なし 融解せず
(吹管の前にはその尖端は辛うじて熔く)
149 風信子鉱(ヂルコン鉱) (Zircon) 暗色、紅色等 金剛光沢 7.5 砂金、砂鉄等と共に微粒となりて稀に産す Zr(SiO 塩酸にて分解すれば黄色試験紙に固有の橙色を出だす
(久しく熱硫酸を以って処理すれば遂には分解せらる、フッ酸に侵されず)
融解せず
(吹管の前に熔けざるも、全く退色す)
150 十字石 (Staurolite) 褐黒色 ハリ光沢 7.5/3.5 透入双晶をなし十字状のこと多し Fe,Al,Si,O,H等を含む (酸類に犯されず) 融解せず
(熱すれば水を放つ)
151 スピネル (Spinel) 黒、赤、灰、黄、緑、青 ハリ光沢 7.7〜8/3.5〜4.9 通常八面体又は多少円形なる粒状あり、透明〜不透明、我が国には産出せず MgAl 作用なし 融解せず
152 黄玉石 (Topaz) 淡黄色、無色、青色、赤色、緑色 ハリ光沢〜真珠光沢 8/3.4〜3.6 通常明らかなる斜方柱にて複雑なる端面を有す 珪酸アルミニウム及びフッ化珪素 一部分硫酸にて作用せらる 融解せず
(但し高温度にこれを熱すればフッ素の約18%はSiFの形において放出し、その結果珪線石に移化す、燐塩と共に熱すればHFを放つ)
153 金緑石 (Chrysoberyl) 緑色〜黄色を帯ぶ ハリ光沢 8.5/3.5〜3.85 透明〜不透明 ベリリウムのアルミニウム塩 作用なし
(アルカリ及び重硫酸カリウムは之を分解せしむ)
硼砂と共に熱すれば極めて辛うじて融解す
154 鋼玉石(青玉紅玉) (Corundum)(Sapphire)(Ruby) 青色、赤色、無色、灰色、黄色、緑色、褐色 金剛光沢〜ハリ光沢 9/3.9〜4.1 六方晶系塊状又は小粒状、明〜不透明、摩すれば電気を起す Al 作用なし
(硝酸コバルトの溶液を以って熱すれば青色となる、酸に溶けざるも複硫酸カリには溶く)
融解せず
155 金剛石 (Diamond) 無色透明又は淡き黄、赤、青、褐等、又は黒色 金剛光沢又は多少脂肪光を帯ぶ 10/3.1〜3.5 通常八面体、我が国には産出せず
(多くはこれを材木上に摩擦すれば容易に燐光を放つ、殊に之を真空の管中に入れ、電気を通ずれば最も美麗なる燐光を放つ)
純粋なる炭素 作用なし 空中にて電気炉に熱すれば燃えて炭酸ガスとなり、無気中にてはコークス様に変ず
(酸素ガス中において熱すれば八面体の面上に三角形の蝕像を顕す)

 

※現在、硬度の表示は、整数またはその中間数(たとえば、5.5、3.5など)のみが使用されており、ここに挙げた端数表示は行われていません。

※、名称、化学式(成分)は、現在知られている内容と異なることがあるので、正確なデータが必要な時は最新の参考書を当たってください。

緑色字のコメントは佐藤伝蔵著「大鉱物学」−大正7年−に拠って、SPSが適宜、補足したものです。こちらは酸の反応に限らず、アルカリに対する反応も記したものがあります。
同様に紫字のコメントは、須藤俊男執筆・伊藤貞市著「本邦鉱物図誌 第4巻」−昭和16年−に拠って補足したものです。
(本巻のみに記述のあるものは、項目を追加しました)


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