◆蛍石ギャラリー 13

 

 

スペイン、アストリアス、ベルベス産。紫色の結晶に、縞々の累帯構造が…。

かつてアストリアス王国のあった土地である。AD711年、イベリア半島は北アフリカから海を越えてきたイスラム勢力に席巻されたが、西ゴート王国のペラーヨは滅亡から逃れて北部のビスケー湾沿いの山岳地帯にたてこもり、王国を建てた。これがレコンキスタ(国土回復運動)の礎となる。
19世紀から炭鉱が開発されてスペイン鉱工業の中心となり、また労働運動の牙城ともなった。1934年のゼネストに呼応した鉱山労働者15,000〜30,000人が武装蜂起してアストリアス革命を起こすが、F.フランコ将軍によって2週間で鎮圧された。死者1,000人を出したという。
1936年に始まるスペイン内戦では共和国軍の北方拠点のひとつとなったが、国民戦線軍に制圧された。

アストリアスにはカラヴィア-ベルベス地方、アーロス-ヴィラボーナ地方、ラ・コラーダ地方の3つの大きな蛍石採掘地域があり、20世紀の終わり頃に美しい標本を多産した。「アストリアス」は蛍石ブランド名として通用した。カラヴィア-ベルベス地方は以前アナ、サン・リノなどの鉱山群が稼働していたが、1986年に閉山した後は、無数の小さな掘り場で蛍石が採集されている。エミリオ、イエミーナ、ラ・カバーニャなどの鉱山名で標識された標本が出回っている。

cf. F05   ヘオミネロ博物館3