234.サッタリー石  Satterlyite  Wolfeite (カナダ産)

 

 

サタリー石 −カナダ、ユーコン準州、ビッグ・フィッシュ川産

ウォルフェイト −ビッグ・フィッシュ川、Locality 16

 

クランらの採集活動は、さらに2年間に渡って活発に行われ、数多くの素晴らしい標本が見出された。ロイヤル・オンタリオ博物館との関係も良好に保たれ、この間にサッタリー石(Satterlyite)、マリサイト(Maricite)、ペニキス石などの新鉱物が次々に発見されていった。

サッタリー石はマンダリーノ博士らによって1978年に記載された新鉱物で、最初の標本はエリアC、ロカリティ16と通称される地点で採集された。ウォルフェイト(Wolfeite、下の画像、茶色放射柱状)の六角形の仮晶だったという。ユーコンの産地には、ラピッドクリークにエリアA(L1〜8)、B(L9〜14)の14の採集ポイントがあり、一方ビッグ・フィッシュ・リバーの東岸にはエリアC(L15、16)の2ポイントがある(1992年時点)。ユーコン燐酸塩鉱物の産状は、脈状(多くは結晶)、ノジュール(塊状)、二次生成の3種に大別出来るが、サッタリー石はノジュールで産出する代表格といえる。ウォルフェイトよりやや黄色っぽい。

実り多き蜜月が去り、1977年、アル・クランがロス・リバーに没すると、一連の活動は以後目に見えて奮わなくなった。クランらはかねがね天藍石を宝石にカット出来ないか検討していたが、色が冴えず歩留まりも悪いというのでこの年になって断念している。しかし、おかげで美しい標本の数々は破壊を免れ、翌年のツーソン・鉱物ショーで注目を集めるのだ。鉱物愛好家たちは、いかほど喜んだことであろう。

note:Satterlyite with Royal Ontario Museum label

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