235.ワード石  Wardite (カナダ産)

 

 

ワード石−カナダ、ユーコン、ラピッド・クリーク産

 

極北の驚異的な結晶鉱物は、ツーソンショーで鮮烈な印象を振りまいた。熱狂的なコレクターたちがユーコン目指してやってきた。学者も標本商も個人収集家も、みな採集活動に夢中になった。産地は盛大に掘り返され、上モノの希産(?)鉱物、ワード石、天藍石、コーリン石、ホワイト石、あるいは新鉱物ラピッドクリーク石などが数多く採集された。持ち帰った標本は高く売れたので、地の果て北極圏への採集旅行は、十分に採算がとれた。しかし乱採はいつでも自然破壊をもたらす。1978年5月、鉱山局は許可なき採掘を禁止する条例を発効させた。以降、私的な採集は困難となる。楽園は再び眠りについたのであった。

ワード石もまた、天藍石と並んでユーコンが世界最良を誇る鉱物といえよう。ブラジルやニューハンプシャーにも優れた結晶を見るが、質量兼ね備えた産地となると、やはりユーコンにとどめをさす。
理想組成は NaAl3(PO4)2(OH)4・2H2O。 (OH)の一部は実際には F(フッ素)で置換されていることが多い。淡い緑青色を呈するのは干の鉄分を含むためとされる。 ワード石は 4回対称軸を持つ唯一の鉱物として有名だそうだが、私にはなんのことやら…。

追記: 1970年代の産地発見・採集から約半世紀が経過しようとしている。ラピッドクリーク産の標本は 90年代-2000年代にかけてはまだ比較的潤沢に市場に見られたが、この頃では新しい採集が行われていないということで、タマ数に陰りが見えてきている。レア度が上がって価格も上昇傾向。もっとも日本では、結局、海外産の希産鉱物標本需要はそんなに高まらなかったのが現状。 (2024.11.1)

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