アントゾナイトは蛍石の亜種である。
原産はドイツのウェルセンドルフに産するほとんど真っ黒の石で、それを割ったり砕いたりすると独特の奇妙な臭いがする。アーク溶接の現場であたりに漂うと同じ類の臭いで、モトはオゾンガスだ。日本では「魚の腐ったような」と形容されることが多い。岡本/木下両博士は「嘔気を催すような不快な臭気」と書いている。鉱夫たちの頭痛の種となったこの石は、オゾンを発する意で
Antozonite と名づけられた(by C.F.Schonbein (1861))。
成分(フッ化カルシウム)中のフッ素がやや過剰で自由状態のガスが含まれているため、水分と反応してフッ化水素や過酸化水素を作り、さらにオゾンガスを発生させる、あるいはフッ素が直接大気中の酸素と反応してオゾンを形成するとみられているが、はっきりしたことは分かっていない。フッ素ガスが生じるモトには放射線による影響(結晶構造の破壊)が示唆されている。カルシウムの格子間距離が普通より大きいためとの説もある。
真っ黒〜濃紫色不透明なので見栄えはしないが、現象として面白い。といって、標本を割って実験するわけではムロンないのが私です。
上の標本はフランスで今年採集されたもの。その後、鉱山は安全のために立ち入り制限がかけられたという。