601.紅水晶 Rose Quartz (アフガニスタン産) |
アフガニスタン産のローズクオーツ標本(自形結晶)が最初に欧米市場に届いたのは、私が知る限り
2002年の年初だったと思われる。MR誌33−3
に、ある米国ディーラーがツーソンショーに持ち込んだ記事が載っている。しかし供給はすぐに途切れた。
件の業者は前年にカブール在住の地元業者から最初のロットを仕入れたのだが、これはかの9.11事件が起こった年である。事件の翌月には米英主導の軍隊が首都空爆を開始し、圧倒的な兵力によって短期間のうちにタリバン政権を排除した。その後、米軍を主体とする国連部隊が対テロ戦継続のため現地駐留を続け、今日なお治安維持の任務にあたる。
こうした不穏な国内情勢と、産地付近への米軍の展開⇒一般人の通行禁止、さらに現地業者の個人事情が加わって、このルートからの標本供給は望み薄となったまま現在に至る。
一方2005年頃、別ルートからとみられる分離結晶標本が大量に出回ったことがあった。関東の鉱物ショーではアフガン系の業者ブースできわめて安価に提供されていたそうだ(相互リンクしている鉱物サイトさんのショーレポートによる)。
私自身はさらに別のルートとみられる標本を2006年の大阪ショーでみた。やはりアフガン系の業者による扱いだったが、花崗岩ペグマタイトに透明度の高い群晶が載る素晴らしい標本だった。冒頭に書いた米国の業者さんによれば、非常に興味深い産状だという。「アフガンローズ」は一般にブラジル産に非常によく似ているからである。この時はふっかけられてる気がしたのであっさり入手を諦めたが、例によって今さらホゾを噛んでいる。
余談だがこのショーでは、ある国内の審美系業者さんがほとんど深紅といっていい小さな標本を6桁半ばの価格で出品していた。次のショーではもうなかったので、そんな値段でも買った人があったのだろう。
こうした展開なので、人によってはアフガンローズは入手が容易と信じておられるかもしれない。実際、現地に行けば山ほど採れる可能性はある。しかし私の見るところ、ブラジル産以上の貴重品だと思う。見つけたらゲットだ。