No.17 クウェート  (その2)


ラマダン(断食月)のシーズンに行き逢うと、
イスラム教徒でないものには生活がややわずらわしい。
一般に就業時間が短縮されるので、
仕事の進まないことったらない… 。
例えば通関なんか、あたりまえに数日遅れてしまう。 

食事はともかく、昼間、水を飲めない
(ことになっている)のがつらい。 
ペットボトルを持ってホテルを出ようとしたら
大変な剣幕で注意されてしまった。
もちろん町中では店が開いてないし、
オフィス備え付けの給水器も
水タンクが補充されないので、参ってしまう。

町の風景 

現代社会は車社会である。
クウェート人(クウェーティー)を見たら
スピード狂(クレージー)と思って用心するのが賢明である。
必ずといっていいほどケータイ片手に飛ばす。
車線を縫うように走る。事故が多い。
路肩に新たな故障車や、破損した車が
放置されているのを見ない日はない。

ランボルギーニとかシュコーダとかアウディとか、
ときどき高級車(?)が走ってゆく。三菱ギャランはよく見かけた。
とにかく燃料が安いので、燃費が悪いスポーツカーも全然平気だ。
って、そもそも燃費を気にして乗ってないよな。

定宿ホテル近くの商店街。
1階(〜2階)部分がお店になっている。

クウェート人(有国籍)はお金持ちだという。
大きな家、高級スポーツカー、
ヨーロッパへの買い物旅行
(どうもパリへの憧れが強いらしい)。
お金〜さえあれば〜、何でも手にはいる〜♪ 
(←世界お金持ちクラブの歌)てか?

一方、親米産油国の富を求めて
スーダン、イラン、インド、フィリピンなどから
出稼ぎに来た人々が実人口の7割以上を占める。
彼らが故国に帰るのはふつう数年に一度だとか。
そのお金で食べている家族は寂しかろう。

町を歩くとあちこちにショッピングモールがある。
アラブはもちろん、西洋圏の商品も
たいてい見つけることが出来る。
いわゆる日系の百円ショップもあった。
(こちらでは邦貨換算200円ショップだが)

食べ物屋さんとしては、アメリカ系のレストラン
チェーン店のほか、インド、パキスタン、レバノン、イラン、
日本、中華料理店など幅広くある。
私はレバノン料理のデザートにはまった。
ハチミツやココナツミルクのたっぷり入った
ペースト状の温菓子で甘くて滋養たっぷりだ。
名前を思い出せないのが難だが。
マクドナルドへ行くと、「マックアラビア」
という地域限定メニューがある。味はなんてことない。

無数の両替商が店をかまえているが、
日本円をディナールに替えてくれるところはほとんどない。
銀行はもとよりダメ。やっぱり米ドルです。ユーロです。

ショッピングモール
アラビア文字〜〜

モールの中

モールの中。果物屋さん 瓜やメロンやナツメやら
オレンジ、リンゴ、バナナ、ぶどう。きっと輸入品だと思う。

香水店(香油店)…かな

女性向けの衣裳店や化粧品店がやたらと多い。 
とはいえ、女性は外ではたいてい黒いベールに 身を包んでいる。
家の中でファッションショーをするのだろうね。

一説によると、アラブのお金持ちの最大の道楽は
奥さんを綺麗に着飾らせることだとか。
なるほど、それはゴールの遠ざかりゆく、
終わりのない蕩尽であろう。

女性衣裳店
(金糸で縫いとった唐草模様のエスニック服はとっても豪奢)

金線細工のお店は集まって軒を連ねている。 
流線を多用したデザインで、組み合わせて全身に
まとうことを前提にした、 派手で大型のピースが多い。
貴石を扱っているのは、中華系のお店が多いように思う。
ペルシャ名産のトルコ石など置いてないか探してみたが、まずない。
ルビーとかサファイヤとかダイヤとかはどこでも見かけた。

目をデザインしたゴールドジュエリー
邪眼除け?

アラブ系の男性は白い布を体に巻いて、
頭に黒いゴムバンドを嵌めただけの、
簡素な身づくろいだ。足元はゴム草履(笑)
胴まわりが太くて、かっぷくがよい。

町中では友人同士なかよく手をつないで
歩いている姿をよく見かける。
こちらにまで親密感が伝わる。
あごヒゲ生やした漢どもが、
ソフトで暖かい雰囲気をまとっている。

こういう文化を日本やアメリカは持たない。
男性は強くカタイ態度を堅持すべしと、
未だに無意識レベルで信じていて、
柔らかさを本能的に忌避しているから。

バザールでござーる

市内から10分も車で走るとすぐに郊外で、
見渡すかぎり砂漠の中を
まっすぐな道が地平まで走っている風景に出会う。

イラク国境に向かう道は一路なだらかな登り。
道路沿いの潅木はみなイラクの方に幹も枝もなびいている。
思うに、海岸から内陸に向けて
つねに同じ向きの強風が吹いているのだろう。
30分ほどゆくと「ゼロキロポイント」と呼ばれる地点。
市内を一望に見下ろせる
ゆるやかな高地で、検問所がある。
イラク軍がここまで兵を進めて砲台を据えたら最後、
クウェート市の防衛はもはや不可能となる戦略ポイントなのだそうだ。

ホテルのラウンジからの眺め
(よく時間をつぶした いつもどこかが建設中)

いつも滞在するホテルのロビーに
イラクが侵攻してきた頃の写真が仰々しく掲っている。
破壊されたタイプライターや空の砲弾が
ガラスケースに入れて飾ってある。 
湾岸戦争以後、一般にクウェートのホテルはセキュリティレベルが高い。

エントランスはコンクリートの障壁で外部から隔てられている。
ガラス張りの回転ドア内に金探と手荷物X線装置。
 敷地内の駐車場にはインド軍やネパール軍上がりの警備員がいる。
アメリカはじめ、各国の軍服を着た人がよく泊まっていた。
クールダウン中の兵士が、Tシャツ姿でうろうろしていることもあった。

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