本邦鉱物図誌 第4巻 より抜粋2 (誤字の修正はしていませんが、表現は一部変更あります−SPS)

別表(各試験による反応) 

      5)簡単な定性試験 へ  諸元素の検出法 へ

閉管で熱した場合の変化

もとの色

熱し後の色

物 質
熱 時 冷 時
緑または青 銅鉱物
緑または褐 鉄鉱物
Mn,Co鉱物
暗赤 暗赤 第二鉄の酸化物
白または無色 暗黄から褐 淡黄から白 鉛及び蒼鉛鉱物
白または無色 淡カナリヤ黄 亜鉛の鉱物

硝酸コバルトによる反応

物質 備考
淡桃 MgO またはそれを含む塩 純粋なることを要する。またあまり鋭敏でない。
緑、冷えるとxxx ZnO またはそれを含む化合物 鉱物片かまたは木炭上の昇華(ZnO)について試みよ。
帯青緑 SnO 木炭上の昇華で試みよ。
ウルトラマリン青 Al2O またはそれを含む化合物 Alが最もよい検出方法であるが、Znと誤ることがあるので、
その区別には他の方法を用いうるのがよい。
ウルトラマリン青 Zn の珪酸塩  
汚い緑 Sb の酸化物 これらはいずれも不著、かつ非常に満足な結果は示さぬ。
帯黄緑 Ti の酸化物
Si の酸化物
ラベンダー Be の酸化物

炎色反応

色調 元素 備考
クリムソン Li リシウム鉱物は珪酸塩でも燐酸塩でも、灼熱後アルカリ性とならぬ
(ストロンシウムとの区別)
クリムソン Sr 炭酸塩、硫酸塩ともにこの反応を示す。しかも灼熱後アルカリ性を示す。
珪酸塩、燐酸塩はSrの炎色反応を示さぬ。
黄または橙 Ca ただ熱しただけでこの反応を示すものは小数に限られる。
塩酸に浸して行えばさらに広く明瞭に見られる。
強い Na 非常に鋭敏
帯黄 Ba 炭酸塩、硫酸塩ともにこの反応を示し、灼熱後アルカリ性を示す。
珪酸塩、燐酸塩はバリウムの炎色反応を示さぬ。
帯黄 Mo 酸塩物、硫化物の形においてあるものに示される。
輝いた多少帯黄 ターメリック紙と塩酸のテストは決定的である。
化合物は灼熱後ほとんどアルカリ性反応を示さぬ。
Tl  
エメラルド 銅の酸化物
またはヨウ化物
塩酸に浸して行うと焔は緑を帯びた藍青となる。
淡青味 色は非常に鋭敏でない。
しかし燐酸塩の鑑別に用いる。
青味 Zn 焔の中に輝いたすじを引く。
藍色味 銅の塩化物 焔の外縁はエメラルド緑色を呈する。
藍色味 Se 特有な臭気を伴う。
K,Rb,Cs  

閉管で熱した時生ずる昇華物

冷 時 熱 時 物 質  
無色の液体 無色の液体 結晶水を有する鉱物より出る。
中性の時もあるが、酸性またはアルカリ性の時もある。
淡黄、無色の液、揮発し難し 無色〜白い粒 TeO Teまたはそれの化合物より
赤〜暗黄液体、揮発し易い 黄、結晶質少量のときはほとんど白 Sまたはそれの化合物より
暗赤、ほとんど黒色の液体、揮発し易い 帯赤黄、透明な固体 Asの硫化物 AsSまたはAsその他より
黒、揮発し難し、固体 帯赤褐 SbOS Sbの硫化物またはその化合物より
輝いた暗色の固体、熱い付近は
しばしば灰色で結晶質である
As Asまたはその化合物より
輝いた黒色、固体 HgS 昇華物の少量をとり、こすって細かくすると赤色の粉末となる
黒色の熔融し易い粒、微細なものは
透過光で見ると帯赤色に見える
Se Seまたはセレン化物より発する。普通TeOを伴う
黒色、熔融し易い粒 Te  
灰色の金属粒、小紙片でこすると集まる Hg Hgまたはアマルガム等より
白、固体 Tb,Sbの塩化物、
As,Sbの酸化物
 

開管で熱した時生ずる昇華物

色及び性質 昇華物 備考
黒、揮発し易し Asまたは水銀の硫化物 As,Hg,Sb,S等を含んだ鉱物を急激に熱する場合、
空気の流通を十分にし酸化作用を十分にする
Sbの酸硫化物
黄〜橙、容易に揮発 SまたはAsの硫化物
赤、揮発性 Se SeOを伴う
熱時は淡黄、冷時は白 MoO Moの酸化物または硫化物を徐々に熱する時、
資料の付近には微細な結晶が網状に現れる
白、容易に揮発、結晶質 As 環状に現れる、温かいガラス壁では
結晶質である
白、容易に揮発、結晶質 SeO Sbまたはその化合物より、(Sを含まぬ時)
昇華物は八面体と柱状の2種類の結晶よりなる
白〜淡黄色の粒、徐々に揮発 TeO  
淡藁黄(熱時)、白(冷時)
不熔融揮発せず、非晶質
Sb Sbの硫化物より濃白色の白煙として立ち
それが大部分管の底にたまる
この昇華物はSbである
白、揮発せず、不熔融 鉛の硫化物または硫酸塩 Pbの硫化物より生ずる、
多くは資料に近い下部に集まる

木炭上の昇華

色及び性質 物 質 備 考
資料に近く 資料より遠く
白、非常に揮発し易い
大部分資料より離れた
所に生ずる
白〜帯灰 As As及びその硫化物また砒化物より
得られる、
酸化焔で熱する、
葱臭を発する
鋼灰、淡い金属光沢、
非常に揮発し易い
白、
しばしば赤色を帯びる
SeO2
(赤色を帯びるものは
金属Seを遊離するため)
酸化焔で熱する、昇華物に
還元焔でふれると焔に藍青色
を与える、Seの臭気は特有である
白、非常に揮発し易い、
大多数は試料より遠い所
に生ずる
白、あまり著しくない Tl 昇華物を還元焔でふれると
昇華し焔に緑色を与える
濃白、揮発し易い 灰、時に多少
褐色味を帯ぶ
TeO
(灰色の部分はTe)
昇華物を還元焔で触れると
揮発し焔に緑色を与える
濃白、揮発し易い
試料に非常に近くに生ずる
帯青 Sb
Sb
Sb及びその酸化物を
酸化焔で熱すると生ずる
カナリヤ黄、(熱)、
白(冷時)、酸化焔では
揮発しない
淡白 ZnO 還元焔で吹くと金属亜鉛を
生ずる、これは再び揮発して
酸化して鉱衣として生ずる
鉱衣を硝酸コバルトで湿らす
と緑色となる
淡黄〜白(熱)、白(冷時)
酸化焔では揮発せぬ
淡白 SnO 硝酸コバルトで湿らして
熱すると帯青緑色を呈する
淡黄(熱時)、白(冷時)
時に結晶質、酸化焔では
揮発する
帯青 MoO 還元焔で熱すると美しい
藍青色を呈する
MoOの生ずる所よりさらに
試料に近くでは銅赤色の
MoOの昇華を生ずる
黄(熱時)、藁黄(冷)
酸化焔、還元焔ともに
揮発する
濃白色
(帯青白色の縁を有する)
Pbの酸化物硫酸塩
硫化物の混合物
Sbに非常によく似ている
方鉛鉱やその他の鉛の
硫化物を木炭上に非常に
強く熱する時出来る
暗橙黄色(熱時)
橙黄色(冷時)
酸化還元両方焔で
共に揮発
帯青色 Bi 鉱物をHIで浸して熱すると
揮発し易いチョコレート褐色
のヨウ化蒼鉛に変化する
暗ほとんど黒であるが
帯赤褐色に変わる
酸化還元両焔で
揮発する
黄色 CdO ごく薄い部分では丁度
孔雀石のような紅色を
呈することがしばしばある
帯赤〜ライラック色   Pb,Sbを
伴うAg
純なる銀を木炭上で長い間
熱すると淡褐色を呈する
鉱衣を示す

硼砂球反応

酸化焔 試料の量 試料 還元焔
熱時 冷時 熱時 冷時
淡黄 無色〜白 Pb,Sb,Cdの酸化物 淡黄 無色
淡黄 無色〜白 Biの酸化物
淡黄 無色〜白 Moの酸化物
淡黄 無色〜白 Wの酸化物 黄〜黄褐
淡黄 無色〜白 Tiの酸化物 帯灰 帯褐紫
ほとんど無色 Fe,Uの酸化物 淡緑 ほとんど無色
淡黄 Ceの酸化物 無色 無色
帯黄緑 Crの酸化物
帯黄緑、
ほとんど無色
Vの酸化物 汚緑 美緑
濃黄

橙赤

中より多 Ceの酸化物 無色 無色
Uの酸化物 淡緑 淡緑より
ほとんど無色
Feの酸化物 淡緑
Crの酸化物

Cuの酸化物 無色〜緑 不透明赤色
多量の場合

Coの酸化物
帯赤褐
Niの酸化物 不透明の灰色 不透明の灰色
帯赤紫 小量 Mnの酸化物 無色 無色
淡紅 淡紅 Diの酸化物 淡紅 淡紅

燐塩球の反応

酸化焔 試料 還元焔
熱時 冷時 熱時 冷時
非常に淡い黄色 無色 Ta,Cdの酸化物 非常に淡い黄 無色
非常に淡い黄色 無色 Pb,Sb,Bi酸化物
非常に淡い黄色 無色 Nbの酸化物
淡黄 無色 Wの酸化物 汚青 美青
淡黄 無色
Tiの酸化物
無色 Ceの酸化物 無色 無色
無色 Feの酸化物 非常に淡い
帯黄緑色
無色
淡帯緑黄 Uの酸化物 淡汚緑 美緑
帯黄緑 無色 Moの酸化物 汚緑 美緑
濃黄〜帯褐赤 黄色
〜ほとんど無色

Feの酸化物 赤、黄、
〜帯黄緑
ほとんど無色
〜非常に淡い紫
黄色〜濃黄
Vの酸化物 汚緑 美緑
帯赤〜帯褐赤 黄〜帯赤黄
Niの酸化物 帯赤〜帯褐赤 黄〜帯赤黄
淡緑 銅の酸化物 淡黄緑 淡青ほとんど無色
時にルビー赤色
暗緑 銅の酸化物 帯褐緑 不透明赤
汚緑 鮮緑 小〜中 Crの酸化物 汚緑 鮮緑

Coの酸化物
帯灰紫 Mnの酸化物 無色 無色

 


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