本邦鉱物図誌 第4巻 より抜粋3−1 (誤字・誤記が疑われる部分も原文を原則採用)

簡単な定性試験 へ

別表(各試験による反応)

諸元素の検出法

3−1
(このページ)
3−2
(別ページ)
3−3
(別ページ)
アルミニウム
アンモニウム
アンチモニー
砒素
バリウム
蒼鉛(ビスマス)
ホウ素
臭素
カドミウム
セシウム
カルシウム
炭素
炭酸塩
塩素
クローム
コバルト
フッ素
ゲルマニウム

水分
ヨウ素


リチウム
マンガン
水銀
モリブデン
ニッケル
窒素
酸素
ニオブ

オスミウム

白金
ルビジウム
カリウム
セレン
珪酸

ナトリウム
ストロンチウム
硫酸塩
硫化物
テルル
タリウム

チタン
タングステン
ウラン
バナジウム
亜鉛


アルミニウム Al

アルミニウムを含む鉱物の一片を硝酸コバルトで湿らせ、吹管で強熱すると美しい青色を呈する。無色の鉱物に限り明瞭。熱しているうちに着色したり熔けてしまうものは適当でない。亜鉛の珪酸塩も同様の処理でよく似た青色を呈する。
藍晶石、鋼玉を例として試みよ。黒かまたは不明瞭な色が出たときは、さらに硝酸コバルトの量を増し、かつその熱度を低めて試みるとよい。(戻る

アンモニウム NH4

鉱物としては稀だが、水に溶けるものが多い。例は塩化アンモニウム石(Sal Ammoniac・NH4Cl)、Struvitre(NH4MgPO4・6H2O)。
閉管中で熱したりすると強いアンモニア臭を感じる。水に溶けるものは水酸化カリウム溶液を加えて沸騰すると強いアンモニア臭を発する。 (戻る

アンチモニー Sb

1)木炭上で酸化焔で熱すると濃い白い昇華物を生ずる(アンチモンの酸化物)。これは熱いところに近く沈殿し(砒素の昇華物と比較)、遠いところは青色を呈する。無臭であり非常に昇華しやすく、熱すると酸化、還元焔いずれにおいても昇華してその位置を変え、また薄い皮膜となったところは青色に見える。鉱衣は硫化アンモンで樺黄色となる。
鉛、蒼鉛が存在するときは見分けがたい。Sb2S3を例として行う時、一種の臭いがするのは硫黄臭であり、アンチモン臭ではない。

2)開管の試験
同様に昇華物が出来る。硫黄が存在するときは、濃白色の煙を出し、管の下の底よりだいぶ離れて沈殿するか、一部は輪状になって熱部の近所に沈殿する。これがSb2O3である。これを顕微鏡で見ると、八面体と柱状の2つの結晶を見る。それぞれ、SenarmontiteとValentinite に相当する。この部分を熱すると、昇華して管の上部へと移動する(砒素よりゆるやか)。
底の方に出来る白い昇華物はSb2O4で昇華せず、また熔融せず、熱すると藁黄色を呈し、冷えると白くなる。硫黄がないときはSb2O3のみである。硫黄が存在する時なぜSb2O4が出来るか分かっていない。

3)閉管中の試験
アンチモンの硫化物または多くの Sulphoantimonate は著しい Sb2Sb2O の昇華を生ずる。これはかなり強く熱する必要あり昇華しがたい。熱時は黒く見え、冷えると赤褐色を呈する。(Sb2O3+O=Sb2Sb2O+S)
金属アンチモンは閉管中では昇華しない(硬質ガラスが軟らかとなるくらい強く熱すれば昇華する)。ところが砒素及びその砒化物はすぐ昇華するゆえに砒素とアンチモンとを区別することが出来る。今両者の混合物を閉管で熱すると、砒素は昇華して管の上部に沈殿するので、それを切り離し、砒素の昇華は開管の方法(後述)で調べ、アンチモンは木炭から開管で調べる。
Sb2S3を閉管で熱するとごく少量の酸素の供給により、Sb2S3+O=Sb2Sb2O+S なる反応が起き、Sb2Sb2O が出来、硫黄の昇華が伴って生ずる。閉管中の少量の空気が重要な役割をしている一例である。

4)石膏板上でヨウ化水素酸で浸して吹けば、美しい赤い皮膜(アンチモンのヨウ化物)ができ、強アンモニアをかざすと消える。

5)還元焔で淡緑色の焔色を示すが、重要なテスト方法でない。

6)アンチモンその硫化物を強い硝酸で処理すると、酸化されてSbO2OH(?) (meta-antimoniac acid) となる。これは白色の沈殿物で水にも硝酸にも溶けない。砒素は溶解するから、砒素の中のごく少量のアンチモンの検出に適当である。この不溶解物をろ過して、他の方法でアンチモンの検出をなす。 (戻る

砒素 As

木炭上で熱すると砒素及びその硫化物はいずれも昇華し、その中の砒素は酸素と化合してAs2O3の白い昇華物として沈殿する。試料より離れたところに沈殿するのが常である。
還元焔で熱すると、にんにくのような臭いを出す。これは砒素の臭気で、少量のAsH3の発生にもよる。AsO3には臭気がない。FeAsSにより、試験するとよい。試験をして後少しの間、硫黄の臭気を発する(SO2の臭気)。
開管で熱すると、As2O3を発する。ガラスの壁に環となって付く。非常に揮発性ですぐガラスの外部に追い出すことが出来る。As2O3は八面体の結晶が多い。FeAsS+10O=Fe2O3+2SO2+As2O3。もし黄色、または黒い砒素の硫化物が出来たら、酸化が適当に行われていないことを示す。
開管中で熱すると砒素が揮発して管の壁につく。
輝いた黒色を呈し、砒素鏡となる。
閉管中の昇華物の下より切り離して、砒素を揮発させると、特に著しくにんにく様の臭気が生ずる。
硫砒鉄鉱(FeAsS)を熱すると、最初は黄色い硫化砒素を発し、すぐ砒素鏡が生ずる。鉄は砒素より硫黄の方に結合しやすいので、 FeAsS=FeS+As の反応が進むによる。

硫黄または鶏冠石などは、開管中に熱すると最初は帯赤黄色の昇華として凝固するが完全に揮発する。(熱すると暗赤色〜黒色、冷えると帯赤黄色)。開管中に As2O3 をいれ、途中に木炭を入れて、最初木炭の部分を熱して赤熱させ、後、As2O3 を熱すると昇華して木炭を通り還元されて砒素鏡を作る。これは木炭上の昇華物を検出する時に便利である。特に Sb2O3 が混合しているとき、便利である。アンチモンが多すぎる時は、木炭の付近にも黒い化合物が出来て砒素鏡と区別出来ないことがあるが、砒素鏡は一般に遠方に出来る。

石膏板上のヨウ化水素の反応では非常に揮発性のオレンジ−黄色の膜が生ずる。

焔上で還元焔で吹くと、紫色を呈する。これは砒素でも As2O3 でも生ずる。すなわち開管より As2O3 を還元焔中に揮発させると生ずる。濃硝酸中では溶けて砒酸 H3AsO4 を生ずる。

Arsenate(砒酸塩) 砒素の時用いた酸化か焼の過程は、Arsenate においてはすでに酸化されているので用いられない。砒素鏡を生ぜしめるのがもっともよい方法である。Arsenate は多くは容易に熔融する。閉管中に木炭と試料粉を入れ、熱すると、Arsenate は還元されて砒素鏡を示す。もし不熔融性で容易に還元されやすい金属 Pb,Cn.Feがない時は4倍のNa2CO3 と木炭とを混ぜ、閉管中で最初はゆっくりと、最後は強く熱すると同様に砒素鏡を生ずる。

6倍の Na2CO3 と共に白金さじ、または木炭上で酸化焔で熔融する。それを水に溶かし、濃塩酸を加え、また過剰のアンモニアを加えて硫酸マグネシウムの溶液を加えて NH4MgAsO4 の沈殿を生ぜしめ、これを乾かし、上と同様に試験する。 (戻る

バリウム Ba

1)塩酸に浸して焔色反応をみると、黄緑色を呈する。珪酸塩においては見られない。ホウ素または燐と見誤らないよう、注意を要する。(例、重晶石 BaSO4、毒重石 BaCO3)。

2)バリウムを含む鉱物は強く熱するとアルカリ性となる(珪酸塩または燐酸塩との区別)。アルカリまたはアルカリ土金属を含む鉱物はいずれも同様の反応を示す。(重晶石または毒重石とターメリック紙を持って試験することが出来る)。

3)溶液として希硫酸を加えると、硫酸バリウムの沈殿を生ずる。この沈殿は水にも希酸にも溶けない。これによりホウ素、燐酸と区別出来る。 (戻る

★蒼鉛 (ビスマス) Bi

1)3倍の炭酸ソーダと混ぜ、木炭上で還元焔で吹くと蒼鉛が還元されて出る。蒼鉛金属は融けやすく、また脆く、鉛のように薄く延びない。レモンまたはオレンジ黄の酸化蒼鉛の昇華物を出す。昇華しやすい。鉛と似ているが、ヨウ素のテストで区別できる。

2)3〜4倍量のヨードカリと硫黄の混合物を加え、木炭上で酸化焔で吹く。試料に近く黄、その外辺は輝いた紅色を呈する。石膏板上ではヨウ化蒼鉛のチョコレート褐の皮膜が出来る。強アンモニアの上にかざすと輝いた赤色に変わる。

同量のヨウ化第一銅と硫黄とを混合し木炭上におき、小アルミニウム板をおき(遊離ヨウ素の析出を防ぐため)、吹管焔でアルミニウム板の方向に試料を熱すると、赤褐色のヨウ化蒼鉛の鉱衣を生ずる。また亜錫酸ソーダ(Na2SnO2)で、Biイオンは黒変する(Biを遊離するため)。亜錫酸ソーダは、塩化第一錫を流水中で冷やしつつ、NaOHを滴下し、最初に出来たSn(OH)2を再び溶解せしめたもの(透明液)である。使用する毎に作成して用いる。 (戻る

ホウ素 B

1)焔色反応は緑色、多少輝いて黄色味を帯びる。バリウムと混同しやすい。もし反応が出ぬ時は重硫酸カリと硫黄の混合物を約3倍の量加えて吹管焔またはブンゼンバーナーで熱する。このときは白金線の先をごく小さく丸めておく必要がある。また鉱物をフッ化水素にひたすとBF2の緑色の焔色反応をごく一瞬見ることが出来る。
例えば、ダトー石 Ca(BOH)SiO4、ダンブリ石CaB2(SiO4)2は単に熱しただけで緑色の焔を見る。電気石の場合は重硫酸カリと硫黄の混合物を用いねばならぬ。

2)塩酸に溶けるものはその溶液をつくり、また溶けぬのはアルカリ溶融して後、塩酸に溶かす。この溶液をターメリック紙に浸してみると変化なく、100℃に乾かすと赤褐色に変する。後アンモニアにふれると、インク様の黒色となる。非常に鋭敏な反応であって、すべてのホウ素鉱物にあてはまる。数ccのエチルエステルおよび数滴の硫酸にひたして焔中に入れるとホウ酸エチルエステルB(OC2H5)3の緑の焔色反応が見える。(F2−、SO2−のイオンは妨害となる)  (戻る

臭素 Br

塩素およびヨウ素と同様、硝酸銀で臭化銀を沈殿さす。重硫酸カリと二酸化マンガンと共に Bulb Tube中で熱すると臭素を出す。その周期、色などで区別する。臭化銀を方鉛鉱と共に閉管中で熱するときは硫黄のような黄色い(熱時)、冷えると白い臭化鉛の昇華物を発す。 (戻る

カドミウム Cd

無水炭酸ソーダと混じて木炭上で吹管で吹く(還元焔で)と金属カドミウムが生ずる。これが昇華し空気中で酸化して帯赤褐色の昇華を木炭上に示す。遠く離れた所は黄色い。
塩酸、硝酸で溶解せしめ、硫酸を加えて白煙を立たす。稀めてアルミニウム板を投じ沸騰しろ過し析出する金属を硝酸に溶解せしめアンモニア水を加える時、沈殿が出来ればろ過して黄血塩の液を加える。もし白色の沈殿が出ればCdがある。もし銅がある時はフェロシアン化銅を生ずるからこれを青化カリに溶解しアンモニアを加え数滴の硫化アンモニウムを加えるとCdがあれば黄色い沈殿(硫化カドミウム)を生ずる。
これは銅、カドミウムのアンモニア液にシアン化カリを加えると銅シアン錯塩、カドミウムシアン錯塩を生ずるが前者の方がより安定で銅イオンを生じていないのに反し、Cdシアン錯塩には多少Cdイオンを有するに依る。  (戻る

セシウム Cs

カリウムと同様に塩化白金酸セシウムとして沈殿する。これはカリウムの沈殿より溶け難い。これを白金線にとり、焔色反応をスペクトルで試験する必要がある。 (戻る

カルシウム Ca

1)吹管の前で熱するとアルカリ性となる。(ただし珪酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩その他例外がある) アルカリ金属、アルカリ土金属を含むものはいずれもこの反応がある。

方解石を熱して水に湿したターメリック紙上におくと、方解石はCaOとCO2とに分かれ、CaOはある程度水に溶けてアルカリの反応を示すものである。
蛍石を同様な処理をなすと、水は一部蛍石に作用して、CaF2+H2O=CaO+HFとなりアルカリ性を示す。

2)焔色反応は黄赤色を呈する。時に現れぬこともあるから塩酸に浸してみる。(例:方解石)

3)カリウムを含む溶液に希硫酸を加えると、CaSO4・2H2Oが生ずる。(水に溶けず、また希塩酸にもほとんど溶けぬ。このとき溶液の濃度があまり低くても出来ず、また強酸性でも出来ない)
例えば方解石の塩酸の溶液を2分し、1つを10倍に薄める。この時希硫酸を双方に加えると希薄な液には沈殿が出来ぬ。(CaSO4の溶解度のために)
カリウムは塩酸溶液よりアンモニアでは沈殿しないが、もし燐酸、炭酸を含んでいるときはアンモニアを加えると、燐酸カルシウムが再び沈殿する。(燐灰石で実験せられよ)

4)強アンモニアでアリカリ性として炭酸アンモンを加えると炭酸カルシウムが沈殿する。

5)弱アリカリまたは中性溶液より蓚酸アンモンで蓚酸カルシウム(CaC2O4)が沈殿する。(湿式の方法を参照)  (戻る

炭素 C

1)閉管中にて炭素とかAnthracite, Bituminous Coal, Hydrocarbon または有機物を熱すると、油とか水を出し、ほとんど純な炭素を残す。 Bituminous Coal を管の中に入れてその一端をあたためて引きちぎり細口を開ける。中の炭の部分を熱するとガスが出る。火をつける。中に残った残留物が硬い、密着した小胞ある塊であればコークスであり、軟らかくくだけやすいものであればコークスでない。

MnO2を管球中に入れ、一片のAnthracite を注意してその近所まで入れる。そしてMnO2を熱すると酸素を発生し炭質物は燃焼する。 (戻る

炭酸塩

1)炭酸塩を酸に溶かすと炭酸ガスが発生する。希塩酸が好都合である。
炭酸ガスは無色、無臭、重いガスである。水酸化バリウムに吹き込むと炭酸バリウムの白沈殿を生ず。2ツの試験管の一方に炭酸ガスを発生させ、他に水酸化バリウムの水溶液を入れて置く。炭酸ガスの入っている方を傾け水酸化バリウムの入っている管の口へあてて、そそぎ込むようにして後、水酸化バリウムの入った管の口をおさえて振れば水溶液は白濁する。

2)時計皿の上に方解石の一片を置いて希塩酸に浸すと発泡して溶けるのがよく見られる。

3)苦灰石は冷希塩酸ではほとんど発泡せず、温めると発泡する。試料は十分粉末とするのがよく、また過熱する時沸騰するのを炭酸ガスの発生と見誤らぬよう注意を要する。
毒重石または白鉛鉱をそれぞれ濃塩酸、濃硝酸に浸す時、ほとんど溶けずまた発泡せぬ。それは生じた塩化バリウム、硝酸鉛が濃酸には不溶であるからである。2,3倍に薄めるとそれぞれ溶けるから次々と炭酸ガスを発生する。
またあまり少量の炭酸塩は検出が困難である。例えばごく少量の無水炭酸ソーダを溶かし、中に希塩酸を加えても炭酸ガスを発生しない。それは生ずる炭酸ガスがある程度まで溶けるゆえである。熱するとそのガスが発生してみえてくる。
閉管中で熱すると分解して炭酸ガスを発生する。この温度は物により異なる。カリウム、ナトリウム塩は赤熱以上に熱しないと分解しない。炭酸ジルコン、炭酸亜鉛などは普通の温度で分解する。中位の温度で分解するものに方解石がある。閉管中で熱すると炭酸ガスを発生し、金属を遊離する。 (戻る

塩素 Cl

1)塩化物を水に溶かし、硝酸銀の溶液を加えて塩化銀の沈殿を生ぜしめる。硝酸銀は水または希硝酸に不溶であるから、水に溶かすかわりに希硝酸に溶かしてもよい。臭素、ヨウ素も同様の反応を示す。塩素が多量にある時は、白いもやもやした沈殿を生じ、ごく少量の時は青白色の乳光を発す。共に日光にあてると紫色となる。

2)粉末状の塩化物を10倍量の重硫酸カリと少量の軟マンガン鉱(MnO2)と加えて小さい閉管で熱すると塩素ガスを発生する。その臭気及び水に浸したリトマス紙を赤変するので特色づけられる。
不溶のものは炭酸ソーダで熔融して後、その熔融塊を粉末として上の試験を行う。

3)焔色反応 燐塩に黒色酸化銅を十分につけ真っ黒な熔球をつくり、それがまだ熱い中に試料の粉末を少量つけて焔中に入れると藍青色の焔色反応を示す。これは銅と塩化物中の塩素と化合し塩化銅が生じこれが揮発して示す焔色反応である。

4)塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀の区別は方鉛鉱の粉末と閉管中に入れて熱するとき生ずる昇華の色に依る。塩化銀は塩化鉛を生ずる。これはガラスの熱いところでは熔けて熱時は無色、冷時は白い球となる。臭化銀は硫黄のような黄色を示す(熱時)、冷えると白。ヨウ化銀はヨウ化鉛(暗オレンジ赤(熱時)、レモン黄(冷時))を生ずる。これで3者を区別することが出来る。共存する時は、湿式を用いる必要がある。 (戻る

クローム Cr

1)硼砂球反応 酸化焔で熱すると、熱時は黄色、冷時は黄緑色を示す。試料の多い時は赤(熱時)、黄(冷時)となる。還元焔で熱する時は美しい緑色を示す。酸化焔の時はクローム酸の無水物CrO3が生じ、その塩が黄または赤である。還元焔の時はCr2O3が生じ、それが強い緑色を与えるものである。

2)燐塩球の場合は、汚緑色(熱時)、黄緑色(冷時)を酸化焔の元で示し、還元焔の時も上と同様な色を示すが、決定的でない。(バナジウムに注意)

3)珪酸塩の場合は、4倍の無水炭酸ソーダと2倍の硝酸カリと加えて白金サジの中で熔融すると熔融塊は黄色となり、水で溶かすと溶液は黄色くなる。この溶液を弱酸性とし(酢酸)もし沈殿が出来たらそれを濾し、少量の酢酸鉛を加えるとクローム酸鉛の黄色は沈殿ができる。スピネルやクローム鉄鉱のように分解し難いものは硼砂球中に溶かし、それを白金線より離して粉末として上と同様重硫酸カリと(約2〜3倍)と約1倍の硝酸カリを加えて熔融して上記同様の反応を確かめる。
3倍の過酸化ソーダと混合し白金板上で熔融し、温水で加え沸騰し、濾液を酢酸にて酸性して酢酸鉛を加えると黄色のクローム酸鉛の沈殿を生ずる。 (戻る

コバルト Co

硼砂球燐塩球で共に熱冷時共また酸化、還元両焔で共に美しい青色を呈して認められる。相当鋭い反応であるから相当のニッケルや鉄が存在しても認められる。もし銅やニッケルがその反応を邪魔する時は、その熔球を白金線よりはずして錫の粒とともに木炭上で熔融し強い還元焔で吹く。すると銅やニッケルは金属状態に還元されフラックスは青いコバルトの色を示す。

塩酸で分解し、H2Sを通し、ろ過し、硝酸で酸化し、アンモニアを加えて濾過し、アンモニアを追い出してジメチルグリオキシムを加える。この時ニッケルがあれば肉桃色の沈殿を生ずる(ニッケルの項参照)。この濾液はもしコバルトがあれば、黄色または黄褐色に着色する。この色は塩酸で酸性としても消失しない。しかしコバルトの検定は次の検出法がよい。この濾液に硫シアン化アンモン1ccとアミルアルコール(イソ)2〜3ccを加えて振ると、表面に浮かんだアミルアルコールの屑はコバルトがあれば藍青色を呈する。これは0.00002%瓦のコバルトをも検出することが出来る。
ジメチルグリオキシムは、
 CH3−C=NOH
     |
 CH3−C=NOH

であって1gを98%のエチルアルコール(100cc)中に溶解せしめたものを用いる。これはニッケルの検出にも重要である。 (戻る

★  Cu

1)吹管の前または焔中に入れると酸化銅のエメラルド緑色の焔色反応を示す。また時に塩酸中に浸して行うと塩化銅(揮発性)の藍青色を呈する。この焔の縁はエメラルド緑色である。何となれば塩化銅が分解して酸化銅となるためである。(例:黄銅鉱、孔雀石、赤銅鉱)

2)酸化銅または銅を含む鉱物を木炭上に還元焔で熱すると、銅の金属を得る。熱時は輝いているが冷やすと黒い酸化物で蔽われる。延ばすことが出来、また銅に特有な赤色を示す。
鉄とかその他還元し難い金属のある時は同量の炭酸ソーダ及び硼砂と混ずる。この熔剤は他の物質をスラグ化する。硫黄、アンチモン、砒素等を含んでいるものは注意深くか焼して上記の熔剤を用いて還元作用をなす。他の還元されやすい金属の存在する時は純粋な銅の金属球は得られない。無水炭酸ソーダを熔剤に用いて孔雀石から銅球を得ること、また黄銅鉱は最初か焼し、後熔剤を用いて行う。

3)硼砂または燐塩球は溶けて酸化焔においては緑(熱時)、青色(冷時)の色を与え、還元焔では試料が少量のときは淡くほとんど無色、多量の時はCu2Oを出し、不透明赤色を与える。この熔球をはずして小さい錫の一片と共に木炭上に置き、共に還元焔で吹く。すると熔球は熱時はほとんど無色の球となるが、固まると赤くなる。錫が還元作用して酸化第二銅を酸化第一銅とするためである。

4)銅の塩酸または硝酸溶液は青または緑である。薄めてアンモニアを加えると濃青色となる。これは銅アンモニア錯酸をつくるためである。、ニッケルと間違わぬよう注意が必要である。

5)硫化物、砒化物、テルル化物、セレン化物以外は第一銅の化合物は少ない。赤銅鉱がその中の代表的のものである。
粉末の赤銅鉱を約3ccの塩酸中に溶かす。その溶液は無色または褐色で第二銅の化合物のように青色を表さず、これを冷やし多量の水を加えておくと塩化第一銅の白い沈殿を生ずる。これは水または希酸には少量溶ける。アンモニアの過剰にも溶ける。もし酸化を避けるとついに第二銅の青色を示さないが、一部は空気中の酸化に依り青色を呈する。 (戻る


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