玉市その3


この玉市を見ていると、一口に玉と言っても、本当に様々な材質の物があって、またデザインや用途にもかなり幅があるのがわかります。水晶とか、青金石とかも置いてあって、一瞬、これが玉かと疑いますが、玉の定義は、「石の美なるもの」ということなので、まあ、広義の玉に含まれるのでしょう。青金石は、ホータンの軟玉とともに西方から砂漠を越えて中国にもたらされた石で、古くから愛好されていました。

一番目の写真は、倣古玉です。玉が呪術的な存在だった時代のデザインを踏襲したもので、人間や動物、鳥などを彫ったもの、円形の玉に龍や蝙蝠や雲紋を刻んだものなどがあります。
一番印象に残っているのは、眼を象ったもの。丸い円盤の中央に目玉を作り、グロテスクな模様で囲んであります。邪眼避けでしょう。目玉がぐるぐる動くように加工したものもありました。日本人の感覚では、実に異様な雰囲気のシロモノです。(cf. アラビアの邪眼除け画像
こうしたなかに、とても古そうに見えるものがありますが、おおむね油やススで磨いたり、土に埋めたり、いろいろな方法で時代をつけていると見ました。
二番目の写真は、トンボ玉(ガラス)です。トンボ玉もやはり、古くは呪術的なアイテムとして用いられました。今買っていく人たちは、何の目的で使うのでしょうか。(cf. 大航海時代とガラス玉の宝石

玉の用途としては、指輪石、腕輪、ペンダントトップ(小さな彫り物)、香炉、魔よけや開運の置物、印材といったものが挙げられます。上の3つの写真は、そうした製品です。玉や翡翠はニセ物や染め物が多いことで有名ですが、ここで売られているものは、一応大丈夫とのことです。現地の方のお話では、やっぱり気をつけた方がいいけれど、昔ほど悪質ではなくなっているとか。ここでニセ物を売ってるのが、警察に知れると、出店のライセンスを取り消されるので、今はトラブルがずい分少なくなったのだそうです。また値段の方ですが、これは交渉次第ということで、少なくとも定価で買うのは、日本人くらいだそう。
ついでに、玉は台湾の言葉(中国語のひとつ)で、Yu といいます。日本語には適当な音がなく、強いて書けば「ゆう」かな。でも、実際は、口を「い」の形にして、「う」と発音するような音です。フランス語にはこういう音がありますね。また、翡翠の発音は、平易に書くと、「ふぇいつぉえい」といった感じ。ただし抑揚に独特の雰囲気があります。

上の写真は水晶や鍾乳石、後ろに黒いものが写っていますが、黒水晶をオベリスク状に研磨したものです。東洋風というよりは、エジプト風と呼びたい代物です。次の写真はサンゴの細工で、真中は天使、右は十字架の彫り物です。実にインターナショナルですね。

最後に、鉱物標本みたいなものは出てないのか、ということですが、ありました。多いのはやはり水晶(原石または面研磨品)ですが、ざくろ石、カバンシ石、トルマリン(紅電気石)、束沸石(インド産)、黄銅鉱、オパールなどが散見されました。もっとも専門のフェアではありませんから、質的には日本の鉱物ショーの方が上です。私は、15センチくらいの両頭水晶(おそらく中国、四川省産)を買いました。なかなかのものですよ。


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