18.方解石1  Calcite   (USA産)

 

 

はろー、いし屋さん! どこかでお会いしたかしら?

方解石 −USA,インジアナ州産

方解石(緑色インクルージョン)−ブラジル産

小学校の頃、理科準備室に菱面体の透明な方解石があった。本の上に置くと文字が二重に映るという不思議な性質の石で、たいへん貴重なものに思われた。子供らしい所有欲が頭をもたげ、庭や原っぱを掘りかえしては、同じ石を探したものだ。私が住んでいた土地は、俗に言う赤土、つまり粘土層の土地で、高師小僧はいくらでもあったが、透明な結晶性の鉱物は、原っぱを掘ったくらいでは見つからなかった。それでも、ダイヤや金や、そのほか図鑑で見た珍しい鉱石を探して、ここぞと思う場所をよく掘っくり返した。一種の宝探しだ。

当時の私は、方解石は、理科室にあるような菱面体の結晶で土の中に埋まっているものだと思っていた。実際には、あれは一定の角度と面で割れやすい性質を利用した「へき開」片だったのだが、そんなこと知るよしもない。

大人になってからも誤解は続いた。出張帰りにアナハイムのショッピングセンターで、3センチくらいの螢石をお土産に買った時も、その美しい八面体は、そのままの姿で、鉱山から掘り出された結晶だと信じていた。これまたヘキ開片であったことを知るのは何年も経ってからである。

ときどき本屋さんの特設コーナーなどで、鉱物標本のフェアをやっている。方解石や螢石のへき開片、テレビ石のスライス、染色しためのうのスライス、面を研磨した水晶の六角柱などがたくさん並んでいて、若い人たちが嬉しそうに、愛しそうに手にとって買っていく。そういう光景を見ると、きっとあの人たちは、その石が天然のままの結晶だと信じて買っていくんだろうなと、昔の私の面影が重なる。接着品、模造品、人工結晶も含め、業者の方には、加工品であることを明示して売ってもらいたいと思う。

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