19.鏡鉄鉱&水晶  Hematite   (イギリス産)

 

 

私を磨いた宝石(貴石)は、黒ダイヤなんて呼ばれます。石炭みたい。

水晶上の赤鉄鉱(鏡鉄鉱) 
水晶は六角両錐形で柱面のない「カンバーランド晶癖」
のものと、より小さな柱状の結晶とが共存。

−イギリス、カンブリア、エグレモント産

 

イギリス名産標本のひとつという。写真では分かりにくいが、鏡鉄鉱はバラの花弁状に(らせん)集合している。称して、アイアン・ローズ(鉄のバラ)という。
こむずかしくいうと、フィボナッチ数列式に一定の法則で次々とらせんを描いて重なり、拡大してゆく花序列である。(ほんとうか?) (1999.3)


追記:古くから製鉄産業が盛んだったイギリスは、カンブリア地方に鉄や鉛を掘る鉱山が数世紀の間稼働していた。博物学の時代にはこの地方の方解石や水晶、蛍石や重晶石などはコレクターの必須アイテムとみなされていた。今日ではほとんどの鉱山が閉山を迎え、かつてあふれ返っていた標本の入手も難しくなって、コレクターの放出品を待つよりほかない状況となっている。しかしエグモントから南へ5キロの位置にあるフローレンス(ベッカメット、ウルコーツ)鉱山はまだ新しい標本を提供している。
フローレンスは19世紀末に始まり、1914年になって巨大なヘマタイト鉱床が発見された鉱山で、 1968年に一度閉山したが、数年後に付近のベッカメット、ウルコーツ鉱山との間を坑道で繋いで大規模採掘が再開された。それも採算が合わなくなって休止したのが1980年である。稼働中は葡萄状・腎臓状のヘマタイト、いわゆるキドニー・オアの標本を多産した。またペンシル・オアも出した。上の画像のようなロゼッタ状のヘマタイト(鉄の花)は、どちらかというとこの連合鉱山では珍しいものだが、1990年代初、ウルコーツの一番坑で水晶の上に花咲く標本が採れて市場を賑わせた。(2016.12)

cf. No.942 サイコロ形水晶(カンバーランド晶癖)

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