24.蛍石 Fluorite (ロシア産) |
螢石の理想化学式はCaF2。カルシウムとフッ素の化合物である。螢石の美しい色は、微量に含まれる希土類元素によるものと思われ、純粋な結晶は無色透明である。
特殊な光学レンズを作るのに、人工合成したまったくキズのない螢石を使うそうだが、それはガラスのように色が無い。写真の螢石もこれに近く、結晶面が光を反射しなければ、存在していることさえわからないような、限りなく透明に近い螢石だ。(もちろん天然だよ)
(1999.3)
追記:上の記事を、私はまったく個人的な感触を以て書いたのだが、同じように感じる愛好家は世界に大勢いたようで、ダルネゴルスク産の無色透明(サイコロ形)蛍石は、その故をもってクラシック標本の一つに数えられているという。このタイプはダルネゴルスクでも専らニコラエフスキー鉱山からのみ出ており、かくまで透明度の高い蛍石は世界のどこにもない、「完璧に透明」、「不可視(Invisible)」と讃えられている。「角氷(
Ice cube)蛍石」という表現もある。唯一これに近いのはニューヨーク州ウォルワース産のもの(No.169)くらいか。
市場に流れ始めたのは 1982年からで、最盛期は90年代の半ばだった。その後サイコロ形の標本は鳴りを潜め、2003年以降は代わりに八面体形の標本が出回りはじめた。ただこれもその後新たな晶洞が見つかっていないようで、現在の市場において無色透明蛍石は文字通り不可視に近い状況らしい。ちなみに表面が擦りガラスのように曇った無色透明八面体の標本をよく見かけるが、局部的にサイコロ面が出ている場合、その面は水のように澄んでいて、覗くと底が浮いて見えるほどに内部が透明であることが分かる⇒cf.
蛍石55。(2016.12)