1036.水晶 平行成長2 Quartz Parellel Growth2 (USA産)

 

 

整列した水晶群 蛍石を伴う
−USA、コロラド州パーク郡産

多くの結晶の柱軸方向が揃っており、
かつ反射光を与えると同じ幾何配置の錐面が同時に光って見える。

よく観察すると周囲の多くの結晶とは
別の柱軸方向で生えた結晶もあるが、
ある錐面に反射光を与えると、
周囲の結晶の錐面も同時に光る。

一番目の画像の左下部あたり。
柱軸方向の異なる並び方が少なくとも3種
観察されるが(右上部、左上部、下部あたり)、
3種揃って同時に錐面上に反射光を観察できる配置がある。

 

No.1035 と同じパーク郡産。内部に濁りがあるが普通の透明水晶で、母岩(長石らしい)の上に沢山生えている。錐面に反射光を与えてみると、画像のように多くの結晶形で同じ配置の錐面が同時に光り、これらの平面方位が揃っていることが分かる。柱軸の方向も一致しており、「すべてが完全に平行」とまでは言えないが、かなりの程度まで揃う。
このような配置が見られる成長機構は、No.1035に示した 3つの仮説のいずれでも可能だが、この標本では結晶の数が比較的多い上、大きさの近いものが広範に散っているので、(2)または(3)の可能性が強く、おそらくは (3)だろうと思われる。
すなわち、母岩(長石)が比較的広い面積で一つの結晶構造を具えて存在するとき、水晶の結晶核はその構造に影響されて幾何的に揃った配置で着床し、その後成長して同じ方位を向いた結晶群となるのではないか。

なお、一番上の画像の左下部あたりに見られる結晶群では、少なくとも3つの異なる柱軸方向が認められる。ところが反射光を観察すると、それぞれの配置におけるある錐面は、先端の向く方向は違っていても共通した平面方位を持っているらしいことが分かる(擬似的な双晶形)。
これすなわち、「既成の鉱物の結晶面上に、別種の鉱物が一定の方位関係で成長する現象」であり、「エピタキシー(epitaxy)」、「定方位成長(oriented overgrowth)」(岩波「鉱物学」p.287)と呼ばれるものであろう。

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