1037.水晶(シート状聚形4+エピタキシー) Quartz Parallel growth aggrigation (ブルガリア産) |
鉱物の結晶構造が直線的な格子性を維持する限り、単晶は原理的にいくらでも大きくなりうるし、特定の方向に偏奇的に伸長し続ける、あるいは平行連晶的な形状を繰り返し出現させてゆくことも出来るだろう。
それとは別に複数の結晶核(あるいは小晶)が結晶構造を揃えて接合してゆき、平行連晶的な形状を形成することも考えられるが、この現象は予め結晶方位を揃えようとするポテンシャルを具えた何らかのひな型があった方が容易に生じるだろう。進めて考えれば、そのようなひな型があるとき、複数の結晶は互いに接合していなくとも一つの構造秩序を共有して平行的に並び立つことがありうる。シート状の聚形はその一例ではないだろうか。シートが同じ鉱物であるとき、生じる形は自身の構造に基づく連晶であり、異種の鉱物であるとき、エピタキシャルな成長であるといえよう。
というわけでエピタキシャルな成長と思しい、林立した水晶群の標本を紹介する。この標本の少なくともある領域は、No.1036の水晶が長石の上にくつわを並べて立っているように、長石の結晶面上に平行的に整列したものと思しい。
ちなみに水晶の上にもこもこした形の白濁した別種の鉱物が見られるが、形状的に方解石(あるいは苦灰石)と思われる。結晶面は湾曲を伴いがちで鞍形連晶の気味がある。こういう結晶は単晶形としてはあまり大きくなることが出来ない。