1035.煙水晶 平行成長 Smoky Quartz Parallel Growth (USA産) |
コロラド州レイク・ジョージ産の煙水晶をもう一点。煙水晶は一般に花崗岩(ペグマタイト)中に産することが多く、花崗岩由来の自然放射線に長期間曝されることによって徐々に煙色化が進行したと考えられている。(cf.
No.599)
産地の近隣では美しい緑色のアマゾナイトを伴う産状が知られ、アマゾナイト(微斜長石)もまた非常に長い時間を経て生成した鉱物と考えられている。(cf.No.521、 No.620)
コロラド州の高原地帯の起源がごく古い時代に遡ることの証左といえよう。
この標本も長石(類)を伴っているが、やや赤茶けた普通の色味でアマゾナイトではない。しかしカリ長石(正長石)が微斜長石化(三斜晶化)したものであるかもしれない。モノの本には「肉眼では両者は区別できない」と載っているが、産地を考慮するとそうである蓋然性が高い。
この標本の特徴は、中心の比較的大きな結晶がカテドラル形に成長していること、そしてやや小ぶりの結晶が周囲を衛星状に取り巻いて、あたかもブースター付きのロケットのように見えることだ。(私は国産
H1ロケットを連想する。H1には 6基または 9基のブースターがついていた。)
中心の結晶と周囲の小晶群は柱軸(z軸)が揃い、柱面もほぼ平行なアライメントをとっている。これら群晶はどのように成長したのだろうか。
(1)
まず中心の結晶が成長し、柱面にカテドラルの領域が発達し、さらにその周囲に単晶形の小晶群が遅れて出現したのだろうか。(2)
それともすべての結晶は単一の種結晶(成長核)が地下茎のように水平展開したもの(あるいは母岩中に分布したもの)から、それぞれが柱軸方向へ結晶構造的なアライメントを維持して伸長し、やがて互いの間の空間を埋めていったのだろうか。
(3) あるいは、複数の異なった種結晶が同一の結晶方位を持つ苗床(この場合は長石)の上に結晶方位を揃えて付着し、個別的に成長してゆく過程でひとまとまりのロケット形となったものだろうか。
いずれもありうるだろうが、最後の機構、言い換えると長石と水晶とのエピタキシャリーな共晶的成長は一考に値すると思う。