91.自然銅   Copper   (USA産)

 

 

日本も昔は、銅産の豊かな国だったのですよ。

自然銅 −USA、ミシガン州産

 

北米大陸の5大湖周辺は、豊かな銅資源の宝庫として知られている。採掘の歴史は古く、スペリオル湖南岸に突出したキウィーノ半島や北岸に近いロイヤル島には、紀元前30世紀から8世紀のものと思われる、古い銅鉱山の跡が残っている。なかでもロイヤル島で発見された廃坑は、出土した遺物の炭が放射能年代測定により3800年前のものと判明し、非常に古い文明の存在を匂わせている。湖畔一帯には、推定1万箇所以上の立坑があったとみられ、おびただしい量の銅が堀り出されたということだ。

ただ、どんな民族がこれらの鉱山を何千年もかけて掘り続けたのか、(少なくともこの時代にはいわゆるインディアンは住んでいなかった)、どんな目的で大量の銅を必要としたのか、今ではもう分からない。また、廃坑のいくつかは、明らかに作業の途中で放棄され、すぐに戻ってくるつもりだったかのような気配を残していたという。彼らは、なぜそんなに急いで、どこへ立ち去ったのか、やはり分からない。

時代は下って19世紀の中葉、これらの古い、ほとんど無尽蔵の鉱脈の上に、アメリカ人たちは幾多の鉱山会社を設立した。そして盛んに採掘を行い、現在に至っている。網の目のようにのびた地下坑道は全長約7000キロメートル、掘り出された銅の量は、スペリオル湖周辺だけで50万トン以上にのぼる。

写真の標本は、そうした「掘ったら銅」、の土地でぼこぼこ取れる自然銅の塊のほんの一片である。ほんの一片だが、鉱物標本としては、なかなか素敵だと思う。

 

補記:自然銅は空気中に放置すると、ちょうど10円玉がそうであるように次第にくすんで光輝を失う。標本として売られているミシガン産の品はクリアラッカーで保護してあるそうで、かなり長い間、銅の輝きを留めている。なお、このテの標本は、自然に採集された形ではなくて、採掘された鉱石をクラッシャーで砕いた小片から銅の部分だけを取ったもので、たいてい変形しているそうだ。

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