105.貝オパール Opal   (オーストラリア産)

 

 

私の見る夢は、七色の光。さあ、貝の夢にようこそ。

オパール化した貝−オーストラリア、クーバー・ペディ産

 

クーバー・ペディは、オーストラリア中南部、大ビクトリア砂漠の東端にある炎熱の土地。
井上ひさし氏の「黄色い鼠」には、アリススプリングスから徒歩で砂漠を渡ろうとした日本兵たちの苦闘が生々しく描かれているが、カラカラの、実に苛烈なサバイバル環境らしい。
とはいえ、その昔、ここは浅い内海であった。地面を掘ると、写真のようなオパール化した二枚貝が出てくるのが、その証拠。

原住民であるアボリジニの伝説にいわく、昔ある狩人が、ユーカリの木の下で昼寝をしていた。彼は、夢の中で、1頭の輝くカンガルーを追っていた。そして長い追跡の挙句、きゃつを紅い丘の上に追い詰め、槍で刺し貫いた。彼は、その場所で焚き火を熾し、灰の中でカンガルーを炙って、たらふく食べた。食べ残しの肉を土に埋めて、目印に槍を立てたところで、夢から覚めた。(ちなみに、アボリジニにとって、夢見は霊感に満ちた創造的世界なのだが、どうして肉を埋めたりしたのか、そのへんは夢だからわからない。あるいは、そうすると、またカンガルーが生えてくるのかもしれない。大地は母なる子宮であるから。)
さて、ユーカリの殺菌性の香りの中で目覚めた男は、まだ半分まどろみながら、カンガルーを追跡した道を現実の世界で辿り、不思議や、槍を立てたとそっくりの丘を見つけたのだった。そこで地面を掘って肉の残りを探したが、見つかったのは七色に光る白い石だったという。彼は石を白人に売り、そのお金で肉を買って食べた。かくて予言は成就した。めでたし。めでたし。
それが、この有名なオパール鉱山の始まりで、以来、白人たちがわんさかやってきて沢山の穴を掘り、オパール掘りに人生を賭けた。ほどなく、この土地は、「クパ・ピティ−白い人の穴ぼこ」と呼ばれるようになった。

この話は出来過ぎていて作り話っぽいが、そもそも伝説は、象徴的事物と願望と若干の歴史的事実から生まれてくるものである。白人側の記録によれば、1915年に、ウィリー・ハッチンソンという名前の16歳の少年が、初めてクーバー・ペディでオパールを発見したことになっている。

日本には、「夢を買う」という長者民話がある。夢で見た次第を辿って、とある屋敷の庭の椿の根元を掘ると、大判小判がざっくざくっと…。
人類の精神(と体験?)は民族を越えてどこか似ているところがあるらしい。
教訓。夢の中で掘り出し物をしたら、目が覚めてからも探してみよう。素晴らしい鉱物に巡り逢えるかもしれないから。

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