155.パウエル石 Powellite (チリ産) |
灰重石CaWO4のW(タングステン)が、Mo(モリブデン)に入れ替わった鉱物(CaMoO4)。組成式を見ると、結晶構造上、WとMoとは任意の割合で混在しうると予想され、実際そのような物質が人工合成されてもいる。
しかし、自然界には別の考えがあるらしく、
Moが4%以上含まれる灰重石は知られていないし、パウエル石(灰水鉛石)では
Wの割合は10%を越えない。
またパウエル石は、輝水鉛鉱(モリブデナイト)から二次鉱物として生じることが多いが、一方の灰重石は輝水鉛鉱と共に熱水脈や花崗岩ペグマタイト、スカルン鉱床に初生的に産出する。自然界では、どこかに両者を分かつ明快な境界線が引かれているのだろう。
とはいえパウエル石の結晶形は八面体を示すことが多いし(輝水鉛鉱の仮晶になることも)、紫外線を当てると蛍光(黄白色)するなど、灰重石に似たところもあるから、親戚同士であるには違いない。
写真の標本は、緑色針状のブロシャン銅鉱を伴ったもの。黄色が本鉱。色の組み合わせが、スナフキンみたいで、なかなかお洒落だ。