168.トルマリン Tourmaline (アフガニスタン産)

 

 

エルバイト−アフガニスタン、ヌリスタン産

 

トルマリンは成分組成に変化が多く、一般式は (Ca,K,Na)(Al,Fe+2,Fe+3,Li,Mg,Mn+2)3(Al,Cr+3,Fe+3,V+3)6(BO3)3Si6O18(O,OH,F)4 と書ける。与えられた環境にあるイオン素材をなんでも取り込んで、さっさと結晶してしまおうという積極果敢な鉱物だ。それでいて基本的な結晶構造は、どんな時にもしっかりキープしている。
この化学式を見て頭がくらくらしない人は珍しく、ビクトリア朝時代の学者ジョン・ラスキンは、「美しい鉱物の成分表というより、むしろ中世の医師の処方箋のようだ」と洩らしている。

トルマリンの名は、シンハリ語(スリランカの言葉)の Turamali に由来する。意味はよくわからない。「灰を引きつける」とも読めるそうだが、島の沖積層で見つかる礫状の宝石のうち、何の石とも知れない半端なものを、ひとまとめにこの名で呼んでいたともいう。(※)

18世紀の初め、東インドからこの石を初めてヨーロッパにもたらしたオランダの船乗りたちは、アッシェントレケル(アッシュ・リムーバー)と呼んだ。暖められたトルマリンの結晶は静電気を帯びる性質があり、パイプの灰を取り除くのに便利だったからである。

写真の標本はリチウムを含む宝石種で、エルバイト(リチア電気石)という。もちろん、私は灰掃除に使ったりなど絶対しない。

※トルマリは本来ジルコンを指したが、ある時(1803年?)、オランダのアムステルダムにセイロン島から届いた宝石のロットにジルコンと電気石とが混在しており、これをまとめてトルマリと呼んだことがきっかけで電気石を指すように変わったとの説がある。

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