167.あられ石 山さんご Flos Ferri (イタリア産)

 

 

山さんご−イタリア、シシリー島産

 

フロスフェリ Flos-ferri、 あるいは Flowers of Iron (鉄の華)と呼ばれる珊瑚状のあられ石。
なんで鉄なのかと思うが、オーストリアのエルツブルクにある菱鉄鉱鉱山で多産したためについた名前だという(ドイツ語では Eisenblute)。鉄鉱石の狭間に咲く花か、はたまたイソギンチャクか。

ちなみに、エルツはドイツ語で「鉱石」、ブルクは「山」。エルツブルクは文字通りの大鉄山であった。(⇒エルツベルク産

 

補記:シチリア島は硫黄の採集業で知られた土地で、硫黄・石膏・天青石・あられ石標本のクラッシック産地である。六角環状に双晶したあられ石はローマ時代から珍奇品として知られていたのではないかと言われる。今日、島の硫黄鉱山はいずれも閉山しているが、標本採集程度のことは行われているらしい。 cf. No.282 硫黄

補記2:日本では、金属鉱山の旧坑内壁を覆って沈殿したあられ石を、その奇観によって「山珊瑚」と通称した。荒川鉱山や茨城県久慈地方の金山(塩沢鉱山など)が有名だった。ついでながら、高知産の古生代サンゴ化石で鉄分のために赤色になったものも山珊瑚と呼ばれるが、これは「梅林石」「菊花石」と並んで土佐の三奇石とされた。またあられ石の温泉沈殿物(または管状の鍾乳石)に鵡管石(がかんせき)と呼ばれるものがある。管石(くだいし)とも呼ばれ、漢方に用いられる。
補記3:フェルスマン「おもしろい鉱物学」には、チェコのルドヌイ産地の鉄鉱の上に生えた「鉄の花」が紹介されている。(邦訳P.152)
cf.ロンドン自然史博物館の標本
cf.ヨアネウム3 鉄の花、  エルツベルグ鉱山その2

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