197.マンガン重石 Huebnerite (ペルー産) |
鉱物を集めているとうれしいことは沢山あるが、新しい標本が鉱物商さんに入荷した時にたまたま行き逢い、数十個のロットの中から一番好きなものを選べるなんてのは、間違いなくうれしい番付けの上位に入る。
写真の標本はそうして手に入れたもの。たまにはこういう幸運に恵まれていいくらい、私は鉱物に熱を上げている(このサイトに来て下さる方は皆さんそうでしょうけど)。
マンガン重石はマンガンのタングステン酸塩で、鉄重石の成分中、鉄がマンガンに置き換わったものに相当する。自然界に産出する重石は、両者の中間組成にあたるものが多く、鉄マンガン重石(Wolframite)と呼ばれている。鉄重石は通常黒っぽくて不透明だが、マンガン分が増すにつれて赤味が差し、透明感が出てくる。ペルー産のマンガン重石は最良の標本に数えられるが、結晶面の見えるものは今は案外出回らない。この程度でも一応いい方である。水晶を伴った佇まいが、これまたうれしい。(って、完全に親バカですね)
鉄重石や鉄マンガン重石は石英と相性がよく、これらが産するところ、ほぼ例外なく石英が共存しているといわれる。
補記:マンガン重石の薄片は緑色、鉄マンガン重石の薄片は赤の多色性を示す、鉄重石では縁が赤く透き通るのみでほぼ不透明、と原色鉱物岩石検索図鑑(1964)にある。
追記:ペルー・アンカッシュ産と標識されるマンガン重石は、同地方パスト・ブエノのフアラポン鉱山で採れるものらしい。海抜 4500mの山岳地帯にあるタングステン鉱山で、 20世紀中断続的に稼働された。サイズ・光輝共に世界最良の産地だろう。ライン鉱類似の「灰重石後のマンガン重石」も出た。菱マンガン鉱の良標本産地としても知られる。