198.針ニッケル鉱  Millerite   (カナダ産)

 

 

おいらのごちそうは、おいしい銅だよ。バリバリ。

針ニッケル鉱 −カナダ、マニトバ州、トンプソン鉱山産

 

本鉱は硫黄と結合したニッケルで、金色に光る針状結晶が特徴。写真はペントランド鉱を主体とする鉱石の空隙に放射状に集合した姿。断面なので、ぴかぴか光って見えるが、自然表面はニッケル華をまとい、緑がかった暗い色をしている。一見、ふかふかの絨毯のようだが、触るとチクチクする。
古く Capillary pyrites (髪毛状黄鉄鉱・毛細黄鉄鉱)と呼ばれた。

 

追記:トンプソンはマニトバ州北部最大の都市である。二次大戦後、非鉄金属系の大手鉱業会社インコ社がこの地域の資源探査を行って、1956年に巨大なニッケル鉱床を発見した。鉱山都市トンプソンが建設され(トンプソンは当時のインコ社の役員会議長)、61年にはニッケルの採掘・選鉱・粗製錬・精錬を一貫して行う工場が始動した。この種のニッケル工場は西側では世界初のもので、世界第二位の生産量を誇った。60年代ニッケルの需要は増加の一途で、トンプソンでは次々に新しい鉱山が開かれた。最盛期の 1970-71年には年産 6万トン以上のニッケルを生産し、 2万人以上がこの町に居住し、働いた。
ところが 1970年にソビエトがニッケルの世界市場に参入すると供給が需要を上回り、トンプソンは減産を余儀なくされる。77年のニッケル価格の下落が追い打ちをかけた。
今日のトンプソンの生産量は往時の3分の1程度、ニッケルは依然重要な産業であるが、周辺地域への流通・サービス拠点としての性格が強まっているという。

トンプソンには2つの露天掘り坑を含むいくつかの鉱山があるが、いずれも現在は非稼働。 1990年代(特に後期)にすでに廃坑となっていた露天掘り坑の一つから、画像のような美麗標本を出した。針状の結晶は方解石中に埋まっているのが産状で、酸で溶かして結晶を露出させてあるのだそうだが、俄かには信じがたい出来栄えと思う。(2020.5.5)

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