C5.翡翠の辟邪  Jade  (中国)

 

 

 

ヒスイに彫られた天禄と辟邪 (両面)

 

四川省の成都で偶然手に入れた翡翠の護符。ある農家の老人が長い間肌身離さず持っていたものだという。買った時には蝋質の汚れにまみれ、何を彫ってあるか分からないくらいだったが、ホテルに帰り、爪楊枝を使ってせっせとクリーニングしたところ、画像のような吉祥文様が浮かび上がった(表裏で意匠が異なる)。まさに掘り出し物。

下の画像、口から炎を吐いているのは、翼ある虎、「へき邪」だろう。中国ではモンゴル系(北方系)の龍に炎を飛ばす傾向があり、火を神聖視する拝火教の影響だと言われている。この神獣も同じ文化背景から生まれたのだろうか。
上の画像の獣は小鬢から角が生えているので、「天禄」と見た。いずれも縁起ものの果物や植物と共に描かれている。

表面に異常なほどの光沢があり、上述の蝋脂が染みた効果か、磨いた後に梅酢で煮たのではないかと思う。
日本の攻玉法に、「翡翠細工ではヒスイ独特の光沢を出さねばならないが、仕上げ磨きだけでは、肌が荒れて脂状の光沢が十分に出ない。そこで、パラフィン類を溶かした中に入れて煮て、表面を滑らかにする。」(日本の工芸10 淡交社1967)という技術があるが、中国にも各家相伝の技法があった様子だ。

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