C7.真珠首飾り Pearl (参考) |
真珠は、貝の「ひそかな悩み」といわれる。貝殻の中に入り込んだ異物が核になり、周りを分泌物でくるんだ美しい真珠層が作られる。それは「ひそかな愉しみ」でもあろうか。ギリシャの美の女神アフロディーテ(ヴィーナス)は、海の泡から生まれ、体からこぼれ落ちた滴が真珠となった。これは悩ましい。
「月のしずく」とも呼ばれ、月の狩人ディアナ(アルテミス)の聖なる宝玉である。古代インドの伝説に、真珠母貝は月夜に誘われて海上に浮かび、月の雫を受けて受胎すると、プリニウスが記している。ホタテ貝が海上で帆を立てたところへ、滴り落ちた水玉が晧々と光り輝くイメージか。中国では明月珠、夜光珠と呼ばれた。まことその色艶(イリデセンス)には、月を偲ばせる風情がある。
写真のビーズネックレスは、bifrostさん(リンクあり)の作品。初めてパールをメインに作ったものだそう。留め部の半透明めのうを始め、あわせて3種のめのうを組み合わせている(小さな薄茶に白縞はボツワナ産)。
オパール風透明ガラス薄茶の三角変形型と花びら型。透明地多面カットガラス銅色虹彩半面焼付。透明サーモンピンクの小粒ビーズ。お気に入り。
cf. レジデンツ宝物庫(ミュンヘン)(聖母マリアの信仰)
追記:ウォラギネ「黄金伝説」88によると、真珠(Margarita)は白くて小さく病気に効く宝石である。「この宝石のもつ力は、血液の流れをしずめるのに卓効があると言われていて、心臓の病をいやし、また精神を強くするのにもよいとされる。」
訳注に「13-17世紀に粉末にした真珠を心臓病、てんかん、ヒステリーの薬としてもちいた記録がのこっている」とある。
なお真珠の名を持つ聖マルガレタはアンティオキアの聖女で、童貞殉教者。ディオクレティアヌスの大迫害で殉教したとされ、古くから東方で崇敬されていた。7世紀に西方にも伝わり、とくに農民の間で人気を得た。十四救難聖人の一人。特に安産の保護聖人。妊婦がお腹に巻く帯をマルガレタ帯と呼んだ。十字を切って竜を退治した伝説があり、聖ゲオルクの竜退治伝説に出てくる王女と同一視されることもある。
アレクサンドリアのカタリナ、ニコメディアのバルバラと共に絵画に描かれて、聖三童貞と呼ばれることもある。