226.シューレンベルグ石 Schulenbergite (ドイツ産) |
鉱山で掘り出した鉱石は、有用な部分とそうでない部分とに分けられる。そうでない部分はズリと呼ばれ、たいてい作業の邪魔にならないところに捨て置かれるのだが、そこではさまざまな石の成分が大気や雨水の影響を受けて混じりあい、ちょっと変わった鉱物が出来ていることがある。シューレンベルグ石が最初に発見されたのは、ドイツのオバーシューレンベルクにある鉱山のそうしたズリからであった。いわばゴミ捨て場から発見された新鉱物で、捨てる神あれば拾う神ありといったところ。
学問ぽくいうと、銅・亜鉛の含水塩基性硫酸塩鉱物にあたり、銅や亜鉛の硫化鉱石が地上(近く)で変成されたものと考えられている。世界的に産出の珍しい石なのだが、日本でも大阪府箕面の平尾旧坑や新潟県三川鉱山で見つかっているため、国産鉱物愛好家には知名度がある。箕面では変質によりクロライト化した母岩中に出た。
美しい水色と乾いた泡のような真珠光沢が特徴といえば特徴だが、よく似た二次鉱物は数多く、知らないとまず見落としそう。発見されたのも1980年代(1984?)になってからだ。
※余談。箕面のお山にとある大学のキャンパスがあり、こんな戯れ歌が伝わっている。「…下界は雨でも、キャンパスは雪…サルもいるけど、死体もあるの…」 大阪平野の北端を区切る箕面(みのお)は気温が低く、坂道漕いで学舎にたどり着けばいつしか雨は雪に変わっている。樹海は深く、野生生物が出没する一方、(地元では)かつて自殺の名所として知られていた。ところで、今この歌に次の一節をつけ加えたい。「アベックもくるけど、鉱物屋(いしや)もきたよ。クテナス石にシューレンベルグ。ラムスベックにサーピエリ。」(だけど今では採集禁止。)