227.天藍石 Lazulite (USA産) |
「Lazulite ラズライト・天藍石」は1795年に命名された鉱物で、青い石を意味するドイツ語
lazurstein
ラズールスタインに因む。この言葉自体ペルシャ語の
lazhuward ラズワルドに由来するため、こちらを語源とした書もある。古くから知られており、また「Azurite
アズライト・藍銅鉱」や「 Lazurite
ラズライト・ラピスラズリ・青金石」(どちらも
lazhward
が語源)と混同されることが多かったので、原産地がはっきりしない。ヨアネウム(シュタイアーマルク州立自然史博物館)の解説によると、オーストリアでは各地に本鉱を産するが、シュタイアーマルク州フレスニッツグラーベン産の標本によって記載されたので、同州が原産地であるとのこと。(cf.ヨアネウム2)
かつてドイツの勢力圏だったヴェルフェンのザルツブルクでは、昔から水晶や方解石を伴った美晶が出た。最初に認知された天藍石はここの青い石であったかもしれない。
ちなみに T.Allen は1814年、本鉱に Blue Opal
の名を当てている。Opal
の一種と考えられていたためという。また H.Steffens は Blue
Spar と呼んだ(1811年) 。
MgAl2(PO4)2(OH)2 の組成を持ち、成分中の Mg は任意の割合で Fe に交代可能である。Fe リッチのものを Scorzalite スコルツァライト・鉄天藍石というが、この種は1947年になって命名された。彼我に 150年の隔たりがあるのは、スコルツァライトの方がはるかに珍しいことを反映しているのだろう。どちらも珪酸質の岩石中に産する。日本では先に鉄天藍石の産出が知られ、後に百村のろう石鉱山から天藍石の初報告があった。Cf.No.413 追記
「世界最良の天藍石の標本は、カナダ・ユーコン準州産だ」とは、現今よく耳にするところで、発見されてほどない 1976年にユーコン準州の公式ジェムストーンに選定されている。確かに結晶面がぴかぴか光り透明感がある。しかし全体に色が暗く、複雑な双晶のため形が美しくない。私としてはむしろ、グレイブズ・マウンテン産のシンプルな標本を推したい(上の写真)。大きさでは、スウェーデンのホルショーベルクに 30センチ大の結晶を産した記録がある。ブラジルにはジェム・クオリティの結晶が出る(左画像/ルース)。ザルツブルク産は由緒あるクラッシック標本だ。結晶ではないが、シベリア産の青味も捨てがたい。世界一を決めるのは、そう簡単でないよ。 → No.298