227.天藍石   Lazulite (USA産)

 

 

天藍石−USA、ジョージア州、グレイブズMt産
ラズライト −カナダ、ユーコン、ラピッド・クリーク産
(こんな画像が精一杯…ユーコン産は、テゴワいぜ)

天藍石(母岩に雲母を伴う) −ロシア、シベリア、スルジャンカ産

ラズライト− ロシア、シベリア、ママ産(研磨片)

ラズライト −オーストリア、ザルツブルク、Pohom産
(撮影 ニコちゃん)

ラズライト −オーストリア、ザルツブルク

天藍石 −USA、NH、グラフトン、デイビス鉱山

ラズライト −スイス、ツェルマット産
およそ50年ほど前、名峰マッターホルンで有名な
ツェルマットにロープウェイが通った時、
岩盤を掘る工事中に青い石が多産した。
それがこの天藍石で、当時は磨いてお土産の
ペンダントが作られる等、人気があった。
その後、産出を絶ってしまったが、
今もスイスアルプスのどこかに
この青い石は人知れず眠っているに違いない。
ツェルマットのあたりは、高度な変成を受けた地層が分布している。

 

「Lazulite ラズライト・天藍石」は1795年に命名された鉱物で、青い石を意味するドイツ語  lazurstein ラズールスタインに因む。この言葉自体ペルシャ語の lazhuward ラズワルドに由来するため、こちらを語源とした書もある。古くから知られており、また「Azurite アズライト・藍銅鉱」や「 Lazurite ラズライト・ラピスラズリ・青金石」(どちらも lazhward が語源)と混同されることが多かったので、原産地がはっきりしない。ヨアネウム(シュタイアーマルク州立自然史博物館)の解説によると、オーストリアでは各地に本鉱を産するが、シュタイアーマルク州フレスニッツグラーベン産の標本によって記載されたので、同州が原産地であるとのこと。(cf.ヨアネウム2
かつてドイツの勢力圏だったヴェルフェンのザルツブルクでは、昔から水晶や方解石を伴った美晶が出た。最初に認知された天藍石はここの青い石であったかもしれない。
ちなみに T.Allen は1814年、本鉱に Blue Opal の名を当てている。Opal の一種と考えられていたためという。また H.Steffens は Blue Spar と呼んだ(1811年) 。

MgAl2(PO4)2(OH)2 の組成を持ち、成分中の Mg は任意の割合で Fe に交代可能である。Fe リッチのものを Scorzalite スコルツァライト・鉄天藍石というが、この種は1947年になって命名された。彼我に 150年の隔たりがあるのは、スコルツァライトの方がはるかに珍しいことを反映しているのだろう。どちらも珪酸質の岩石中に産する。日本では先に鉄天藍石の産出が知られ、後に百村のろう石鉱山から天藍石の初報告があった。Cf.No.413 追記

ブラジル産のカット石ルース「世界最良の天藍石の標本は、カナダ・ユーコン準州産だ」とは、現今よく耳にするところである。確かに結晶面がぴかぴか光り透明感がある。しかし全体に色が暗く、複雑な双晶のため形が美しくない。私としてはむしろ、グレイブズ・マウンテン産のシンプルな標本を推したい(上の写真)。大きさでは、スウェーデンのホルショーベルクに 30センチ大の結晶を産した記録がある。ブラジルにはジェム・クオリティの結晶が出る(左画像/ルース)。ザルツブルク産は由緒あるクラッシック標本だ。結晶ではないが、シベリア産の青味も捨てがたい。世界一を決めるのは、そう簡単でないよ。

鉱物たちの庭 ホームへ