225.水亜鉛銅鉱  Aurichalcite (USA産)

 

 

水亜鉛銅鉱と菱亜鉛鉱−USA、AZ、79鉱山産

オーリチャルサイト−コンゴ、クーバンザ、ヤンガ産

 

水亜鉛銅鉱の学名 Aurichalcite は18世紀の命名で、ギリシャ語の oreichalkos 「オレイカルコス:山の真鍮(黄銅)」に因むという (木下学名辞典には 1839年 Th.Boettger の命名とあるが)。とはいえ、接頭辞 Auri−は普通、「金、金色」を指し、Chalco−は「銅(真鍮)」を指す。合わせて「金色の銅」といったところか。実物とかけ離れた名前のようだが、この鉱石もまた、カラミンの一種として真鍮製造に用いられたと知れば納得できるだろう。 ブルー・カラミンの異称がある。

化学式は (Zn,Cu)5(CO3)2(OH)6 。成分に銅を含むので、炉に投じれば、そのまま真鍮が出来たのかもしれない(それが名前の由来か?)。
ちなみに 水亜鉛土 は Zn5(CO3)2(OH)6 であり、両者の違いは成分上、銅の有無だけなのだが、へき開はそれぞれ、(010)、(100)方向にあって晶癖が異なり、そう単純でない (cf. No.793)。蛍光もしない。水亜鉛土に比べて美しい色彩を持つのは、ひとえに銅の威力であろう。

上の写真、セリルアンブルーの2つの球が水亜鉛銅鉱、淡色の敷物は菱亜鉛鉱。
下の写真は結晶がリボン状に集合している。他産地のものと比べると、なんとなくしなっとした雰囲気がある。

補記:古代ギリシャでオレイカルコスは青銅や真鍮と同類のある種の銅合金を指したとみられる。が、ローマ人はその詳細を知らず、紀元前後までにオーリカルクムの名で真鍮を指すようになった。オレイカルコスは日本でオリハルコンと訛り、海のトリトン以来アトランティスなど超古代文明の神話的な合金のイメージが強い。
近代の本鉱の記述はフランスのユージェーヌ・ルイ・M・バトランが初めで、カラミン・ベルダトル(緑がかったカラミン)と呼んだ(1788年)。 その後、ベトガーは成分に銅と亜鉛を含むことからオーリカルサイトと称した。

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