239.アロハド石 Arrojadite (カナダ産) |
ユーコンの主要採集地点には、いくつかの非公式なニックネームがあり、たとえば、No.234で紹介したエリアAは「クラン・キャンプ」、ロカリティ1,2,3あたりが「クロスカット・クリーク」、その南〜東側の採集スポットは「クリーク・レイク」と呼ばれる。エリアBは「ストーンマン・キャンプ」、その中のロカリティ10、11が「ヤングス・クリーク」、14が「グリズリー・ベア・クリーク」(灰色グマの土手)といった具合だ。
エリアCのロカリティ15は、「スライド」(地すべり・山崩れ)と呼ばれ、上の標本はここで採集されたもの。なんとなく産地の様子が彷彿する。
アロハド石は1891年、サウスダコタで初めて採集されたが、命名は2番目の産地がブラジル・パライバ州で発見された1925年までなされなかった。その名もブラジルの地質学者 Miguel Arrojado博士に寄せられている。以来いくつかの産地が報告されたものの、採集標本はいずれも花崗岩ペグマタイトに生じたへき開片であった。ラピッド・クリークのアロハド石は、菱鉄鉱を豊富に含んだ砂岩の裂け目に生成しており、これは花崗岩ペグマタイト以外の産状を示す最初の報告だという。標本業者さんが言うには、自形結晶もかなり珍しく、こちらは世界で2番目の報告になる。要は珍しい上にも珍しい標本といいたいらしい。
補記:最初に発見された石はジーグラーがSoda-tryphylite
と名付けたが、1890年に記載されていた Natrophilite
と紛らわしかった。 (Tryphylite LiFePO4 -Lithiophilite LiMnPO4
- Natrophilite NaMnPO4)
1825年に Guimaraes が Arrojadite の名を与えた(1837年には Quensel
が Headdenite
とした)。ちなみに本鉱の鉄成分の過半がマンガンで置換されたものは
Dickinsonite と呼ばれる(1878年記載)。