269.コールマン石 Colemanite (USA産)

 

 

コレマナイト -USA、CA、ボロン産

 

コールマン石はアメリカ硼素産業における初期の鉱石のひとつである。1882年にデス・バレー上流の山あいに産地が見つかって以来、モハヴ砂漠の湖床でほう砂やカーン石の巨大な鉱床が発見されるまで、ほぼ40年間に亙って、ボラックスの主要原料といえば本鉱のことだった。
地元の鉱物学者ヘンリー・ハンクスはこの鉱石を新種と認め、1884年、斯界の基盤を作ったカリフォルニアの実業家、ウィリアム・コールマンに献名した。いわばアメリカ西部開拓とかたく結びついた石だったわけである。
化学組成は、 CaB3O4(OH)3・H2O (Dana's 8thによる)。含水硼酸カルシウム。旧い和名は灰硼石。ほう砂やウレックス石が雨水に溶けて堆積層中に浸透し、再結晶してコールマン石になるという。結晶は光輝が強く、水に溶けにくい(熱湯には溶けるらしい)。溶けやすい鉱物から溶けにくい鉱物が生まれたのは一種の進化であろうか。

写真の標本は、もう10年ほど前になるが、尊敬する標本商さんに、「買っておかれるといいですよ」と薦められて手にした。熱心な日本人アマチュアコレクターが、自分で採集してきたコレクションを放出されたものという。緊張のあまり、「はい…」とお答えするのが精一杯だったのを思い出す。
現在コールマン石の標本の多くは、ボロンの露天掘り鉱山から供給されている。縁(へり)の鋭利な三角板状の結晶が放射集合した形をよく見かける。硼酸塩鉱物としてはもっとも見栄えのする鉱物だそうだ(私見ではボラサイトも悪くない)。
ちなみにトルコのエスキシェヒルでは、今も本鉱が採算ベースにあう鉱石として採掘されており、標本もまま出回っている。何故か晶癖が全然違って、ころっとしたブロック状の結晶集合体が多い。

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