342.コバルト苦灰石 Cobaltoan Dolomite (コンゴ産) |
ときどき標本ラベルを信じるのが難しいと思うことがある(というか、自分の都合で信じたり信じなかったりするのだが)。
この標本はさる高名な地学団体で求めた。だから、「菱コバルト鉱 Sphaerocobaltite」というラベルの権威は絶大だと言わねばならない。
でも、購入した時の、「この石は菱コバルト鉱です。え〜、……私も見るのは初めてです」という説明は、やっぱり少し心もとなかったし、MR誌やラピス誌に見る同鉱の写真は、結晶の形(集合形)もサイズも全然違うものであった。<参考>
数年後に出たMR誌30巻4号(1999年)の記事は、この疑いを決定的にした。そこにはコンゴ・カタンガ(シャバ)産の同様の標本が、コバルト方解石、含コバルト苦灰石、菱コバルト鉱などの名称で市場に出回っていることが述べられており、科学的な成分分析によれば、その多くはマグネシウムがカルシウムを上回った種、すなわちコバルト苦灰石であるとのことであった。
というわけで、絶対とは言わないが、私はこれを(含)コバルト苦灰石だと思うことにする。
コバルト苦灰石とコバルト方解石とを比べると、一般的な傾向として、前者の方が色がより鮮やかで濃く、一方結晶のサイズは小さめで、晶脈(ドルース)状になって産するそうだ。
追記:直近の鉱物学会の定義では、Sphaerocobaltite は種名から降格されているそうだ。2008.7
⇒上記の情報はどうも間違っているようで、2016年のIMAマスターリストに有効種名として載っている。
IMA記載は1962年(初報告は1877年)。ただし名称の綴りは
Spherocobaltite となった。 2017.1
cf. No.799
菱コバルト鉱