「鉱物蒐集はコレクションの王道をゆくものだ」とか「ヨーロッパでは王侯貴族の趣味だった」とかいうセリフは、いろんなシチュエーションで耳にするし、この趣味に理解のない御仁を煙に巻くに便利だから自分でも使うことがあるが、聞きながら、あるいは口にしながら、どういうつもりでそんなことを言うのか、と心の中で思っている。
これは事実の半面でしかない。
コレクションの王道をゆくのは鉱物に限らない。貝殻も鳥も植物も陶磁器も絵画もみなそうだし、それらのいずれもが王侯貴族の趣味だった。牛乳キャップや王冠（壜の蓋）やメンコやポケモンカードやブロマイドは、あるいは王侯貴族は集めなかったかもしれないが、だからどうだというのだ。
自分の趣味を高尚だなんて思うな。ひとの趣味を貶めるな。権威にすがるな。
ただ好きだという一事において、ただ心が喜ぶことに没入するのだ。