491.藍方石 Hauyne (イタリア産) |
「だがね、ピピン、少なくともぼくたちは今ではそういうものがわかるし、それをあがめることもできるよ。思うに、自分が愛するのにふさわしいものをまず愛するのが最善じゃなかろうか。どこかで始めなきゃならないのだし、どこかに根をおろさなきゃならないんだから。たしかにホビット庄の土は深いしね。だけど、もっと深くもっと高尚なものが存在していることはたしかだ。」(「指輪物語 王の帰還」より)
私はどういうわけだか鉱物趣味にどっぷり浸るようになって随分になる。年経つうちに、欲しい標本の傾向が自分なりの小径に入っていったように思える。好みが高尚になった、というのじゃない。ただ、自分が何に惹かれるのかが、よりくっきりと分かるようになった。
いつか、標本に出逢ったときに感じる喜びを、ちょうど息を吸って吐くときの自然な甘さのように、標本がなくても感じられるようになりたい。