544.トパーズ Topaz (ロシア産)

 

 

Topaz on Quartz 水晶上のトパーズ

水晶に伴うトパーズ(黄玉) −ロシア、ネルチンスク産

 

人は死すべき存在である。それゆえ不死や永遠に思いを巡らす。それはどんなものであろうか。果たして理想として望むべきものであろうかと。あるいは死について考える。死はすべての終わりだろうか、それとも死を超えてゆくものがあるだろうか。

石は文化史的に死と無縁のものとみなされてきた。
例えばエリアーデはいう。「何にもまして、石は存在している。石は常に石自身であり、石は存在し続ける。…岩は人に、人間の条件の不安定さを超越しているあるもの を啓示する。すなわち絶対的な存在様態をである。」
「青銅器石器併用時代の「墓守り」石は、死体がけっして侵されないようにと、霊安所のそばに置かれた。立石(メンヒル)も同じような役割を果たしたと思われる。…石は動物や盗賊から、とりわけ、「死」から保護してくれるのであった。というのは、石が腐らないのと同様に、死者の魂も、離散せずに、いつまでも存在し続けねばならないからである。」

石は砕けるし磨り減ることもある。しかしその本質は変化しないことである。鉱物愛好家に言わせると、いや変成作用を受けて変化するし、風化によって別の鉱物に変わる、ということになるが、人の直観は別のことを告げる。
石は生き物ではない。しかし死んでもいない。石は在り続けるものであって、そもそも死をしらない。
古来、石は「在るための力」を具えていると考えられてきた。それは生き物の生命にも深いところで通じあうような「玄牝」(げんぴん)であり、人や霊に呪術的に作用して、ある種の永遠性を与えるものであった。
徳(根源的な生命力)を持つとされてきた玉。子授けの石。病を取り去る石。霊の拠り代としての石。御神体として祀られる石…

標本はロシア、シベリアはネルチンスク産のトパーズ。古いコレクションから。鉱物標本は基本的に朽ちない。

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