545.ルチル入り煙水晶 Quartz (ザンビア産) |
例えば「嵐が丘」のキャサリンはいう。
「リントンさんへのあたしの愛情は森の茂り葉みたいなもので、冬が来れば樹の姿が変わるように、時がたてば変わることをあたしはちゃんと知っている。
ヒースクリフへの愛は、地底の永遠の巌に似て、目に見えなくても、なくてはならぬ喜びの源なのです。」
例えばウィトゲンシュタインは書いた。
「水にけずられてまるくなり、いまはもう動かない小石のなかへ、毎朝、繰り返しはいりこまなければならない。暖かくて生き生きした核を手にいれるために。」
例えば坂田靖子は魔法使いに語らせる。
「いずれ朽ちてゆく動物や植物を素材にして不老不死の薬が出来るものか、石から作るのはあたりまえだろう」
これらの言葉の中には、石が具える永遠性(あるいは真理なるもの)とともに、石の中に脈打つはずの生命力の奔りが仮定されている、あるいは確信されているのではないだろうか。
標本は珪岩上の煙水晶のクラスタ。柱面は短く、内部には金色のルチルが含まれている。