546.ストロンチアン重晶石 Strontian Baryte/Barite (イギリス産)

 

 

ストロンチアン重晶石 Strontian Baryte

Strontian Baryte ストロンチアン重晶石

 (上)ストロンチウム重晶石(研磨面) 、(下)SW蛍光
-イギリス、グロスターシャー、ハンプストッド・ファーム産

 

No.542-545で見てきたように、石は一方で存続する力を代表するのであるが、一方で生命が石化するときは、その躍動を止めて枯らし、あるいは死を永久に引き伸ばす作用を及ぼすものである。その二律性が石の本質であるか、人間の投影であるか、と問うてもよい答は得られないだろう。
ただ、人間は、石や機械やで出来た体を手に入れるのではなく、自己の有機的肉体というアイデンティティを保ったままで、石(や動物や植物)の生命力を貪欲に自らのうちに摂取しようとする文化をもっている、ということは言えよう。
食餌行為は自らを維持するために外部の物質を変容させて内部に取り込むことであるが、同様に人は石を「食べて」その力を吸収しようとする。それは実際に摂食の形を取ることもあるし、接触、あるいは単に眺めるという行為によっても行われる。
生命の要請は、石が存在し続けるのと同様に、自己の保存にあり、同時により安定した生命力の確保にある。自らが変容して石に化すことはそれゆえ望ましくない。幽霊として存在し続けるのと同程度に望ましくない。
とはいえ、もし人が魂−スピリットになりおおせて了っているのであれば、依り代の存在はむしろ必要でもあるのだが。

標本は、ストロンチウムを多量に含む重晶石。天青石(硫酸ストロンチウム)と重晶石(硫酸バリウム)の中間物といったほうがあたっているか。短波紫外線(SW)で青く蛍光する。あたかも石の中の生命が存在を主張するかのように。
「いのちは闇の中のまたたく光だ。」(風の谷のナウシカ)

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