547.ベリロナイト Beryllonite  (アフガニスタン産)

 

 

Beryllonite withElbaite ベリロナイトとリチア電気石

ベリローナイトとエルバイト 
 -アフガニスタン、クナール、パプロック産

Beryllonite ベリロナイト

ベリロナイト −ブラジル、テリリオ鉱山産

アフガニスタン産ルース

 

 

ベリロナイトは鉱物図鑑ではあまり見ない名前だが、レアジェムを扱う宝石関係の本には時折その名が載っている。アウゲライトがそうであるように、宝石クラスの石の産地がアメリカにあって、かつてコレクターのためにカットされた歴史によるのだろうか。
ただ、書かれていることといえば、分散が弱くきらめきに乏しい、魅力的ではない、コレクター向けにカットされるのみ、といった調子で、あまり評価されていない。そもそも屈折率が水晶より低いのだから無色透明石としては詮方ないのだが、それならなぜコレクターが欲しがるかといえば、やはり珍しい鉱物だからであろう。

ベリロナイトはナトリウムとベリリウムの燐酸塩で、組成式 NaBePO4。板状〜柱状の単斜晶系の結晶をなし、色は無色〜白色〜淡黄色など。透明性がありガラス光沢。硬度5.5〜6。比重2.8。一方向にへき開完全。双晶を作ることが多い。つまりは宝石に向かない。
花崗岩ペグマタイトや塩基性ペグマタイトに産する。
原産地はメーン州ストーンハムのマッキー山で、発見者はサムナー・アンドリュースという人物だった。サムナーは1886年に最初の標本を採集したが、その時は新鉱物と思わなかったらしい。2年後に弟のチャールズらと鉱物採集を楽しんでいたとき、彼はマッキー山で再びこの石に出逢った。大量の結晶やカケラが、風化した土壌や軽度の破砕作用を受けた地層中に見出された。曹長石、煙水晶、雲母、コルンブ石、錫石、ベリル、燐灰石、トリフィル石などを伴い、明らかに花崗岩脈に由来するものであった。
程度のよい結晶が沢山得られたため鑑定の望みがあり、いくつかの標本がエドワード・S.デーナ博士らに送られた。そして新鉱物と分かり、ベリロナイトの名が提案された。成分にベリリウムを持つことによる。
ちなみに、ストーンハムは当時から希産鉱物産地として知られ、トルマリン、ベリル、フェナス石ヘルデル石、トパーズなどが周辺の山で採れ、数年前には Hamlinite ハムリン石という新鉱物が発見されていた。ベリロナイト発見の報は、鉱物愛好家の熱い視線をさらにこの産地に向かわせた。(ハムリン石はメーン州の鉱物を研究していたハムリン博士に因む鉱物だが、今は Goyaziteゴヤス石として扱われている)

長らく標本の入手は難しかったが、数年前から、アフガニスタンやブラジル産の結晶が比較的大量かつ安価に出回るようになった。

上の標本はアフガニスタン産。透明感は乏しいが、代わりに結晶面がわりとはっきりしている。選ぶとき、結晶の肩にリチア電気石が割り込んでいるのだから、自形結晶面であること疑いなしと勝手に決めて手にとった。柱状結晶の断面が六角形っぽく見えるが、これは双晶によるもの(凹面がある)。
余談になるが、この標本はフランス人の業者さんからペタル石(No.541上の標本)と一緒に買った。2ケの標本を差し出した私に、業者さんは「これはあまりいい品質ではない…」とか口の中でぶつぶつ呟き、それから「合わせて○○ドルでいい」と告げた。ペタル石の元値の半分の額だった。
仮にペタル石を半値としたら、ベリロナイトはタダということになる。私はこの標本が気に入って(元値でも)欲しいと思ったのだから、彼がどういう思考回路でそんな結論を出したのか、不思議で仕方ない。

下の標本はブラジル産。こちらもよく見ると結晶面が確認できる。天辺もちゃんと結晶面だ。

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