No.15 ワロン・フェスティバル(リエージュ) その2
噴水のある広場でパレードを待ち受ける。
白人に混じって、黒い肌の人たちが見物している。
あとで訊いたら、たいていコンゴから
出稼ぎに来たアフリカ人だという。
20世紀の始め、ベルギーは小さな大国だった。
世界で最も豊かな資源国コンゴを
植民地に持っていたし、
列強に混じり中国で権益を争っていた。
すべて戦争で失った、
と私をもてなしてくれた人たちは言ったが、
人や国のつながりは簡単には切れない。
広場に面した荘重な建物。
前を行く仮装馬車。
見守るアフリカ系らしい家族。
のっぽ人形 しずしず通る。
無骨な造りだが、中に人が隠れて動かして
いるのだから、なるべく丸太ん棒みたいな
デザインの方がいいのだろう。
巨大じょうろのお出まし。
その口から、おびただしい紙片が噴き出す。
白く丸い紙の縁はギザギザに切られていて、
いったん服につくとなかなかとれない。
頭から浴びれば下着の中まで紙まみれ。
でもパレードといえば、紙ふぶきだよな。
じょうろの内部。強力無比の見境いなさで、
進路をみるみる染めてゆく。
じょうろを追って現れた黒衣のホウキ鬼たち。
彼らは何をしに来たのか?
ふぶきに晴れた白い街は
不穏な空気にかき乱される。
牙の生えた赤ら顔が異様。
Les Macralles du Val de Salm.
Val de Salm はベルギー南東部の国境付近、
アルデンヌ地方の県。
そこに魔法使いたちの棲む町がある?
「ほーほっほっほー」と甲高い声で叫びながら
人々の頭の紙ふぶきをはらう。
掃除してくれている…のか?
去り行くホウキ鬼
何を牽く…
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