No.15 ワロン・フェスティバル(リエージュ) その3
ホーキ鬼が髪や肩を箒でちくちく叩く頃は
パレードもたけなわ。
沿道で見守る人たちの間に満足感に似た
くつろぎと賑々しさが伝染していった。
黒衣の魔法使いが去ると、
とんがり帽子に赤衣の魔女がやって来た。
鼻から上の仮面をかぶり、
檻を載せた牽引車を押し立てる。
Les Rodjes Macrales d'as Bonceles.
「ほーっほっほっほっ♪」なんて高笑いはしない。
押し黙ったまま辺りを睥睨して歩く。
愛嬌のない魔女はホウキ鬼よりコワい。
掃除もしないし…。
若い魔女ッ子が編み籠に入れて
肘に提げていたお土産のマスコット。
(買っちゃった!)
彼女らがどんな文化と歴史を
担ったのか興味深々だ。
王の道化?
農夫人形の周りで踊るネギ坊主
パレード終盤。砲兵隊の行進。
リエージュに来るまで、
どんなところだろうとぼんやり考えていたが、
着いて早々、炭坑の町だったことを聞き、
今、台車に引かれる大砲を見て、
卒然とコンプレヘンドした。
ここは、かのヒューゲニンが名著をなした、
「ロイク王立鉄製大砲鋳造所」の町ではありませんか。
(→韮山反射炉の大砲鋳造
追記)
16世紀、ナミュールと共に鉄弾の「鋳造」で繁栄し、
その後、鋳鉄砲で有名になった町ではありませんか。
すっかり喜んだ私は、翌日から何人かのベルギー人に、
「この町の大砲製造技術は150年前の日本に
とても大きな影響を与えたのだ」
とウンチクを垂れた。
のだが、リエージュっ子を含め、
誰一人感銘してくれなかった…
それはさておき、砲兵隊は最終コーナーを曲がる手前の
広場にしばし留まり、空に向って空砲を放った。
轟音が響き、沈黙が尾を曳いた。
それからサン・ランベール広場をよぎり、
先行の行列がそうしたように
Palais de Justice に宮入りを果たした。
かくてパレードは終わりぬ。
夜10時頃、ミューズ川にかかる橋
(Pont des Arches) から花火が打ち上げられた。
これがグランド・フィナーレ。
ホテルの部屋で遠くその音を聞きつつ、
私は脱いだ服の下から散った
紙ふぶきを拾い集めていた。
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