ひま話  台北名物 玉市 その1 (2001.7.21)


台湾といえば、なんといっても台北にある故宮博物院が有名です。ここには、紀元前から清朝に至る中国歴代の王朝が集めた文物の中で、もっとも優れたものが大切に保管されています。書画、陶磁器、青銅器、そして数千年の間中国人を魅了してやまなかった玉器。文房具、象牙やガラスの装飾工芸品などなど。

これらは、1948年、迫りくるサンタクロース、じゃなかった、中国共産党の破壊を逃れて、はるばる南京から陸路・海路を経て、台湾に運ばれてきました。脱出は、大変な困難を伴う、まさに間一髪の奇跡的な綱渡りでした。しかし、それは見事に成功したのです。

中国では、時代を経た文物には霊が宿るとする信仰があります。故宮博物院の宝物は、その霊の力に導かれた人々が、文物自身の意思に従って運んできたものなのかもしれません。中華王朝の正統を宣言すべき鼎は、今、台湾にあります。
しかし、同じ時、文物よりもなお素晴らしいものがこの国に伝えられました。中国を中華たらしめた人々の精神です。中国本来の文化、ものの考え方や礼儀作法などもまた、20万点を越える文物と共に、この地に移ってきたのです。大陸では社会主義による思想改革が進む一方、中華思想は、本土から見れば、ど田舎の僻地ともいえる小さな島に生き残る場所を見出したのでした。

中華精神のあり方は、生活のすみずみに行き渡っていますが、例えば、玉の愛好という一点に限ってみても、この国の人々に、本来の姿のまま継承されていることが感じられます。

彼らは、往古の華人がそうしたように玉を愛しています。また清朝以来の新しい伝統となった翡翠への想いも持っています。玉や翡翠の細工を求め、身辺に置き、あるいは肌身につける習慣を持ち続けています。
首都、台北市では、毎週土曜、日曜の週末になると、盛大な玉市が開かれます。この催しは、そうした文化的背景の中でのみ、生き生きと、本来の役割を果たすことが出来る類のものであり、単なる物品売買以上の何か、その本源がすでに忘れられてしまった宗教的感情の沈殿を心の奥深くで掻き立てる行事なのだといえましょう。

前口上が、つい大げさになってしまいました。今回は、台北玉市(建国暇日玉市)の様子を紹介したいと思います。
通りすがりの旅人が一日ふらりと立ち寄って遊んだ他愛もない断片ですが、軽いお茶受け感覚でどうぞ。

玉市へようこそ!

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インフォメーション
  

  建国暇日玉市   毎週土曜日、日曜日開催
  時  間:土曜日 14時〜18時
       日曜日 10時〜18時
  出展店数:約500〜600店
  場  所:仁愛路三段と建国南路(高架快速道路)との交差点。
       タクシーが便利。

  扱い品目:翡翠(硬玉)、軟玉、大理石、蛇紋石、
       その他貴石(青金石、紅水晶など)製品。
       上記を用いた仏像、彫刻、数珠、ペンダントトップ、
                    指輪、倣古玉などの加工品。
       鉱物標本、水晶原石、香木など。

  入場無料 


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