53.菱マンガン鉱 Rhodochrosite (アルゼンチン産) |
菱マンガン鉱を、貴石細工師たちは、インカローズと呼ぶ。質の良いものが、ペルーで大量に採れるからだ。上の写真のように、磨くと同心円状の模様が現われ、細工物に珍重される。同心円の中心は、もとは植物の根っこだったそうで、そのまわりに沈殿した菱マンガン鉱がくっついて、年輪のように成長してゆくのだという。また、犬の牙の形をした結晶が、アンカッシュなどに出て、標本コレクターに喜ばれている。(1999.3)
追記:アルゼンチン、カタマルカ県のカピリータスは、古代インカ人が金を採り、後にスペイン人が銅を掘った鉱山地域で、浅熱水性の硫化鉱床が形成されている。1937年、フランツ・マンスフィールド博士はほぼ菱マンガン鉱のみを掘り出すために、この古い鉱山を再び開いた。以来、鍾乳状・塊状の石が大量に市場に供給されている。ラピダリストがインカローズと呼ぶ層状・輪帯状の美しい縞模様を示す石は、主にレストラドーラ鉱山から出ている。上のコメントを書いたとき、私はこの標本をペルー産と思い込んでいた。インカ=ペルーの連想があったのだと思う。産地名は後で訂正したが記事はそのまま措いてある。面目ござらぬ。下の画像は 1970年代に出回ったもの。(2016.12)
cf. ヘオミネロ5