54.カールトン石  Carletonite  (カナダ産)

 

 

KNa4Ca4Si8O18(CO3)4(OH)・H2O。これが私。

カールトン石 (下の画像は結晶の底面)−カナダ、モンサンチレール産

 

思い込みとは恐ろしいもので、ある標本店で、「カーレトン石」の塊状標本を買ったとき、店主はどうしてもそれをキューレトン石だと言って譲らず、わざわざラベルを書き換えて渡してくれた。思い出すと妙に微笑ましい。弘法も筆の誤り。
キューレトン石は、うぐいす色の土状の希産鉱物で、アメリカの標本商だったキューレトン氏が発見したもの(No.206)。本鉱とは似ても似つかない。一方、こちらの名前は、オタワにあるカールトン大学に因んでいる。(それならカールトン石では?ということになるが、カーレトン石で通っている。日本では字面の印象に引き摺られて和名が決まることが多い。)

カールトン石は、カナダのケベック州にある有名なペグマタイト鉱床、聖イレール山(フランス式に発音すると、モンサンチレー)で見つかる大変に美しい、青い結晶鉱物。写真の標本は、内部が青色で、結晶面は無色透明、アイスキャンデーのような四角柱状結晶。聖イレール山の鉱物は、エルピド石ヴィリオム石セランド石、カタプラ石など、どれを取っても他の産地に類を見ない純粋さである。(1999.3)

cf. No.802 カールトン石


追記:カールトン石はカリウム・ナトリウム・カルシウムの水和・珪酸・炭酸・水酸(フッ酸)塩である。そんなゴタゴタした組成の鉱物はやはり特殊な産状(熱水生成)のもので、モンサンチラールを原産地に1971年に記載されたが、今に至るも他所からの報告はないようだ。主にプドレット採石場の露頭で発見されており、霞石閃長岩の破砕帯や、これに捕獲された大理石中に産する。
当初は塊状の標本のみ知られていたが、80年代中頃から自形結晶が出始め、6cmに達するものが採れた。Dana 8th に記されている。87年の11月にボナンザがあって、ジル・エノー Hainault 氏(この産地を得意とする標本商さん)が多数の美結晶や塊状標本を市場にもたらした。彼は90年代の中頃にも見応えある結晶クラスタを沢山出した。私はその時分に上の標本を氏から頒けていただいて珍しいものを持ったと雀躍していたが、氏は 2000年4月に空前のボナンザを当てられて、なんのことはない、わりと入手の容易な標本になった。その後のボナンザは聞かないが、いずれまた出てくるのであろうかと思う。
とはいっても希産種に違いなく、日本の鉱物本で本鉱を紹介しているものはほとんどない。上田氏の「ちょっとマニアな鉱物図鑑」(2011)には載っているが、これは楽しい図鑑の続編を志したもので、さすがに「あんたも好きねえ」の世界でありんす。(2016.12)

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