64.銀星石  Wavellite   (USA産)

 

 

国際名はワーベル石。ワーベル氏には悪いが、銀星石の方がずっと詩的な名前だぜ。

銀星石 −USA、アーカンソー州ガーランド郡アヴァント付近産

 

横文字で書くと、なんとなくかっこいい気がするのは、日本語の不思議なところで、銀星石も転じて、シルバースターストーンである。中央部が銀白の星で、放散する星気はオリーブの緑色を示すアーカンソー州の標本。日月寄り添う如く並んだ二連星。今宵は我が標本棚を照らせ。

cf. No.745 銀星石

追記:銀星石と言えばアーカンソー産、とイメージされる時代が1970年代以降続いている。まず 1973年にガーランド郡ダグ・ヒル鉱床から夥しい数の見事な標本が市場に出て、産地の名を一躍高からしめた。母岩は灰色の頁岩。その亀裂面を埋めてパステル緑色の銀星石の針結晶が放射状・葡萄状に群れている。大ぶりな標本が手頃な値段で出回ったので、当時の愛好家はたいていコレクションに加えたとみられる。次いで 70年代の終わり頃には西隣のモンゴメリー郡マウント・アイダ付近にあったモールディン山の砂利採石場から美群晶が出て、以来2大巨頭となった。後者は当初産地が秘されていたらしいが、数年後に公知となった。
ちなみにシンカンカスの「甘茶のための鉱物学」(1964)にはすでに、「疑いもなく最良の標本は…アーカンソー州のガーランド、モンゴメリー、ホット・スプリング各郡に広く産するものである」と述べてあるから、その以前から知る人は知る銘柄品だったと思われる。
ついでにいうとスペンサーの「世界の鉱物」(1916)には3郡の名はなく、ホットスプリングよりさらに東に寄った同州マグネット・コーブが産地として示されている。

なお本鉱は2015年に組成式 Al3(PO4)2(OH)2(OH,F)・5H2O の Wavellite に対して  Al3(PO4)2(OH)2(F,OH)・5H2O の Fluorwavellite 弗素銀星石が定義された。両者の外観・物性は基本的に同じである。アーカンソー産はどちらのケースもあるが、分析例は後者が多いようである。(イギリス、デボン産も両方ある)。(2018.8.15)

鉱物たちの庭 ホームへ