753.フォスフォフィライト2 Phosphophyllite (ボリビア産)

 

 

phosphophyllite

phosphophyllite

フォスフォフィライト -ボリビア、ポトシ、マチャカマルカ産

 

フォスフォフィライトという石は、木下博士の辞典などには古くから燐葉石として名が出ているものの、日本の愛好家に注目され始めたのはつい最近のことで、キャリー・ホール著「宝石の写真図鑑」(ヴォーグ社 1996)に、「蒐集家の間で垂涎の的である」と写真入りで紹介されたあたりからではなかったか。そもそも実物は結晶標本にしろカット石にしろ、おいそれとお目にかかれるものではなかったはずだ(近山大事典 (1995)にも「高価なコレクター石」と出ているが画像はない)。
その後、MR誌 Vol.30 No.1号(1999)にボリビア、セロ・リコ鉱山の特集記事が出て、ため息吐息の超級標本写真が大盤振る舞いされるに及んで、その人気は不動のものとなったと思われる。

私自身は 1996年にツーソンに遊びにいったとき、どこだったかのホテル会場で、"Phosphophyllite !" という手書きPOPの下に、1cm前後のカケラ標本が多数出ていたのを見たのが初めてだった。事情あって手にしなかったが、その後、MR誌のショーレポートに、「標本が市場に出たのは1950年代以来初めてと思われる」とか書いてあるのを読んで、「あやや、抜かったなぁ!」と例のパターンであった。
でも、(世界的に)人気が出るというのは大したもので、やがて日本の鉱物ショーにもユニフィカダ鉱山産の小さいけれど見事な結晶標本が何点も持ち込まれるようになった。なにしろ、「垂涎の的」とか、「聖杯(Holy Grail)」とか、標本商さんの掛け声がかかるものだから、気を惹かれた愛好家連中は息も荒く、ついつい財布の紐を緩めたであろうと、我が身を省みて想像するのである。

それにしても、アメリカではワシントンのスミソニアンを始め、各地の自然史博物館に行くと、唖然とするほど立派な結晶を拝むことが出来る。先日もヒューストン博物館で 7cmクラスの美晶に対面して、やっぱり唖然とした。そうすると自分が、その足元にもはるか及ばないささやかな標本に入れ上げ、乾坤一擲の大枚をはたいてコレクションに加えた次第を引き比べて、ほんとにほんとに虚しくなってくるのを止めようがないのだった。何がために市井の一庶民が、ムリな算段を性懲りもなく繰り返すのか。

まあまあ、それはともかく。画像の標本は数年前から出回るようになった新産地のフォスフォフィライト。風化した砂岩に埋もれて大量に産しているものらしい。(cf. No.133 燐葉石 追記2)
ユニフィカダ産のような鮮やかな発色も透明感もないため宝石級とはいえないが、典型的な双晶が群れをなしている。X字に貫入している様子も見えてステキ。なんだかんだ言いながら、気がつくと手にとっているのが愛好家。以て瞑すべし。

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